※女主×髭切
※フィストファック、お漏らし、潮噴き、♡乱舞

 優しい顔をしているからといって心根までもが温厚だとは限らない。なにを隠そう己こそ、内面と外見の差が甚だしい刀の筆頭であると自覚している。真意を腹の中に隠したまま他者と接することには慣れていた。なにせ千年積み上げた技巧だ、そう簡単には暴かれないつもりでいたが、目の前の主人のほうが上手だったらしい。


「うふ」


 吐息を含ませた笑い声が締め切った部屋に響く。ふっくらと赤く、形の良い唇が、不釣り合いなほど下品に歪んでいた。半月のように弧を描いた眼が髭切を見下ろす。その瞳は底冷えするような強者のーー支配者の光を宿していた。


「不敬よ。髭切。あなた、私のことを何も出来ない小娘だと見くびっていたわね」


 女の白い指がつんと胸を押す。たったそれだけで脆い積み木が崩れるように髭切は仰向けに倒れ伏した。
 なぜ。弁解しようとする口に力が入らない。もちろん手足にも。舌さえ回れば、この急死に一生の状況を言いくるめるだけの技量は持ち合わせているのに。世間知らずのうら若き小娘など、簡単に懐柔できるはずなのにーー


「数多の刀剣を統べる審神者が、なんの護身法も呪術も身につけていないと思ったのかしら。私を謀ろうとした罰よ。覚悟しておきなさい」


 こんな女だったのか。
 呆然と畳の上に転がされたまま、己が仕える主の顔を見上げる。常に穏やかで、笑顔を絶やさず、付喪神からの寵愛を集めてやまなかった主が。悪鬼のような禍々しい笑みを浮かべ、いままさに髭切を蹂躙せんとする。


 まさかこんな事態になるとは誰が予想できただろう。計画通りなら、無力に組み伏せられているのは彼女のほうであったのに。


○○○


 ちょっとした悪戯心が発端だった。もしかしたら人間はその感情を恋だとか執着だとか呼ぶのかもしれないけれど、人の身を得たばかりの髭切が己の気持ちに名をつけるのは滑稽じみていたし、なにより、あんなありふれた娘に懸想しているなど矜持が許さなかった。

 豊かな時代に生まれ育った人間だ。飢えを知らず、孤独を知らず、この手で人を殺めることを知らない。戦の指示一つとってもたどたどさが抜けない、よく言えば温和な、悪く言えば甘ったれた小娘が髭切たちの主だった。
 だからといって彼女の未熟さが欠点になることはなかった。人の子はどこまでも愛しい。あの温かな手に握られる感触を本能が覚えているからだろうか。それとも、何百年も彼らの営みを見守ってきたせいか。髭切を含む刀剣男士たちは皆が皆、この新しいちいさな主を慈しんだ。


 それはおかしな均衡でもって保たれていた。たとえば山頂に一本だけ、希少で美しい花があったとしたら、真っ先に摘んで自分のものにするか、それとも遠くから鑑賞して愛でるにとどめるか。観客が己一人ならば眺めるのも良い。しかし花を狙うものが何人もいるとなれば、誰かに盗られるより前に自分の手で摘み取ってしまいたいと思うのが人情だろう。あいにくと本性が刀である我々は苛烈な性分の者が多く、取り合いになれば少なからず血を見る結果になることは明らかだった。

 だからこの本丸では、皆が大事にしているものに手を出さないという方法で手を打ったらしい。


『誰も主に手を出してはいけない。』


 彼女に近づくたびに周りの刀から牽制するような視線を感じた。笑える話だ。暗黙の了解なぞ、前提を共有できる相手としか成立しない。髭切はにこにこと穏やかな面を取り繕っては内心嘲笑う。指を咥えて彼女を眺めるだけの間抜けな刀剣どもを騙しすかして、抜け駆けをするのは簡単な計画に思えた。


(皆が大事にしているものを独り占めしてぐちゃぐちゃにしたら面白いだろうなあ)


 その日、髭切はわざと重傷を負った。帰還した髭切の赤黒く染まった衣装を見て慌てふためく主に、形容しがたい愛しさと嗜虐心が込み上がる。大丈夫だよと優しく返事をして、でも少しそばにいてほしいなと甘えた声を出せば、彼女は請われるがままに髭切のいいなりになった。

「まさか髭切がこんな重傷を負うなんて。ごめんなさい、私が采配を誤っていた」

 傷は手伝い札を用いてたちどころに癒えたが、まだ彼女は沈痛な面持ちで髭切の傍に控えていた。動揺を隠しきれない瞳にはうっすらと涙が光っている。自分のためにここまで心を乱してくれるのだと思えば気分が良くなったが、刀が傷ついて帰るたびに悲しんでいる娘だった。髭切が特別だということはない。平等に向けられる笑顔も涙も気に入らない。髭切は布団の中から腕を伸ばして、彼女の白くたおやかな手首を握った。

「ねえ、どうしてか、まだここが痛い気がするんだ。さすってくれないかなあ」

 先ほど負傷した肩へ誘導すると、なんの疑いもなく主はそこを撫ではじめた。柔らかな手のひらが薄い病衣越しに体温を伝える。やはり人の手は心地よい。髭切はくすくすと笑った。

「主の手は気持ちいいね。ずっとこうしていてもらいたいな」
「そう? 気休めになるようなら良かった」
「もうお仕事は終わったんだろう? 今夜は隣にいて一緒に寝てくれないかなあ」
「それは…」
「じゃあ僕が寝入るまで。お願いだよ」

 強引に手を引けば、主はバランスを崩して髭切の胸に倒れこむ。甘やかな香りを肺いっぱいに吸い込んだ。
 すでに部屋の襖には呪を施してある。どんなあられのない声を上げても筒抜けになることはないだろう。彼女の肩に隠れた口の端をにいっと釣り上げれば、物騒な鋭い牙がきらめく。

「髭切、添い寝なんてしたら他の刀剣が焼きもちを妬いちゃうから、だめよ」
「誰にも知られなかったら平気だよ。ね、前からこうして、主とふたりっきりになってみたかったんだ」

 にっこりと穏やかな微笑みに変えて主の顔をのぞきこむと、彼女は照れたように視線をずらした。この仮初めの姿の見目が麗しいことを、髭切はじゅうぶんに理解している。ほんのりと色づいた頬を手のひらで覆うように撫で、まつ毛が触れ合うほどに顔を近づけてさらに追い討ちをかける。

「僕の目を見て」

 潤んだ瞳がおろおろと髭切の目に焦点を合わせ、濡れ羽色の瞳孔がきゅう、と縮んだ瞬間にぱくりとその唇を奪った。息をつく間も無く舌を挿し入れる。吐息と共に霊気を吹き込めば女の体はぐらりと揺れて力を失った。自分より一回り以上もちいさい肩を抱き留めて髭切は微笑む。

「ふふ。可愛いね」

 とろんと蕩けた瞳が髭切を見返す。千年も人の恋沙汰を見守っていれば、魅了の術くらい取得しているものだ。簡単に術にかかったところを見るに、彼女はそういった耐性が低いようだった。所詮審神者とはいえ髭切の十分の一も生きていない小娘だ。甘言を囁きながら優しく抱いてやれば、年相応の娘らしくコロリと落ちるだろう。汚れを知らない清らかな体に快楽を植え付け、髭切無しでは生きられないような淫乱に育て上げてしまおうか。大事な主を奪われた刀どもが歯噛みして悔しがるだろうなーーと夢想すればふるりと震えが走った。

「……髭切」
「ん? なあに」

 柔らかな体を支え直して彼女に向き直る。そして完璧に取り繕った笑顔のまま髭切は固まった。


「馬鹿ね。それで私を誑かした気でいたの?」


 それきり、体が動かなくなった。



○○○


 こんなはずじゃなかった。綺麗な花にあるのは棘だったか毒だったか。どちらにせよ、髭切の腹の上に乗り上げて爛々と目を光らせている女は、牽制ではなく警告の意味で手を出してはいけない代物だったらしい。

「あなたって私と似てるのよね。表面だけ優しい顔をして、腹の底では周りの連中をどうやって出し抜こうかと考えている。己を装うのも人を騙すのも日常茶飯事。けれど嘘も方便というものね、一概に悪いとは言えない。でもねえ、まさか私まで毒牙にかけようとは、いささか悪戯心が過ぎるというものよ」

 淡々と述べながら髭切の襟に手をかけ、簡素なあわせの衣を剥いでいく。寒さのせいか恐怖のせいかぴんと尖っている乳首を見て、ふっと口元を歪めると、指の腹でそこを弾いた。驚愕に目を見開く髭切に彼女はニタリと微笑んでみせる。

「主人を手篭めにしようとした刀には、お仕置きが必要ね」

 あっという間に服は払われて下半身を覆う下着一枚にされてしまう。やめてくれと叫ぼうにも、ひゅうひゅうと喉が鳴るだけで言葉は出てこなかった。

「ああ、声が出ないと興が乗らないわよね…」

 パチンと審神者が指を鳴らすと、つっかえていたものが取れたかのように声が通るようになった。

「ぷはっ、は、あるじ、どうしてこんな真似をするんだい?」
「あはは。どうしてなんて白々しい。あなたが私にしようとしたことよ」
「君は勘違いをしているよ。僕は主と添い寝をしたかっただけで変な意図はなかったんだ」
「ふーん。じゃあ魅了の術も、襖に施した人払いの呪いも、一体なんのためにかけたのかしらね」

 それは、と口ごもった髭切の胸を審神者はきゅううとつまみ上げ、痛みのあまり甲高い悲鳴が上がる。ヒリヒリと腫れ焼け付くようなそこに、なにを思ったのかぺろりと赤い舌が這った。

「ひっ?!」

 にゅるにゅると蛞蝓のように湿った柔らかなものが動き回る。抓られて痛む乳首を労わるがごとく、優しく、舌先で先端を捏ねるように愛撫される。なめらかな感触は不快とは言えず、むしろぞくぞくと腰に込み上げてくるものに危機感を抱いた。

「あっ、主…やめっ…ああああっ?!」

 淡く色づいた乳輪ごとちゅっと吸い付かれて、思わず背をそらして声を放つ。固く膨れた粒を口の中でちゅぷちゅぷと吸われたり齧られたり。尖った歯の先で引っかかれながら反対側を二本の指で苛められるとたまらない。男の身でありながら胸で感じるなんて、髭切には信じられない事実だった。

「あ、くっ…、う、…いい加減にっ、」
「いい加減にしろ? この後に及んで強気なのね」

 乳首を舐っていた唇を離し、審神者は真上から髭切を見下ろす。唾液で光る唇に薄笑いを浮かべた彼女とは対照的に、髭切は歯を食いしばって目の前の女を睨んでいた。剥き出しになった獰猛な牙が、彼の本質を表している。

「やっぱりあなたって獅子みたいな刀よね。名だたる惣領の佩刀だったせいかしら、誰にも属隷しない気位の高さを備えている。私のような年端もいかぬ小娘に従っていたのは、ままごと遊びのようなものだったのでしょう?」

 審神者の指が面白そうに髭切の牙に伸び、カチカチと爪で叩いた。白く細い指は力を入れればすぐに噛み砕けそうだ。この油断しきった主人の手に、本物の獅子のごとく食らいついて噛みちぎってやろうかーー邪な考えが脳裏をよぎったが、奇妙な術で自由を奪われた髭切には咬筋さえまともに動かせないのだった。

「ああ、素敵ね。いつもの嘘くさい優男風の笑顔より、感情を剥き出した今の顔のほうが余程好みよ。あなたの牙、矜持、私が折る。そうね……愛玩動物ペット
にしてあげる」

 ペット? こんな若い人間の娘に、畜生のごとく扱われるというのか?
 怒りと焦りで荒くなった呼吸のぶんだけ胸が激しく上下する。審神者は臆することなく髭切の白い体躯に手を這わし、厚い胸筋の弾力を確かめる。浮き出た肋骨をじっとりとなぞった指がへその窪みへと向かうと、意に反してピクピクと体が跳ねた。まるでまな板の上の鯉だ。手足さえ動かせれば形勢を逆転させることは容易いのに。

「っ、は、主…僕の体を弄ったって面白くないだろう? この拘束を解いてくれたら、僕が君を喜ばせてあげるよ? ペットにしたい、って言うんなら、君の望むままにいつでも気持ちよくさせてあげる」

 懸命に猫なで声を出して呼びかけるが、彼女は髭切の意図などお見通しと言わんばかりに一笑に付す。

「駄目。それじゃあお仕置きにならないじゃない。主人に楯突こうなんて思えなくなるほど善がらせてあげる」
「っでも、」

 なおも言い募ろうとした髭切を遮るように、彼女はするりと片手を下半身に伸ばした。ひ、と息を飲む。しなやかな柳のような手が、驚くべき速さで下着の上から髭切の逸物を掴んだのだ。急所を握りしめられる恐ろしさにさすがの髭切も言葉を失った。

「わあ、立派なおちんちんね。こんなものを身の内に突き立てられたらどうなってしまうのかしら」

 手のひらに包んでゆるゆると扱き出す。甚振るような口調の割に手つきは丁寧で、乳首とは違い刺激に慣れたそこは正しく性感を拾った。女の柔らかな手に愛撫されるのはこの状況下でも心地よく、芯に熱が通っていくのを感じてふっと息が漏れる。もしかして善がらせてやるというのは、こうした奉仕の形式でもって髭切の欲を満たしてやるという意味か。ならば悪くないと思った矢先、

「けど残念ね。このおちんちんが使われることは一生ないのだから」

 え?
 耳を疑う。下着をずり下ろされ、ゆるく勃ち上がったそれがふるりと外気に触れる。次第に硬さを増していく竿を扱かれながらその下の袋を器用に揉まれ、髭切の白い肌が上気していく。

「ん、あっ……ふ、ン、ッ」

 思わずうっとりとした息を吐くが、ただ気持ちいいだけで審神者が終わらせてくれるはずがなかった。

「ふふ。可愛い。勝手にビクビクしてる。ほら、先っぽからいやらしい汁が出てきたよ」

 とろりと滲み出た先走りを人差し指で拭い、彼女はそれを髭切の慎ましく閉じた尻の窪みに運んだ。
 当然、受け入れる器官ではないそこは硬く緊張して審神者の指を弾く。しかし彼女は意にも介さずぬるぬると髭切自身の体液を塗りつけ、念入りにマッサージをするようにそこをほぐしていく。

「な、なにをっ?! うわ、あぁああ…」
「男が抱かれる時は此処を使うって知らないわけがないでしょう? お尻で絶頂を覚えたら抜け出せないと言うわよ」
「そんなっ、あっ、あ、あ、いやだ…!! やめろ!!」
「こら。暴れたら駄目よ」

 パシンと乾いた音と共に痛みが弾ける。叩かれた尻はもみじの形に赤く染まりじんじんと痛んだが、今まさに侵入を果たそうとする異物に比べれば些細なことである。縛り付けられたように動かない手足を懸命によじり、悪魔の手から逃れようとするが、髭切の必死の足掻きは審神者の苛立ちを増しただけだった。

「往生際が悪い」

 ため息をつき、審神者は声を尖らせた。

「四つん這いになりなさい」

 ピシャリと、脳を鞭で叩かれる心地がした。瞬時に反応した体は勝手に両肘両膝をつき、発情期の獣のように尻を突き出す。屹立したままの性器がぷるんと揺れて布団に汁を垂らした。
 なぜ? 髭切の顔にはどんどん羞恥の熱が集まり、体を支える手足だって震えているのに、彼女の命令に逆らうことができない。これが審神者の術か。自分はとんでもない者に手を出そうとしたのだと後悔したが後の祭りである。性器を膨らませ、ひくひくと孔を痙攣させながら、四つん這いになって主人に尻を向けている。これでは本当に畜生の有様ではないか。


「やめろ…! 僕を愚弄するつもりかっ、この小娘が!!」


 口をついて出た言葉は主人に向けていいものではなかった。たとえ下心に基づいた演技だとしても審神者に従順な態度を示していた髭切が、化けの皮を剥がした瞬間だった。
 彼女が怯む様子はなかった。目の前に立ちはだかる女に対し髭切はギリギリと歯を食いしばって敵意を剥き出しにする。よくもこの自分を怒らせたものだ。とことん甘い顔をして懐柔してきたつもりだったのに、今までの努力が水の泡になった。まさに獣よろしくフーフーと息を荒げる髭切を、審神者は邪悪な笑顔で見下ろした。


「それがあなたの本心なのね。いいわ。小娘だなんて口が裂けても言えないようにしてあげる」


 しなやか指が髭切の顎を仰向かせ、長い長い調教の夜が幕を開けた。
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