夢を見ていた。誰かの腕の中で心地よいぬくもりに浸っている夢。おそらく恋人のような相手だろうが実際にはそういう関係の人物はいない。潜在意識のなせる技だろう、人肌が恋しいと思うあまりに眠りの中で願望を叶える。気分の落ち込むことばかりだった最近は眠るのが唯一の現実逃避で、夢だと分かっていても幸せな気持ちになった。
だから目を覚ましたとき、久しぶりに良い朝だと思ったのだ。
チュンチュンと小鳥が鳴いている。障子ごしに差しこむ日射しがあたたかい。じきに春。ずいぶんと上昇した気温がそうと告げている。
昨日は深酒したはずだが不思議と体調も悪くなかった。夢見がよかったこともあいまって、さあ今日も一日がんばろう! とご機嫌でぐるっと寝返りを打つと、体が何かにぶつかった。
隣で鶯丸が寝ている。
あの鳥太刀。眉目秀麗なくせに口を開けば茶と大包平で、なにを考えているんだか掴めない宇宙人みたいな刀である。
どういう状況だろうか。
鶯丸はこっち側を向いてすやすやと穏やかに寝息を立てている。ふだんからのんびりした風貌をしている彼だが、眠るとさらに無防備な顔になるのだなあ。深緑の髪がさらさらとシーツの上に流れていて、見惚れるほど綺麗な寝顔だった。
「いや、それはそうとして」
なんで鶯丸が同じ布団で寝ているんだ。
私は青ざめる。
男女が同衾してやることなんて大方決まっている。いやいやいや。私と彼はそんな関係ではない。ときに内番や任務をサボって二人で茶を飲んだりしていたが、あくまで審神者と刀、公私の分別はつけて接していたつもりだ。鶯丸を閨に連れ込んだ覚えはない。
じゃあ逆に、鶯丸に連れ込まれたのか? とも考えたが、のほほんとした彼がそんな強姦まがいの行動をするとは思えない。
とにかく頭がパニックで、私はずりずりと布団から這い出ていた。畳に尻をついて後退するうちに寝間着がはだけ、ちらっと見えた自分の胸に、虫刺されみたいな赤い痕がついていた。
「嘘だろ……」
これはもう確定だ。鶯丸とヤッてしまっている。下着を確認すると完全に気が滅入りそうだったのでやめておく。だって私は処女だったのだ! 学生時代はそういう機会がなく、まあそのうち良い人が見つかるだろうとなんとなく生きてきて、成人になるかならないかの頃に審神者になってしまった。以来本丸という隔絶された異空間で人間との出会いはほぼ断たれ、見目麗しい刀剣男士を眺めるのみの生活。綺麗だなあ、かっこいいなあとは思っても、審神者命令で夜伽を命じるような気概も度胸もなく。そもそも国宝やら文化財やらの宝刀だ、人間ですらない相手と釣り合わないと分かっていたから恋愛対象にもしていなかった。
なのに。それなのにこの状況。これが本当なら意識がないままに、あろうことか鶯丸と初体験を終えたことになる。
「ん……む」
気配を感じたのだろうか。ぱちりと枯れ草色の瞳が瞬いて、へなへなと座り込んでいる私と目が合った。
「……おや。おはよう」
掛け布団を払い、寝起きの気だるさをにじませて艶っぽく微笑む鶯丸。彼は寝間着を腰帯で結んだだけの緩やかな格好をしていて、きっちりと洋装で固めているふだんとのギャップに色気を感じてしまう。はだけた服からのぞく胸の白さが朝日にまぶしい。すべすべした肌がやたらとなまめかしく光っていて、目に毒だ。
「まだ疲れているだろう。体のほうは大丈夫か? 昨日はずいぶんと無理をしてしまったようだからなぁ」
少し眉を下げて心配そうにこちらをうかがう鶯丸。その態度と言葉の両者が、私の予想を確信に近づける。やっぱり一線を超えてしまっているよ!
体が硬直して何のリアクションもとれないでいると、鶯丸はふむとしたり顔でうなずいて体を起こした。
「まあ、責任は取る」
優しく手を握られて温かな体温に包まれる。ああ、さっきのぬくもりは、夢なんかじゃなくて、本当に……。
「まさか君のほうから誘ってくれるとは思いもしなかったなあ。だがこれは俺から言わせてほしい。ぷろぽーず? というのはよく分からんが、俺の番いになってくれ」
手の甲にちゅっと口付けを落とされ、期待を含んだ目で見上げられる。
君のほうから誘った? なにもかもが理解の範疇を超え、話の展開についていけない。鶯丸と寝た記憶はまったくないんだけど、この状況と彼の言葉を信じるなら最後まで致してしまっている。しかも求婚までされてしまった。人生初のプロポーズだ。なんてこった。
顔を上げた鶯丸のきらきらした目に返す言葉がない。
外ではやっぱり鳥がさえずっている。朝チュンとはまさにこれ。なんだか色々なものを失ってしまった空虚な心地がする。
脳の処理能力の限界を迎えて、私はぶっ倒れた。
「あ、起きた。主さん、だいじょうぶ?」
意識を失って目が覚めたら心配そうな顔の乱にのぞきこまれていた。鶯丸が助けを呼んでくれたらしい。「僕が着替えを用意しておくから主さんはお風呂に入っておいで」と促されるままに浴室に向かい、寝間着を脱いだところで愕然とした。
案の定というかなんというか、体中に噛み跡がついていて下腹部には鈍痛がある。ああこんな形で純潔を散らしてしまうとは……。情けなさにシャワーを浴びながら涙が出てきた。鶯丸の言動を見るに無理矢理されたわけでもないようなので、己を恨むしかない。
着替えを手伝ってくれた乱はしばらく小言を呟いていたが、やがていたずらっぽく目を輝かせる。
「でも、良かったね。鶯丸さんと主さんはいつくっつくのかと思ってたけど、もうそんな関係になってたんだね!」
ひっくり返りそうになる。私と鶯丸は至って健全な関係だったわけで、お互いに恋愛感情を抱いているという雰囲気でもなかったのだ。なのに乱は満足そうにうなずいている。
「私と鶯丸がくっつくって…どういうこと…?」
「え? 鶯丸さん、ずーっと主さんにお熱だったじゃない。主さんだって悪く思ってなかったでしょ? 毎晩部屋でお茶とかしてたから、上手くいってるのかなーって」
「ま、まじか……」
いつからだろう、執務終わりに鶯丸とお茶を飲んで歓談するのが習慣になっていた。わざわざカフェインレスのお茶を見繕ってくれる優しさがありがたく、就寝前の心休まるひとときだった。
とはいえ、日中あまり関わりを持てない鶯丸とのお喋りタイムくらいにしか思っていなかったのだけど、乱はこれを指して「上手くいってる」と思い込んでいたらしい。がっくりと肩を落とすと、彼は不思議そうにこちらをのぞきこんでくる。
「ねぇ、大丈夫? まさかと思うけど、襲われたわけじゃないんだよね?」
「そういうわけじゃないけど…」
昨晩の記憶がまったくない、なんて言ったら乱はどう反応するのだろうか。
正直、記憶がないから実感もない。鶯丸のことをそういう対象として見たことがないし、性行為の経験もないから具体的に彼とどんなことをしたのかも想像出来ない。いや、そのへんの知識がまるで無いというわけではない、えっちなビデオ的なものは見たことあるけど、自分がそんなことをするのはまた別の話だ。
……待って。冷静に考えると急に顔が熱くなってきた。もう鶯丸のことを前のようなフラットな視線で見れない。裸であんなことやこんなことをしてしまったわけだよ(覚えてないけど)。あの美丈夫と全裸で絡み合って乱れまくったわけだ、AVみたいに!
燃えるように熱い頬を両手で押さえていると、照れていると勘違いをしたらしい乱がにぃっと笑う。
「主さんかぁわいい! ウブだなあ。ボク、いつでも相談乗るからね! ねぇねぇ、それで昨日は正直どうだったの? あの人が乱れるところ想像できないんだよねー!」
「ウワァアア! やめてやめて!!」
詮索好きな乱が興味津々で顔を近づけてくる。私は耳を塞いで奇声を発した。
「主。入るよ」
ちょうどいいタイミングで部屋の戸が開く。お盆を手に乗せた燭台切が姿を現わす。
「朝ごはん持ってきたよ。ゆっくり食べていいからね」
私の布団のそばにお盆を置き、優しい目で見つめる燭台切。まるで我が子の成長を見守る母のような……。ついでに「はい、お茶」と湯呑みを手渡される。熱いお茶が荒んだ心に沁みておいしい。
「体調が優れないようなら今日一日は休養しているといいよ。僕らのことは心配しないでね。それじゃ、乱くん……そろそろ出ようか」
「ええー、まだ肝心のとこ聞けてないのにー」
このままだと乱にあられのないことを聞き出されそうだったので、燭台切が察して気を使ってくれたのだろう。彼の配慮に感謝しつつ、私はお盆の上のご飯に手をつけた。
遠ざかっていく足音。開けた障子の向こうに見える空は清々しく晴れている。とうに朝餉の時間を過ぎ、本丸の刀たちはそろそろ出陣や内番に向かおうかという頃だった。せわしなく動き回る気配、たまに聞こえる短刀の高い声。私が起きてこないことを心配してるんじゃないかな。
そしてこの状況を作り出した張本人、鶯丸はどうしているのだろう。ああ…頭が痛い…。それに別の部分も痛い気がする…破廉恥だ……。うう〜と一人で悶絶し、お腹をさすりながらご飯を口に入れる。
本当に鶯丸と一線を超えてしまったのか。体に刻み付けられた証を見てもまだ信じられない気持ちだった。昨夜は一体なにがあったんだろう。ひどく酔っ払っていたから曖昧だが、思い出せる範囲で記憶をたどってみる。
昨日まで現世にいた。定期健康検査と帰省を兼ねて休暇をもらったので、久しぶりに実家に顔を出したり旧友と会ったりしてきたのだ。残念ながら楽しい帰省とは言えず、最後の日、繁華街に飛び込んで浴びるほど酒を飲み、呆れ顔のこんのすけに本丸へ送り届けられた。
酩酊した私を迎えたのは鶯丸だったと思う。彼に肩を貸してもらって自室へ向かった。布団に下ろされて、なんのかんのと声をかけられて……そこで記憶は途絶えている。
たぶんその後だ。酔った勢いでヤってしまったんだろう……。自分がどういう誘い方をしたのか想像したら怖すぎて震えてくる。これからどんな顔をして彼と対面したらよいのだろうか。
とりあえず食べ終わった食器を片付けるため、重い腰を上げて部屋を出る。お盆を持って廊下を歩いていると、急にドタドタと背後から駆けてくる音がした。
「おい、主!」
朗々とした声と共に勢いよく肩を叩かれ、びっくりして振り向く。そこには息急き切って駆けてきたらしい大包平が私を見下ろしていた。
「聞いたぞ。鶯丸と婚姻の契りを結んだらしいな。なぜそんな大切なことを真っ先に俺に報告しないのだ!」
本丸中に響き渡るような大声で叫ばれ、頭から血の気が引く音が聞こえる。
「祝言はいつ挙げるんだ? 進行などはあの御神刀に任せるとして、親族代表の挨拶は俺がしてやろう。仮にも奴の兄弟のようなものだからな」
「あの、ちょっと待って、大包平、話が、」
「なんだ? ようやく想いを成就させたというのに浮かない顔をしているな。懸念があるならこの俺が相談に乗ってやっても構わないぞ? まあ、今後のことは夫婦ふたりでじっくり考えるといい。鶯丸は出陣中だが、主の具合を案じていたぞ。帰ってきたら顔を見せてやるといい。では俺も内番に戻る!」
傲岸に微笑んだ大包平はポンと私の肩を両手で叩き、向こうへ駆けて行ってしまった。婚姻、祝言。呆然と立ち尽くす頭の中に彼の言葉が反響する。
これはやばい…。周りの刀剣を抱き込んで、確実に包囲されている。
このままだと、娶られる。
その日、出陣から帰った鶯丸が部屋を訪れたのは夕方だった。
近侍の刀剣を通して、帰り次第すぐに私の部屋に来るように伝えておいたのだ。
「入るぞ、主。体調のほうは大丈夫か?」
背筋の凍るような思いをしながらカチコチになって正座をしていた私は、襖が開かれただけで飛び上がりそうになる。一方、戦衣装で固めた鶯丸は常と変わらぬ涼しげな表情で部屋に踏み入った。強張った私の顔に不思議そうな様子を見せながら、目の前に腰を下ろす。
大きく息を吸って、私は口を開いた。
「ええと、鶯丸。昨日のことで話があるのだけど…」
「ああ。俺もそのつもりで来た」
しばし沈黙。どう切り出そうかと悩んで口を開かずにいると、やがて彼が表情を崩しふわりと微笑んだ。
「……返事を聞いていなかったからな」
「え?」
「今朝の返事だ。君に求婚したはずだ。それとも、もうしばらく考える時間が必要か?」
一瞬でかああっと顔が熱くなる。そんな愛しげな目で見られては心が痛い。流されそうになる心を叱咤し、私は切り出した。
「それなんだけど、えっと、まず確認をしたいんだよね。その……昨日致してしまいましたよね?」
突然なにを言い出すのだろうときょとんとした表情をしながらも、鶯丸は無言で首を縦に振る。ああやっぱり。分かっていたことだけど本人直々に肯定されると頭を抱えたくなる。
「あの……出来ればどんな状況だったか教えてほしいんだけど」
「……? 閨での出来事を掘り返すのはどうかと思うが…、どうした主。なにか良くない点があったか?」
ああ、意外と真面目だ! そうだよね、セックス中のあれこれについては言及しないのが一番だ。好青年度がだだ上がりだよ!
ぐうっと拳を握り締め、恥辱に耐えながら私は言葉を続ける。
「あの…実は、申し訳ないんだけど…覚えてないんだよね」
「………何?」
「鶯丸と寝た覚えがないの」
ぱちぱち。柔らかなまつ毛に彩られた瞳が丸く見開く。痛いほどの沈黙が両者の間に流れる。口を開いたのは鶯丸が先だった。
「覚えていない?」
「はい……」
「ほう。それはそれは……」
鶯丸は腕組みをしてなにかを考える素振りをする。ショックを受けているんだかいないんだか読み取れない鉄面皮が無性に怖い。
「ごめんね……怒ってる?」
「……いや。不思議なだけだ。では昨夜のは一体なんだったんだ? 俺のことを好いていると言ってくれただろう?」
「そ、そうなの…?」
「あんなに熱く求めてきたじゃないか。俺の上に乗って激しく腰を振っていたから、ずいぶん慣れているのかと思って寂しかったが」
「ええ?! 何だって?!」
「君が手解きしてくれたんだ。初夜なのに主導権を握れなかったのは男としてどうかとも思ったが、まあ俺は人の身を得たばかりの童貞なのでな、君に先導してもらうのも悪くなかったし積極的な君も魅力的だったぞ」
「ちょっと、ストップ、ストーーップ!!」
どういうこと?! 私にそんな度胸はないぞ!
「嘘でしょ、鶯丸、それ意趣返しのつもりで言ってる?!」
「まさか。君にこんな嘘をついてどうする。挙げ句の果てに『鶯丸のおちんちんおっきくて気持ちいい』と善がっていたな」
「そんな?! 嘘だと言って!」
「ああ。これは冗談だ」
やっぱり怒ってるじゃん!! にっこりと微笑む彼の後ろからどす黒いオーラが滲み出ている気がする。真剣必殺を前にした敵兵のように逃げ出したくなった。後ずさる私に鶯丸はふいに真面目な顔をしてたずねる。
「主。 俺と寝たのが嫌だったのならそうと言ってくれ。下手に誤魔化されるよりはずっと良い」
「いや! 違うの、本当に記憶がないんだって! 信じられないと思うかもしれないけど、私のほうもこの事態を信じられないんだよ」
申し訳なさでいっぱいになり、積み上げてきた自分に対する信頼がボキボキと折れていく。これが真実なら私はとんでもない悪女である。好意を寄せてくれる鶯丸の心身を蹂躙した挙句、自分のしたことを覚えていないのだから。人生最大の恥だ。穴に埋まって出てきたくない。
「そうか……。ならば俺は意識のない主を抱いていたようなものだったのだな」
複雑そうに顔を歪めた鶯丸がため息混じりに呟く。信じられないけど彼は本当に私のことが好きなようだし、とうとう想いを成就させて一線を超えたと思っていたら当の相手がなにも覚えていないのだから、そりゃあ落ち込むだろう。
「すまない…まだあまり整理がつかないのだが…君が覚えていないというなら昨夜のことは忘れた方が良いな」
「いや、こちらこそ…ごめん」
沈鬱なムードが立ち込める。顔を合わせる気にもなれずうつむいたままでいると、先に立ち直ったらしい鶯丸が腰を上げた。襖に手をかけて出て行く素振りをするが、戸を開く前にこちらを振り向いた。
その視線はさっきまでの弱々しいものではなく、射据えるように強い。思わず体が引き締まる。
「だが…言ってしまったことを無に戻すことは出来ない。今までは、主従という関係に亀裂を入れないよう君に想いを伝えるのを控えていたが、こうなっては隠す必要もないだろう。俺はこれから君を落としにいく。主が好きだ。今度こそ本当に、君の身も心も手に入れてみせよう」
ぞくりと肌が粟立つ。頬に、背に、腹に、熱が走る。強い意志と欲を孕んだ瞳にまっすぐに撃ち抜かれて、体の奥から震えが走るような、全身の細胞がさざめき出すような感覚に襲われた。
不敵に笑った鶯丸が部屋を出て、ぱたんと戸が閉まった瞬間、どっと心拍が上昇してきた。胸を押さえて、いつの間にか止まっていた呼吸を再開する。
あんな顔、するの。
これは、心臓に悪い。私の気がいつまで持つか分からない。今の一瞬だけですでに鶯丸の調子に持って行かれている。そりゃだって、あんな美形に正面から好きだと告げられて君をモノにすると宣言されては動揺せずにいられないものだ。
ただ最大にして最凶の問題がひとつ。恋愛を始めるより以前に色々なステップをすっ飛ばして彼と一線を超えているらしく、しかも悪いことに肝心の記憶がまるでないことだ。
(一夜を共にしてから好きになるなんて……軽薄にもほどがあるよなあ…)
関係を持ったあとから相手が気になり出すとか事後から始まる恋なんて、経験のほぼない私にとっては無縁、未知の領域である。まさかこんなことが己の身に降りかかるとは思ってもみなかった。
(どうしよう…。こんな簡単に軽率に、人を好きになってしまってよいのだろうか)
比較的冷静な心の一部が暴走しそうになる思考に歯止めをかけてくる。そうだ、この感情に流されるわけにはいかない。意図せずもここまで純情を保ってきた私の最後の抵抗でもある。そう簡単に籠絡されてたまるか!
そう思っている時点で私はもうだいぶ侵されているのかもしれなかった。
だから目を覚ましたとき、久しぶりに良い朝だと思ったのだ。
チュンチュンと小鳥が鳴いている。障子ごしに差しこむ日射しがあたたかい。じきに春。ずいぶんと上昇した気温がそうと告げている。
昨日は深酒したはずだが不思議と体調も悪くなかった。夢見がよかったこともあいまって、さあ今日も一日がんばろう! とご機嫌でぐるっと寝返りを打つと、体が何かにぶつかった。
隣で鶯丸が寝ている。
あの鳥太刀。眉目秀麗なくせに口を開けば茶と大包平で、なにを考えているんだか掴めない宇宙人みたいな刀である。
どういう状況だろうか。
鶯丸はこっち側を向いてすやすやと穏やかに寝息を立てている。ふだんからのんびりした風貌をしている彼だが、眠るとさらに無防備な顔になるのだなあ。深緑の髪がさらさらとシーツの上に流れていて、見惚れるほど綺麗な寝顔だった。
「いや、それはそうとして」
なんで鶯丸が同じ布団で寝ているんだ。
私は青ざめる。
男女が同衾してやることなんて大方決まっている。いやいやいや。私と彼はそんな関係ではない。ときに内番や任務をサボって二人で茶を飲んだりしていたが、あくまで審神者と刀、公私の分別はつけて接していたつもりだ。鶯丸を閨に連れ込んだ覚えはない。
じゃあ逆に、鶯丸に連れ込まれたのか? とも考えたが、のほほんとした彼がそんな強姦まがいの行動をするとは思えない。
とにかく頭がパニックで、私はずりずりと布団から這い出ていた。畳に尻をついて後退するうちに寝間着がはだけ、ちらっと見えた自分の胸に、虫刺されみたいな赤い痕がついていた。
「嘘だろ……」
これはもう確定だ。鶯丸とヤッてしまっている。下着を確認すると完全に気が滅入りそうだったのでやめておく。だって私は処女だったのだ! 学生時代はそういう機会がなく、まあそのうち良い人が見つかるだろうとなんとなく生きてきて、成人になるかならないかの頃に審神者になってしまった。以来本丸という隔絶された異空間で人間との出会いはほぼ断たれ、見目麗しい刀剣男士を眺めるのみの生活。綺麗だなあ、かっこいいなあとは思っても、審神者命令で夜伽を命じるような気概も度胸もなく。そもそも国宝やら文化財やらの宝刀だ、人間ですらない相手と釣り合わないと分かっていたから恋愛対象にもしていなかった。
なのに。それなのにこの状況。これが本当なら意識がないままに、あろうことか鶯丸と初体験を終えたことになる。
「ん……む」
気配を感じたのだろうか。ぱちりと枯れ草色の瞳が瞬いて、へなへなと座り込んでいる私と目が合った。
「……おや。おはよう」
掛け布団を払い、寝起きの気だるさをにじませて艶っぽく微笑む鶯丸。彼は寝間着を腰帯で結んだだけの緩やかな格好をしていて、きっちりと洋装で固めているふだんとのギャップに色気を感じてしまう。はだけた服からのぞく胸の白さが朝日にまぶしい。すべすべした肌がやたらとなまめかしく光っていて、目に毒だ。
「まだ疲れているだろう。体のほうは大丈夫か? 昨日はずいぶんと無理をしてしまったようだからなぁ」
少し眉を下げて心配そうにこちらをうかがう鶯丸。その態度と言葉の両者が、私の予想を確信に近づける。やっぱり一線を超えてしまっているよ!
体が硬直して何のリアクションもとれないでいると、鶯丸はふむとしたり顔でうなずいて体を起こした。
「まあ、責任は取る」
優しく手を握られて温かな体温に包まれる。ああ、さっきのぬくもりは、夢なんかじゃなくて、本当に……。
「まさか君のほうから誘ってくれるとは思いもしなかったなあ。だがこれは俺から言わせてほしい。ぷろぽーず? というのはよく分からんが、俺の番いになってくれ」
手の甲にちゅっと口付けを落とされ、期待を含んだ目で見上げられる。
君のほうから誘った? なにもかもが理解の範疇を超え、話の展開についていけない。鶯丸と寝た記憶はまったくないんだけど、この状況と彼の言葉を信じるなら最後まで致してしまっている。しかも求婚までされてしまった。人生初のプロポーズだ。なんてこった。
顔を上げた鶯丸のきらきらした目に返す言葉がない。
外ではやっぱり鳥がさえずっている。朝チュンとはまさにこれ。なんだか色々なものを失ってしまった空虚な心地がする。
脳の処理能力の限界を迎えて、私はぶっ倒れた。
「あ、起きた。主さん、だいじょうぶ?」
意識を失って目が覚めたら心配そうな顔の乱にのぞきこまれていた。鶯丸が助けを呼んでくれたらしい。「僕が着替えを用意しておくから主さんはお風呂に入っておいで」と促されるままに浴室に向かい、寝間着を脱いだところで愕然とした。
案の定というかなんというか、体中に噛み跡がついていて下腹部には鈍痛がある。ああこんな形で純潔を散らしてしまうとは……。情けなさにシャワーを浴びながら涙が出てきた。鶯丸の言動を見るに無理矢理されたわけでもないようなので、己を恨むしかない。
着替えを手伝ってくれた乱はしばらく小言を呟いていたが、やがていたずらっぽく目を輝かせる。
「でも、良かったね。鶯丸さんと主さんはいつくっつくのかと思ってたけど、もうそんな関係になってたんだね!」
ひっくり返りそうになる。私と鶯丸は至って健全な関係だったわけで、お互いに恋愛感情を抱いているという雰囲気でもなかったのだ。なのに乱は満足そうにうなずいている。
「私と鶯丸がくっつくって…どういうこと…?」
「え? 鶯丸さん、ずーっと主さんにお熱だったじゃない。主さんだって悪く思ってなかったでしょ? 毎晩部屋でお茶とかしてたから、上手くいってるのかなーって」
「ま、まじか……」
いつからだろう、執務終わりに鶯丸とお茶を飲んで歓談するのが習慣になっていた。わざわざカフェインレスのお茶を見繕ってくれる優しさがありがたく、就寝前の心休まるひとときだった。
とはいえ、日中あまり関わりを持てない鶯丸とのお喋りタイムくらいにしか思っていなかったのだけど、乱はこれを指して「上手くいってる」と思い込んでいたらしい。がっくりと肩を落とすと、彼は不思議そうにこちらをのぞきこんでくる。
「ねぇ、大丈夫? まさかと思うけど、襲われたわけじゃないんだよね?」
「そういうわけじゃないけど…」
昨晩の記憶がまったくない、なんて言ったら乱はどう反応するのだろうか。
正直、記憶がないから実感もない。鶯丸のことをそういう対象として見たことがないし、性行為の経験もないから具体的に彼とどんなことをしたのかも想像出来ない。いや、そのへんの知識がまるで無いというわけではない、えっちなビデオ的なものは見たことあるけど、自分がそんなことをするのはまた別の話だ。
……待って。冷静に考えると急に顔が熱くなってきた。もう鶯丸のことを前のようなフラットな視線で見れない。裸であんなことやこんなことをしてしまったわけだよ(覚えてないけど)。あの美丈夫と全裸で絡み合って乱れまくったわけだ、AVみたいに!
燃えるように熱い頬を両手で押さえていると、照れていると勘違いをしたらしい乱がにぃっと笑う。
「主さんかぁわいい! ウブだなあ。ボク、いつでも相談乗るからね! ねぇねぇ、それで昨日は正直どうだったの? あの人が乱れるところ想像できないんだよねー!」
「ウワァアア! やめてやめて!!」
詮索好きな乱が興味津々で顔を近づけてくる。私は耳を塞いで奇声を発した。
「主。入るよ」
ちょうどいいタイミングで部屋の戸が開く。お盆を手に乗せた燭台切が姿を現わす。
「朝ごはん持ってきたよ。ゆっくり食べていいからね」
私の布団のそばにお盆を置き、優しい目で見つめる燭台切。まるで我が子の成長を見守る母のような……。ついでに「はい、お茶」と湯呑みを手渡される。熱いお茶が荒んだ心に沁みておいしい。
「体調が優れないようなら今日一日は休養しているといいよ。僕らのことは心配しないでね。それじゃ、乱くん……そろそろ出ようか」
「ええー、まだ肝心のとこ聞けてないのにー」
このままだと乱にあられのないことを聞き出されそうだったので、燭台切が察して気を使ってくれたのだろう。彼の配慮に感謝しつつ、私はお盆の上のご飯に手をつけた。
遠ざかっていく足音。開けた障子の向こうに見える空は清々しく晴れている。とうに朝餉の時間を過ぎ、本丸の刀たちはそろそろ出陣や内番に向かおうかという頃だった。せわしなく動き回る気配、たまに聞こえる短刀の高い声。私が起きてこないことを心配してるんじゃないかな。
そしてこの状況を作り出した張本人、鶯丸はどうしているのだろう。ああ…頭が痛い…。それに別の部分も痛い気がする…破廉恥だ……。うう〜と一人で悶絶し、お腹をさすりながらご飯を口に入れる。
本当に鶯丸と一線を超えてしまったのか。体に刻み付けられた証を見てもまだ信じられない気持ちだった。昨夜は一体なにがあったんだろう。ひどく酔っ払っていたから曖昧だが、思い出せる範囲で記憶をたどってみる。
昨日まで現世にいた。定期健康検査と帰省を兼ねて休暇をもらったので、久しぶりに実家に顔を出したり旧友と会ったりしてきたのだ。残念ながら楽しい帰省とは言えず、最後の日、繁華街に飛び込んで浴びるほど酒を飲み、呆れ顔のこんのすけに本丸へ送り届けられた。
酩酊した私を迎えたのは鶯丸だったと思う。彼に肩を貸してもらって自室へ向かった。布団に下ろされて、なんのかんのと声をかけられて……そこで記憶は途絶えている。
たぶんその後だ。酔った勢いでヤってしまったんだろう……。自分がどういう誘い方をしたのか想像したら怖すぎて震えてくる。これからどんな顔をして彼と対面したらよいのだろうか。
とりあえず食べ終わった食器を片付けるため、重い腰を上げて部屋を出る。お盆を持って廊下を歩いていると、急にドタドタと背後から駆けてくる音がした。
「おい、主!」
朗々とした声と共に勢いよく肩を叩かれ、びっくりして振り向く。そこには息急き切って駆けてきたらしい大包平が私を見下ろしていた。
「聞いたぞ。鶯丸と婚姻の契りを結んだらしいな。なぜそんな大切なことを真っ先に俺に報告しないのだ!」
本丸中に響き渡るような大声で叫ばれ、頭から血の気が引く音が聞こえる。
「祝言はいつ挙げるんだ? 進行などはあの御神刀に任せるとして、親族代表の挨拶は俺がしてやろう。仮にも奴の兄弟のようなものだからな」
「あの、ちょっと待って、大包平、話が、」
「なんだ? ようやく想いを成就させたというのに浮かない顔をしているな。懸念があるならこの俺が相談に乗ってやっても構わないぞ? まあ、今後のことは夫婦ふたりでじっくり考えるといい。鶯丸は出陣中だが、主の具合を案じていたぞ。帰ってきたら顔を見せてやるといい。では俺も内番に戻る!」
傲岸に微笑んだ大包平はポンと私の肩を両手で叩き、向こうへ駆けて行ってしまった。婚姻、祝言。呆然と立ち尽くす頭の中に彼の言葉が反響する。
これはやばい…。周りの刀剣を抱き込んで、確実に包囲されている。
このままだと、娶られる。
その日、出陣から帰った鶯丸が部屋を訪れたのは夕方だった。
近侍の刀剣を通して、帰り次第すぐに私の部屋に来るように伝えておいたのだ。
「入るぞ、主。体調のほうは大丈夫か?」
背筋の凍るような思いをしながらカチコチになって正座をしていた私は、襖が開かれただけで飛び上がりそうになる。一方、戦衣装で固めた鶯丸は常と変わらぬ涼しげな表情で部屋に踏み入った。強張った私の顔に不思議そうな様子を見せながら、目の前に腰を下ろす。
大きく息を吸って、私は口を開いた。
「ええと、鶯丸。昨日のことで話があるのだけど…」
「ああ。俺もそのつもりで来た」
しばし沈黙。どう切り出そうかと悩んで口を開かずにいると、やがて彼が表情を崩しふわりと微笑んだ。
「……返事を聞いていなかったからな」
「え?」
「今朝の返事だ。君に求婚したはずだ。それとも、もうしばらく考える時間が必要か?」
一瞬でかああっと顔が熱くなる。そんな愛しげな目で見られては心が痛い。流されそうになる心を叱咤し、私は切り出した。
「それなんだけど、えっと、まず確認をしたいんだよね。その……昨日致してしまいましたよね?」
突然なにを言い出すのだろうときょとんとした表情をしながらも、鶯丸は無言で首を縦に振る。ああやっぱり。分かっていたことだけど本人直々に肯定されると頭を抱えたくなる。
「あの……出来ればどんな状況だったか教えてほしいんだけど」
「……? 閨での出来事を掘り返すのはどうかと思うが…、どうした主。なにか良くない点があったか?」
ああ、意外と真面目だ! そうだよね、セックス中のあれこれについては言及しないのが一番だ。好青年度がだだ上がりだよ!
ぐうっと拳を握り締め、恥辱に耐えながら私は言葉を続ける。
「あの…実は、申し訳ないんだけど…覚えてないんだよね」
「………何?」
「鶯丸と寝た覚えがないの」
ぱちぱち。柔らかなまつ毛に彩られた瞳が丸く見開く。痛いほどの沈黙が両者の間に流れる。口を開いたのは鶯丸が先だった。
「覚えていない?」
「はい……」
「ほう。それはそれは……」
鶯丸は腕組みをしてなにかを考える素振りをする。ショックを受けているんだかいないんだか読み取れない鉄面皮が無性に怖い。
「ごめんね……怒ってる?」
「……いや。不思議なだけだ。では昨夜のは一体なんだったんだ? 俺のことを好いていると言ってくれただろう?」
「そ、そうなの…?」
「あんなに熱く求めてきたじゃないか。俺の上に乗って激しく腰を振っていたから、ずいぶん慣れているのかと思って寂しかったが」
「ええ?! 何だって?!」
「君が手解きしてくれたんだ。初夜なのに主導権を握れなかったのは男としてどうかとも思ったが、まあ俺は人の身を得たばかりの童貞なのでな、君に先導してもらうのも悪くなかったし積極的な君も魅力的だったぞ」
「ちょっと、ストップ、ストーーップ!!」
どういうこと?! 私にそんな度胸はないぞ!
「嘘でしょ、鶯丸、それ意趣返しのつもりで言ってる?!」
「まさか。君にこんな嘘をついてどうする。挙げ句の果てに『鶯丸のおちんちんおっきくて気持ちいい』と善がっていたな」
「そんな?! 嘘だと言って!」
「ああ。これは冗談だ」
やっぱり怒ってるじゃん!! にっこりと微笑む彼の後ろからどす黒いオーラが滲み出ている気がする。真剣必殺を前にした敵兵のように逃げ出したくなった。後ずさる私に鶯丸はふいに真面目な顔をしてたずねる。
「主。 俺と寝たのが嫌だったのならそうと言ってくれ。下手に誤魔化されるよりはずっと良い」
「いや! 違うの、本当に記憶がないんだって! 信じられないと思うかもしれないけど、私のほうもこの事態を信じられないんだよ」
申し訳なさでいっぱいになり、積み上げてきた自分に対する信頼がボキボキと折れていく。これが真実なら私はとんでもない悪女である。好意を寄せてくれる鶯丸の心身を蹂躙した挙句、自分のしたことを覚えていないのだから。人生最大の恥だ。穴に埋まって出てきたくない。
「そうか……。ならば俺は意識のない主を抱いていたようなものだったのだな」
複雑そうに顔を歪めた鶯丸がため息混じりに呟く。信じられないけど彼は本当に私のことが好きなようだし、とうとう想いを成就させて一線を超えたと思っていたら当の相手がなにも覚えていないのだから、そりゃあ落ち込むだろう。
「すまない…まだあまり整理がつかないのだが…君が覚えていないというなら昨夜のことは忘れた方が良いな」
「いや、こちらこそ…ごめん」
沈鬱なムードが立ち込める。顔を合わせる気にもなれずうつむいたままでいると、先に立ち直ったらしい鶯丸が腰を上げた。襖に手をかけて出て行く素振りをするが、戸を開く前にこちらを振り向いた。
その視線はさっきまでの弱々しいものではなく、射据えるように強い。思わず体が引き締まる。
「だが…言ってしまったことを無に戻すことは出来ない。今までは、主従という関係に亀裂を入れないよう君に想いを伝えるのを控えていたが、こうなっては隠す必要もないだろう。俺はこれから君を落としにいく。主が好きだ。今度こそ本当に、君の身も心も手に入れてみせよう」
ぞくりと肌が粟立つ。頬に、背に、腹に、熱が走る。強い意志と欲を孕んだ瞳にまっすぐに撃ち抜かれて、体の奥から震えが走るような、全身の細胞がさざめき出すような感覚に襲われた。
不敵に笑った鶯丸が部屋を出て、ぱたんと戸が閉まった瞬間、どっと心拍が上昇してきた。胸を押さえて、いつの間にか止まっていた呼吸を再開する。
あんな顔、するの。
これは、心臓に悪い。私の気がいつまで持つか分からない。今の一瞬だけですでに鶯丸の調子に持って行かれている。そりゃだって、あんな美形に正面から好きだと告げられて君をモノにすると宣言されては動揺せずにいられないものだ。
ただ最大にして最凶の問題がひとつ。恋愛を始めるより以前に色々なステップをすっ飛ばして彼と一線を超えているらしく、しかも悪いことに肝心の記憶がまるでないことだ。
(一夜を共にしてから好きになるなんて……軽薄にもほどがあるよなあ…)
関係を持ったあとから相手が気になり出すとか事後から始まる恋なんて、経験のほぼない私にとっては無縁、未知の領域である。まさかこんなことが己の身に降りかかるとは思ってもみなかった。
(どうしよう…。こんな簡単に軽率に、人を好きになってしまってよいのだろうか)
比較的冷静な心の一部が暴走しそうになる思考に歯止めをかけてくる。そうだ、この感情に流されるわけにはいかない。意図せずもここまで純情を保ってきた私の最後の抵抗でもある。そう簡単に籠絡されてたまるか!
そう思っている時点で私はもうだいぶ侵されているのかもしれなかった。
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