※強姦、オチも意味もない、救いもない

目が覚めると、眼前に清光がいた。

「あ、主…」

ぎょっとしたような顔は思いがけないほど至近距離にあり、一体どういう状況かとまだはっきりしない頭を叱咤する。気を失う前に何が起こったかを思い出すと同時にこの状況を理解した。

「その…ごめん、ね」

清光は私に覆いかぶさり、足の間に割り込んでいた。両手が服の下に潜り込んでいる。すでに私は半分脱がされているようだ。

「主、起きたんだね」

不意に頭の後ろから別の声が聞こえて、首だけ動かしてそちらを見上げる。声の主は青ざめた能面のような顔で私と清光を見ている。

「こんなことしてごめんね」

謝りながらも行為を中断させる気はないようだ。

「…こんなこと許さない。やめてよ」

精一杯の威圧を込めて呻くと、私を押し込めたままの清光は泣きそうに顔を歪めた。

「ごめんね。でも俺たちもう我慢できないんだよ。主のこと見てるだけで苦しいんだよ」

清光の手が服をめくり上げる。外気に触れた肌がひやりとし、嫌な汗が込み上げてくる。
絶望的な心地になりながら安定を見やる。彼が助けてくれる見込みなんてないのは分かっているのに、まるで期待を求めるような馬鹿げた目で見上げた。
安定は私ではなく清光を冷たく見下していた。

「早くしろよ。お前の情事など見る趣味はないからね。僕は向こうにいるからさっさとすませろよ」

ぱたん、と襖が閉まり、私と清光だけが残された。清光は唇を噛み、怒りとも悲しみともつかない表情をしていたが、間も無く動きを再開した。気絶させられた時の衝撃で力が出ないため、抵抗は蚊ほどの力もなく、私はあっという間に暴かれた。必死で足を閉じようとするが彼の膝に拒まれる。

「主、許して」

清光は悲痛な表情で哀願ともつかぬ台詞を吐く。片手で私を押さえつけ、もう片手で彼自身の服を下ろした。既に奮り立った一物が視界に入る。犯される運命が変えられないことを悟り、背筋が粟立った。
異様な光を宿した赤い目が私の局部をとらえ、彼自身を違えなくそこへ導いた。

「ぅっ…!」

彼の肩を押し返すが何の抵抗にもならない。異物の侵入に、反射的な筋肉の緊張が起こる。

「あ…はぁ…主…。主の中すごいあっつ…気持ちい…」

清光は苦しそうに息を吐きながら、ゆっくり体を前後させる。抜き差しされるたびに内臓が内側から撫でられるような悪寒を感じる。

「や、やめ、て」

痛みと不快、嫌悪感に心が押しつぶされる。

「ごめん…主の中良すぎて…とまんない」

はぁはぁと荒い息を繰り返し、清光はせわしなく腰を叩きつける。固いものが強引に膣を変形させる。

「あるじ、主…好き」

唇に、首に、耳に噛み付きながら、清光は譫言のように好きだと繰り返す。

「好き…愛してる、主愛してるよ…」

清光の声と、粘膜の触れ合う卑猥な水音が反響する。強姦しておきながら甘い愛の台詞を囁くなんて身勝手も良いところだ。好きだとのたまいながら私を犯し一方的に快楽を貪る男に言葉を返す気にもなれず、いつしか気が遠くなり、ただ玩具のように体を揺さぶられていた。何度も擦り上げられた膣は悲鳴をあげ、子宮や骨盤周囲まで鈍痛に襲われている。一刻も早くこのグロテスクな暴力が終わることを祈っていた。

「ねぇっ……、抜いて…もうやだ……」

清光は絶頂が近いのか、しきりに喘ぎながら潤んだ目で私を見下ろす。

「…あるじ…っ、駄目だよ、逃がさないよ…。俺のものになって…、俺の子孕んでよ」

目の前の僅かな希望がひび割れる音が聞こえるようだった。

「あ、あるじ、出すよ」

喘ぎ声の合間に清光が切羽詰まった調子で言う。

「やだぁっ、中は駄目っ…!! 」

こればかりは許容できない。しかし、さっきより激しく突き立ててくる清光は余裕なさそうな顔をしていて、私の声が聞こえているか定かではない。嫌な予感が頭を埋め尽くした。清光は体を倒して私の首に噛み付く。熱い息と鋭い痛みを首に感じ、体の奥が冷えていく。

「嫌だ嫌だ……妊娠しちゃう…」
「好き、好き……あ、主…、っっ!」

熱に浮かされたような清光の声が耳朶を打つ。がくんと大きく突かれて、同時に彼の体が強張るのを感じた。
耳元で喘ぎ声とも泣き声ともつかぬ声が響く。あまりに強い力で抱きすくめる腕に骨を折られそうになる。腹の中でびくびくと彼が跳ねて、精を撒き散らしたのを悟った。絶望がそこから全身に侵食していく。
私にしがみついて思う存分欲を吐き出した後、ようやく少し落ちついたらしい清光が、まだ荒い息をつきながらこちらをのぞきこむ。私を醜悪な暴力で蹂躙し犯し尽くしてなお恐ろしいほどに美しい男。頬に触れる指が優しくて吐き気を催した。

「…すごい、気持ち良かった。無理矢理してごめんね、主」

清光が唇を寄せる。嫌悪感に首をずらして避けようとした瞬間、戸が開いた。

「お前の声、筒抜けなんだよ。もう終わったなら代われよ」

不機嫌を露わにした安定が重なり合ったままの私と清光を見下ろしている。

「…なんなの。先にできなかったからって怒るなよ」

清光が声を荒げる。

「いいから早く、退けよ」

険悪な雰囲気を漂わせる二人。予想はできていたが、私は続けて安定に犯されるのだと悟ってさらに絶望した。
チッと舌を打って清光が私から離れる。体内を圧迫していたものが抜けて、同時に緊張が解けたのか、やっと呼吸が楽になった。しかし息をつく間もなくいつの間にか近くに寄っていた安定に腕を押さえられた。

「ねぇ。余裕ないじゃん。主に乱暴するなよ?」

清光が自分の服を直して立ち上がる。

「お前が言えることか」

吐き捨てる安定が、今度は清光の代わりに足の間に割り込もうとする。

「嫌だ…、やめて安定」

私は懇願し必死で足を閉じていたが、

「ごめんね。ここまできたらやめられないよ」

膝を足の間に入れられ、強引に開かれてしまう。

「清光だけに抱かせるなんて許せないしね」

青い目に濁った光を宿して私を見下ろす安定は、もはや正気ではないのだろう。

「俺、途中でやめさせられたし満足してないんだよね。お前の見ててもいい?」

清光が壁に寄りかかって私たちを見る。

「お前、目を離したら主の首とか絞めそうで怖いし」
「しないよ」
「そう?自分じゃ分からないかもしれないけど、人殺しそうな顔してるよ」
「うるさいな。分かったよ。好きにしろよ」

ただし邪魔だけはするなよと念を押して、安定は袴に手をかける。
清光は安定が私を傷つけないように見張ってくれるつもりなのだろうが、犯される様を第三者に見られるというのは屈辱でしかなかった。安定は服を下ろすと私に体を重ねる。固いものが腹部に触れ、思わず身が竦んだ。両手で頭を支えて安定が口付けてくる。
舌を入れようとしてきたが、私が固く口を閉ざしていたので一度断念する。

「主、口開けてよ」

不意に安定の片手が胸を弄り、ひっと思わず声に出した瞬間にまた唇を奪われた。今度こそ舌が口内に侵入してくる。胸を揉まれ続け、何とも言えない感覚に呻き声が漏れてしまう。少なくとも快感ではない。舌を舐められ唾液を吸われる不快感にも総毛立った。やがて安定は口を離し身を起こすと、怒張したものを私の陰部に擦り付ける。

「入れるよ」

清光に蹂躙されてすでにぐちゃぐちゃのそこは、対した抵抗もなく安定を受け入れた。しかしさっきよりも痛みが和らぐことはない。安定が深くまで侵入してくる苦しさに息が詰まった。清光の出したのが残っているのに他の男のものを入れるなんて、とんでもなく卑猥な気がする。実際、中に出された精液のせいか滑りが良くなっていた。

「清光の全部掻き出すから」

低い声で呟き出し入れを繰り返す安定に恐怖を覚える。結合部からは白濁液が溢れているのだろうと思って吐き気がした。安定は私の肩を押さえつけて容赦無く腰を突き立ててきた。差し込まれるたびに内臓を抉られるような痛みに襲われる。泣き声のようなものが漏れ、情けなさに本当に泣きたくなった。

「主、気持ちいい?」

荒い呼吸をしながら安定が聞いてくる。

「い、痛い」

がくがくと揺さぶられ上手く発言できないが、何とか精一杯の苦痛を伝える。

「痛い?ごめんね。僕は気持ちいいよ」

私の苦しみなどお構いなしに安定は激しく出し入れを続行した。絶望と悔しさに打ちのめされる。

「主は僕のこと、好きだよね?」

急に安定は体を倒して顔を近づけてきた。瞳孔の広がった青い眼に射据られる。押し上げるように深くまで突いてくる、あまりの痛みに悲鳴を上げて首を振った。

「いたい…いたい」
「僕のこと…愛してくれるって言ったよね?」

狂ってる。早く終われ、と念じながら拷問のような時間に耐えた。

「っ…ん、出そう…」

安定が苦しそうに息を詰める。きっと中に出されるんだろうな。抵抗なんてする意味もないんだろう。

「主。僕のこと愛してるよね?人ってさ、愛し合う者同士で交わると子供ができるんでしょ?僕も主のこと愛してるから、きっとできるよね」

何もかもが違う。首を振りたかったが恐怖で体が動かなかった。刀の化け物の子供など孕みたくない。

「っあ…もう、出ちゃう…」

急に強く体を掴まれて、ひどい勢いで揺らされた。

「いっ、嫌だ…出したら…駄目」

私の台詞が終わるのと同時に、安定が喘ぎ声を洩らして、奥の方で果てた。中で安定のが精を吐き出すたびに震えているのが分かった。

「ん…、うっ…」

安定が苦しそうに快楽を享受している様を怖気立つような気持ちで見ていた。やがて力が抜ける。頭に触れられて、口付けされた。下半身も上も繋がっている事実に虫酸が走る。柔らかく口内を弄られる。キスしている間にまた安定のが固くなったらどうしようと怯えていた。

「は…、主…可愛いよ…」

息を整えながら微笑む安定。歪んだ目元に嫌悪が込み上げる。もう嫌だ。ここにいるのは顔だけが美しい化け物だ。安定の手を振りほどきたくて身じろぎをした瞬間、

「満足した?」

と頭上から声がかかった。清光が冷たく私たちを見下ろしている。安定は殺気立った目で清光を見上げた。

「邪魔するなと言っただろ」
「やってる最中は邪魔しなかったよ?」

清光は私たちの前にしゃがみこみ、目線を合わせて薄笑った。

「いつまで主を占領してる気?俺、まだ満足してないって言ったよね」

一瞬見えた希望は絶望に反転した。安定がゆっくりと体を離して、代わりに清光が覆い被さる。

「それ、終わったら僕ももう一回するから」

低い声で凄む安定。清光はそれには答えずに、赤い目を私に寄せて愛しげに微笑んだ。

「主。あんなのより俺のほうが愛してるって教えてあげるね」



結局私は彼らの気が済むまで突き回された。若い体の、尽きることのない性欲をひたすらにぶつけられ続けた。何度か分からないほど猛った男根をぶちこまれ、乱暴に突き立てられ、枯れない精液を注ぎ込まれた。溢れた白濁液で陰部から床までぐちゃぐちゃに濡れていた。

「主。ごめんね」

事が終わった後、二人は謝りながら私の体を熱い布巾で拭き、服を整えてくれた。私は一刻も早くこの場から立ち去りたかったが、全く足腰に力が入らず、彼らに抱きかかえられて自室まで運ばれる有様となった。
自室にて、布団に倒れこんで顔を埋めたままの私に二人は狼狽えるような声で呼びかける。

「辛かった?ごめんね、主」
「そんなつもりじゃなかったんだよ」
「本当に主のことが好きなんだよ」
「嫌わないで」

何も弁解など聞きたくない。私は手を払って出て行くように促した。二人の視線を感じながら、やがて戸が閉まり足音が遠ざかるのを聞いた。
一人になると涙が溢れてきた。熱い液体が頬を伝う。同時に別の部分からも熱い液体が溢れて服を濡らすのが分かった。私は泣きながら風呂の湯を沸かし、汚れた下着をごみ箱に投げ入れて、浴槽で泣いた。



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