※産卵、強姦

朝から続いていた腹痛が夕方になって急にひどくなった。無理をして執務に就いていたのが悔やまれる。気がついたときにはもう立ち上がれなくなっていた。間欠的に襲ってくる痛みは次第に間隔を狭めており、これは陣痛だと理解せざるをえなかった。
 せめて自室にたどり着こうと廊下を這っていたのだが、痛みのあまり動けなくなってしまう。腹を抱えてうずくまっていると、

「主?!」

 聞き覚えのある声が驚愕したように私を呼んで、続いて床板を蹴る音が鳴る。

「どうしたの? 大丈夫かい?」

 こちらを心配する様子で姿を現したのは髭切だった。眉を下げて不安そうに私をのぞきこんでくる。温かい手が背中に乗せられる。返事ができなかった。

「お腹が痛いの?」

 私がお腹を押さえているために気づいたのだろう、下腹部に目線をやって、それから彼はなにかに気づいたのか怪訝そうに顔を曇らす。

「君……身籠っているの?」

 バレてしまった。こともあろうに彼の兄である刀剣に。しかし私はこの状況を取り繕うこともできずに、お腹を押さえて呻いていた。
 髭切がなおさら心配そうな顔をして体を屈めてくる。

「ねえまさか……弟の子かい?」

 やはり髭切も思うところがあったろだろう、腹の子の親候補としてすぐさま膝丸を挙げる。膝丸とそっくりな端麗な顔が間近で見つめてくるが、私がいまここにいてほしいと望む人物は髭切ではない。

「膝丸……膝丸連れてきて」

 絞り出すような声で頼む。これで髭切の予想は確信に変わっただろうが、いまの私には事情を説明する余裕がなかった。
 髭切は一瞬思い悩むような様子を見せたが、すぐに「分かったよ」と答えて廊下を走って行った。





 自室に寝かされた私は、膝丸と髭切が入り口の戸の前で言葉を交わし合うのをかろうじて聞いていた。

「兄者、すまないが、このことは内密にしてもらえるか」

 髭切に呼ばれて駆けつけた膝丸は私を部屋に運んだあと、口止めのために彼の兄を呼び止めていた。

「主とおまえがそう望むのなら僕は黙っておくけど、その子が産まれたらどうするんだい? 遅かれ早かれ皆が知ることになるだろう」
「その時は俺たちが説明する。兄者は口を出さないでくれ」
「…おまえは一体なにを怖れているのかな。……ほら、早く主をみてあげなよ。おまえの子が産まれそうなのだろう」

 髭切が上着を翻す気配を感じた。ぱたんと戸が閉められる。
 畳を踏む音がして、膝丸が寄ってきたのが分かった。私は布団の中から腕を伸ばす。

「ひざ、膝丸……」

 すぐさま手が握られて、目の前に膝丸が腰を下ろす。

「母様、心配をかけてしまってすまない。俺が早く気づければよかったのだが……。お一人で苦しませてしまって申し訳ないことをした。お辛いだろう?」

 気遣わしげに両手で包んでくる膝丸の、その大きな手を強い力で握り返した。

「赤ちゃん…まだ産まれる時期じゃないんだよ」

 子を宿してからたったの一月と数週間しか経っていないのだ。胎児の成長が早いことは理解していたが、まだ私の腹の膨らみは臨月にはほど遠い。注意して見れば服の上からでも若干腹が張っているのが分かる程度だ。これは陣痛ではなく、流産してしまうのかもしれない。産みたくないと思っていたのに、いざ胎内で育てていたものが流れつつあると思うと、どうしようもなく心が痛んだ。

「どうか落ち着いてくれ。俺と貴女の子供ならば普通の人間の子とは違うはずだ。人の子より産まれる時期が早くても問題ないかもしれない」

 彼の言うことも一理ある。いよいよ腹の痛みは持続的になり、はあはあと息をつきながら体を丸める。赤子なんて産んだことがないから己の身になにが起こるのか恐ろしくて震えてくる。
 唐突に、びちゃっと股の間から液体が噴き出してきた。慌てて衣服を引っ張り下ろして下半身をさらけ出す。膝丸の目の前だが気にしていられなかった。水っぽい体液が布団を濡らしていく。続いて、下腹部全体がぎゅうっと締め付けられるような感覚がして、筋肉が収縮しているのを感じた。
 なにか塊のようなものが産道をこじ開けて体内を下っていく。異物感。膝丸の手を血が止まるほど強く握りしめ、己の制御の及ばない現象に耐える。腹の膨らみが徐々に下降しているようだ。筋肉の収縮に合わせて腹に力を入れると、中で突っかかっていた塊がずるりと落ちてきた。粘液にまみれたそれがついに膣口をくぐって体外へと出る。
 ぽとり、と産み落とされた塊は、どう見ても赤ん坊には見えなかった。シーツの上に転がったそれは、ピンポン玉くらいの大きさの、ぬらぬらと光る半透明の球体だった。

「ひっ……、なに…これぇ…!」

 一つ産み落とすとあとは栓が抜けたようにぽこぽこと続いて出てくる。いくぶん柔らかい気もするが、それはちょうど鳥や爬虫類のような殻に包まれた卵にほかならなかった。シーツの上に濡れた球体が転がり出ては溜まっていく。

「やだ…なにこれ…卵?! なんで卵が出てくるの?!」

 叫ぶ私を落ち着けるかのように、膝丸が握った手を揺らす。

「母様、大丈夫だ。俺と貴女の子供なら卵として産まれてきてもおかしくはないだろう」
「なにいってんの…! こんなの、おかしいに決まってるでしょ…!!」

 喚きつつも体内から卵を産み出すのは止まらない。最後の一つを産卵したときには、結局五個ほどの卵が積み重なっていた。殻の表面と膣口が粘性の糸で繋がっている。おぞましい。腹の中にこんなものを飼っていたのか。陣痛はおさまったがショックのあまり身動きがとれなかった。産み落とした我が子を抱き締める気にもなれない。
 私が凍りついたまま卵を見つめていると、膝丸がうやうやしく一つを手に取った。

「これが貴女と俺との子供なのだな……」

 ぞっとした。愛しげな目で卵を手に乗せる膝丸だが、その手の上でくたりと卵が重力に逆らえずに凹んでしまう。よく見れば半透明の殻の中は白く濁っていて、卵黄も卵白もなさそうで、中で胚児が育つ様子もなかった。生命の気配がしない。

「……ああ、駄目だったのか」

 どうやら正常に発育しなかったらしい。残る卵もみな同様だった。得体の知れない我が子が孵化することはないと実感すると、安堵とも落胆ともつかぬ感情が胸に広がる。

「せっかく産まれたと思ったのに…」

 膝丸が悲しそうに手の上の死んだ卵を見つめる。我が子の死を悼んでいる膝丸には悪いが、やはり人間と付喪神ではまともな子は作れないのだろう。私の背中は鱗で覆われ、半分蛇女と化しているが、まだ膝丸の子を産めるほどには妖に近づいていないのだ。己が完全な化け物と成り果てていないことに安堵する。

「残念だな…。だが貴女が無事でなによりも良かった」

 膝丸は表情を和らげて私を向く。少し落ち着きを取り戻した私は、初めての出産のあとの緊張も解けてきて泣きたいような気分になっていた。慰めてもらいたくて膝丸に手を伸ばす。しかし次の瞬間、思いもよらない行動を見て絶句するはめになる。膝丸が手に乗せていた卵を口に含み、おもむろに飲み込んだのだ。
 目の前の出来事を理解することができぬまま、彼の喉が動いて塊が嚥下されていくのを見届けた。ごくんと一息に卵を丸呑みした膝丸は、新たにもう一つへと手を伸ばす。

「な、に…やってるの!?!?」

 長い舌で卵の表面を撫でる膝丸は、私の悲鳴に不思議そうな顔で応える。

「このまま腐らせてしまっては忍びないだろう。体に取り込むのが一番の供養ではないか」

 おぞましいまでに感覚がずれている。やはりこれが人外と人間の差なのか。
 膝丸はピンポン玉くらいの卵を苦もなく一呑みにする。蛇としか思えない。

「これが貴女と俺の細胞が融合したものだと思うと愛しくてならないな」

 己の子を丸呑みして満足そうに笑う顔は、やはりこの世のものとは思えないほど美しく恐ろしい。

「やだやだ、卵食べないでよ…!! それはあなたの子供なんだよ!」

 ほとんど泣きそうになって膝丸の腕にしがみつく。実らなかったとはいえ、その卵は正真正銘私と膝丸の血を分けた子供であるのだ。私にとっては一月もの間自分の胎内で育てていたものでもある。いくら死んでいる、不気味な卵だとはいえ、父である存在に喰われる光景は見るに耐えなかった。
 膝丸は呆気にとられたように私を見つめたが、やがて嬉しそうに微笑んだ。

「そうか。俺との子がこの世に生を受けれなかったことを貴女も悲しんでくれるのだな」

 涙でにじむ視界に膝丸の顔が近づき、ふと気づいたときには天井を見上げていた。

「だが貴女がそう悲観することはない。子供はまた作ればいい」

 呆然と膝丸を見上げる。仰向けに床に転がされて、上に覆い被されて、それでもまだなにをしようというのか分からなかった。
 下半身を押し付けられる。交接の姿勢を取られてようやく、今にも犯されようとしているのだと理解した。

「ねえ、本気なの?」

 子供を産出してぺたんこになった腹に、彼の固くなったものが当たる。さっきから想像の範疇をはるかに超えっぱなしの現実に総毛立つ。一体どうして産卵した母の姿を見て勃起できるのだ。
 肘をついて必死に後ずさる。子供を産んだ直後だからか、足腰に力が入らない。

「嫌だ…! したくない」

 這うようにして膝丸から逃れようとするが、襟元を掴まれて阻止される。

「母様、一月も貴女と体を交えることができなかったのだぞ。ずっと腹の子のために抑えてきたのだ。今日こそは中に入らせてくれ、いいだろう?」

 いいわけがない。身勝手な言い分で体を求められる。
 体をねじって抵抗するが、体重をかけてのしかかられて動けなくなる。上半身の服に手をかけられた。最近私は腹が苦しいので和装はやめて洋服を着るようになっていた。この日はゆったりしたブラウスとスカートで、さっきスカートと下着は脱いでしまったので今はブラウスだけ着ている状態だった。膝丸の指がボタンを外しにかかる。興奮のあまり震える指がまどろっこしそうに動き、剝ぎ取るように脱がされて下着も強引に引っ張り出された。脱がされて気づいたが、私の胸はかつてないほどにぱんぱんに張って、すでに乳首の先端から母乳をにじませていた。産まれてきた赤子に与えるために勝手に分泌されているのだろうか。しかし結局子供は卵として出てきたのだから母乳が出る意味はない。私の体は哺乳類ですらない我が子のために母乳を生成し続けているのだ。

「こんなに乳を腫らして、吸ってもらうのを待っているのではないか」

 膝丸がぎらつく目元を歪ませて笑う。恐怖と嫌悪で胸がいっぱいになり、私はなんとか膝丸の下から逃れようと暴れる。死に物狂いの抵抗の末に体を反転させてようやく彼の腕の間から這い出した。
 四つん這いで布団から転がり出た私の背後、低い声がひっそりと響く。

「母様」

 感情のない冷たい声音にぞくっとする。声と同じく冷たい手が私の腰を両手で掴んだ。

「そんな格好で床を這いずっても煽るだけだと分かっているか?」

 手足で床にしがみつくが抵抗虚しく一気に引き寄せられてしまう。私の力なんて彼にとっては無に等しいのだと思い知り、怖くて悔しくて涙が出てきた。腰を抱かれてお尻の肉を開かれる。割れ目も穴も丸見えになるように広げられたそこに、膝丸の怒張したものが擦り付けられた。卵を産んだ時の粘液でぬかるんだそこは押し付けられた剛直をにゅるにゅると滑らせる。私はじたばたと体をよじってもがいた。

「いやだあぁ!! 挿れないで!! やだ、やだっっ!!!」
「嫌だ、挿れたい」
「やだぁっっ、やめてっ!! やめっ、んあああぁっっっ?!?!」

 前触れもなくいきなり最奥まで突き込まれ、押し問答が終わらされる。動物みたく四つん這いの格好で後ろから貫かれる。熱い肉の塊が何の遠慮もなく、一気に奥まで突き抜けた。産卵直後で敏感になっている粘膜が乱雑に擦り上げられ、愛液だか羊水だか分からないものがぷしゃっと噴き出した。

「あっっ、い゛っ、、ッッ!!!」

 膝丸のものを咥え込んだだけで達してしまう。奥にぶつかっていたものが勢いよく引き抜かれると、肉襞が捲り上がってびちゃびちゃと体液が滴る。背筋がのけぞって大袈裟に腰が跳ねた。体内から外へ卵を出すのは苦しかったのに、外から体内へ一物をぶちこまれるのはなんでこんなに気持ちいいんだ。

「はっ…、ほら、貴女の体は俺を受け入れて喜んでいるではないか」

 狂喜のにじんだ声が背後から降りかかってくる。肘ががくがくして体を支えられない。そのまま床に倒れこんだが、膝丸の手によって腰だけ支えられて高く上げさせられる。尻を突き出したはしたない格好で、玩具みたいに激しく揺さぶられる。

「やっ、んああっっ!! んっ、あうッ、やだ、やだああっっ!!」
「こんなに、善がっておいて、嫌ではないだろう…!」

 肉のぶつかり合う粘着質な音が響く。がくんと打ち込まれた膝丸の性器が、いまだかつてないほど奥に滑り込んだ。今までとは格段に違う感覚に喉が引き攣る。

「うあっ……なに、そこ…?! だめ……入っちゃだめえ…!」

 卵を産んだばかりで広がったままの子宮口を貫かれてしまったらしい。捻じ込まれた性器の先端が子宮の頸部くらいまで到達している。内臓の一部分を犯される感覚に悪寒が走って鳥肌が立つ。明らかに、入っちゃいけない場所に入っている。

「ここが、貴女の子壺なのだな……! こんなっ、深くまで…!!」

 私の制止なんておかまいなしに膝丸はいっそう激しく腰を振り立てる。弾力のある子宮の内膜にぐりぐりと亀頭を押し付けられ、私は声にならない悲鳴をあげながら床に這いつくばった上半身でもがく。ぺたんと床に押し付けられた乳房が揺さぶられるたびに擦り付けられてそれすら痺れるような快感を生む。

「あっ…やっ、だめぇ……ひっ…も……無理…」
「母様っ、ああ、ここで俺の子を育てていたのだな! こんな温かく柔らかいところで!」

 体重をかけてがんがんと奥を抉られる。もはや言葉も出せず喘ぎ声を吐く機械と成り果てた私の背中に、膝丸が体を倒して覆い被さってくる。その片手が床に押し付けられている乳房をすくい、ぎゅうっと強い力で鷲掴みにしてきた。とたんに待ち構えていたかのように勢いよく母乳が射出する。手の中で握り潰すくらいきつく圧迫されて、ぷしゅっ、ぷしゅっと乳牛のように母乳を噴き出させる。あっという間に膝丸の指がびしょ濡れになり、指の隙間から溢れた乳汁で床まで濡れる。

「あああっっ!! やだあぁ…!!」

 張った乳房から母乳を搾り取られる感覚が気持ちよくてたまらない。無意識のうちに腰をくねらせると、中で暴れる膝丸の動きと連動してさらなる快楽の波に落とされる。

「ああっ、母様、気持ちいいっ…、気持ちいい…」

 深々と抜き差しを繰り返しながら膝丸が譫言のように熱い息を吐く。なおも掻き回される膣口からも絞めつけられる乳首からもだらだらと体液をこぼし、獣のように呻きながら犯され続けるしかない。

「はあっ、あ、出そうだ、っ」

 膝丸が耳元で声を震わせる。その言葉に我に返ってびくっと肩が跳ねた。

「え、駄目っ…!! 中はっ、やめて……!! また妊娠しちゃう…!!」

 しかし膝丸はさっきより激しく腰を打ちつけながら好き勝手に快楽を貪る。荒い息を吐きながら笑う気配がした。

「ああ、孕んでくれ、貴女を孕ませたい……」

 抑えきれない欲望を内包した言葉に背筋が凍る。どうして母たる私を犯して孕ませたがるのだ。絶望に見開いた目から涙がこぼれ落ちる。

「やだあっっ…!! 出さないでっ!! もう卵なんて産みたくない!!」
「母様、お願いだ……、俺を孕んでくれ…!!」
「やだっっ!! 抜いてっっ…! 抜いてぇ!! 赤ちゃんできちゃうからあ!!!」
 悲鳴と共に必死に床に爪を立て、少しでも彼の体から離れようとする。しかし両腕で腰を抱きすくめられ、ぴったりと体を密着させられて、逃がさないといわんばかりにホールドされてしまう。根元まで挿入した状態で、膝丸が低く呻いて体を震わせた。中を熱いもので満たされる。子宮口を超えて侵入した陰茎が胎の中に直接子種を注ぎ込んでいく。凍りつく脳内とは裏腹に、久しぶりに熱い雄の精を受け取った子宮は中を蠕動させて歓喜していた。望まずも与えられた絶頂の中で痙攣する。

「う…っっ!! ひっ…く、うぅ……」
「………っ、はあ……」

 膝丸の射精も終わったようだった。いまだ体が動かない、嗚咽を漏らして泣いている私を、ぐるんとひっくり返す。もちろん結合は解かないまま、力の抜け切った体を仰向けに転がされる。涙やら汗やら母乳やら、その他の色んな体液でぐちゃぐちゃの私を見下ろして、彼は目を細める。

「……やはり貴女の中は最高だな。俺の形に誂えたかのようだ。ああ…ここは俺が入るはずの場所だったのだから当然かな」

 どんなに色欲に狂い気の違ったことを言っていても、微笑む顔は絵に描いたように美しい。崩れることのない魔性の美貌に吐き気がした。

「膝丸……もう苦しいよ……やめて…」
「すまない母様。まだおさまらないのだ。それにほら、」

 言葉を切った膝丸の指が、唐突に私の胸元を掴む。ひっと息を呑んだ瞬間にまた母乳が噴き出した。

「貴女の体も昂ったままだろう? 乳を腫らせたまま、飲ませるものがいなくてはお辛いだろう。生まれなかった子供の代わりに俺が吸って差し上げよう」

 体を倒して器用に胸にしゃぶりついてくる。膨らんだ突起をぢゅうっと吸い上げられて、やっと吸ってくれる者を見つけた乳房が喜んでいるかのように大量に母乳を吐き出す。なまぬるい液体が膝丸の口内に溢れ返るのを感じた。もう片方の乳房はマッサージするみたいに揉みしだかれて、びゅくびゅくと射精するみたいに母乳を飛ばす。

「ひんっ、んんっっ……」
「ん、っ、母様の乳は、霊力が含まれていて、美味いな」

 嬉しそうに乳に吸い付く膝丸を見て、昔の彼の姿を思い出す。あの頃の私は母乳なんて出なくて、膝丸もまだ小さくて、無邪気に乳を吸いながら眠りについていた。あんなに可愛かった。いや、今でも可愛いし、本当の子供のように愛しているのに。どうしてこんなにおかしな関係になってしまったんだろう。懐かしくて悲しくて涙が目尻を伝う。
 やがて母乳を堪能したらしい膝丸はぺろりと唇を舐め、半身を起こすと私の膝の裏に手を入れて持ち上げてきた。ひとまとめにしてひっくり返すように腰を上げさせられ、膝丸の腰と私の陰部との結合部が視界に飛び込んでくる。突き刺さった性器を見せつけられて、まさに犯されている最中なのだと実感して気が遠くなった。

「んっ……!! ああぁっ…」

 ぐちゃっと中を掻き混ぜられて嬌声が漏れる。太い肉棒が子宮の入り口まで沈み、ゆっくりと引き抜かれたときには泡立ったような白濁液に包まれている。互いの体液で白く汚れた陰茎が出たり入ったりする光景。はあはあと呼吸を乱しながら牙を剥き出して腰を振る膝丸はもはや獣性を隠し切れず、人間の姿をしただけの化け物に違いなかった。
 膣内も子宮も彼の形を覚えてしまうくらい叩きつけられて、何度目か分からない絶頂を迎えたころ、どぷっと胎の中の液体が質量を増す。ひっくり返された格好で子宮の奥に新たな精液を流し込まれる。

「あっ……やだぁ…。そんなに中に出したらほんとに赤ちゃんできちゃうよ……」

 出産直後は妊娠しないと聞いたことはあるが、なにぶん相手は付喪神だし、私自身も人外のものへと変貌しつつあるのだから、即座にまた孕んだとしても不思議ではない。

「産めばいいだろう?」

 膝丸は笑う。汗で貼りついた前髪を掻き上げて、私に顔を近づけてくる。噛み付くようにキスされて、熱い舌が侵入してくる。
 もう抵抗する気もなくなって、彼の舌が口内を動き回るのを許す。さっき私たちの卵を呑んだその舌は、どこか塩辛いような味がした。生命ってなんて汚らわしい方法で生まれてくるんだろうと思った。



 
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