膝丸がやってきたのは時計の短針がてっぺんに近づくころだった。主、とちいさく声をかけて襖を開いた彼はひどく生気のない顔をしていた。いつもはすっきりしているまぶたがぼんやりと腫れて、目尻は赤く染まっている。成人男性の泣いたあとの顔なんてなかなか見るものではないし、着流し姿も相まってなんとなく色っぽくてドキっとしてしまった。

「膝丸、夜遅くにごめんね?」
「……いや」

向かいに用意した座布団を勧めると、彼は落ち着きのない様子で腰を下ろす。無理を言って来てもらったけど本当に大丈夫なのだろうか。うろうろと目線をさまよわせ、今すぐここから立ち去りたいという気持ちが滲み出ている。

「あの……、とりあえずお茶でも出すね」

こちらも居たたまれなくなって席を外し、備え付けのちいさな流し場で用意しておいた茶葉に湯を注ぐ。こぽこぽと安らかな音を聞き、緊張する心を落ち着かせる。大丈夫、大丈夫……。懐から薄い薬包紙を取り出してこっそり開いた。無味無臭らしいそれを膝丸用の湯呑みにサラサラと流し込む。その上から蒸らしたお茶を注けば、瞬く間に細かな粒子は溶けて緑色の中に見えなくなった。
よし。これを飲んでもらえば、こんがらがった糸がようやく解けるんだ。彼の本心を聞くのは怖くてたまらないけど解決しなければ延々と負の連鎖は続いていく。私はこれ以上好きな人を苦しめたくないし、無謀な片思いに心を擦り減らしたくない。お盆に二つの湯呑みを乗せて、意を決めて居間に戻った。

「はい、おまたせ」

なみなみとお茶の入った湯呑みを膝丸の前に置く。膝丸は暗い目でそれを見つめたまま動こうとしない……ここは私が先に一口飲んで促すか。熱いお茶で唇を濡らし、口を開いた。

「……あのね、私たち最近、すれ違ってばかりでしょう? なかなか話し合う時間が取れなくて悩んでいたの」

びく、と彼の肩が震える。血の気の失せた唇は何事かを訴えようとしたのかちいさく動いた。待てども言葉が出てこないことを確認して続きを述べる。

「だから今夜は、私の正直な気持ちを伝えたいんだ……。それに、膝丸の考えてることも知りたいの」
「……ああ。覚悟はできている」

切腹でも始めるかのような沈痛な面持ちでうつむく膝丸。ぎゅうっと指を立てた着物の裾には皺が寄っている。なにを覚悟したらそんな形相になるのかとても心配なのだけど、まずは自白剤入りのお茶を飲んでもらわないと……。

「……ええと、そのお茶ね。体を温めてリラックスさせる作用があるから、飲んでくれたら嬉しいな。ほら、膝丸ちょっと顔色悪いし」

苦し紛れの思いつきを連ねると、彼は疑うこともなく湯呑みを手に取ってくれた。

「そうか……主の厚意ならば飲まないわけにはいかぬな」

言うなり、湯呑みに口をつけて勢いよく傾け、ごくごくと喉を鳴らして熱湯同然のアツアツのお茶を飲みはじめる。呆気にとられた私が止める間も無く、一息に湯呑みを空にしてしまった。
涙目になった膝丸がぐっと口元を手で拭う。

「さあ、続けてくれ」
「う、うん……」

緊張のあまり調子が狂っているようだが、薬に気づかぬまま飲み干してくれたので第一段階は突破と考えていい。内心ほっと息を吐きながら、気持ちを新たに口を開いた。

「岩融本人から聞いたんだけど、"私が膝丸に愛想を尽かした"とか言ってたらしいね。そんなこと全然思っていないからね?」
「……主、嘘は止めてくれ。余計に自分が惨めになるのだ」
「嘘なんかじゃないよ! むしろ愛想を尽かしたのは膝丸のほうじゃないの?」

あんなに冷たい態度を取られたら、嫌われていると思わないほうがおかしい。私の感性は少しも間違ってはいないはず……しかし心のどこかでは否定してくれるのを期待していた。ぐっと顔を歪めた膝丸にその儚い希望は砕かれる。

「ああ、そうだな……」

険しい目で睨みつけられて、とうとう言葉を失った。そうか、これが膝丸の本心。

「君は散々俺を掻き乱して、熱が覚めたらすぐに別の男に乗り換えてしまう。俺がどれだけ口惜しい思いをしたか分かるか? 人間など好きにならなければよかったと、己の愚かさを呪った夜は数え切れないぞ」

気持ちが昂ぶっているのか、呼吸を乱しながら言い募ってくる迫力は獣じみたものがあった。剥き出しの牙が目の前で光り、はじめて身の危険を感じる一方、彼の怒りに対する疑問も膨らんできた。

「待って、いまなんてーー」
「君、俺のことが好きだと言っただろう」

いきなりガンッッと脳みそを殴られたような衝撃が走った。膝丸の顔には確信が浮かんでいる。
好き。それは否定しない。でもなんで、募りに募ったこの想いを彼に直接伝えた覚えはないのに。

「君は俺を抱きしめて、かっこいいだの好きだの、挙げ句の果てにはまぐわりたいだのと抜かしていたな」
「え……あ……」

血の気が引く音が聞こえるようだった。あの夜。魔除け代わりに太刀を貸してもらって寝た日のこと。私は膝丸の本体を抱き枕にしていかがわしい妄想に耽っては心の声を漏らしていた。

「俺たちの本体は刀だと、まさか知らないわけではあるまい? 主は手入れをしたことがあるな。刀に傷がつけば現し身の体も傷つくだろう。ならば当然、刀への刺激はこの生身の体へ還元されるのだ」

走馬灯のようにあの夜のことが蘇る。鞘に頬ずりして両手両足で抱きしめて、とても人に聞かせられないようなことを呟いた……
まさかそれが、膝丸本人を相手にしているのと同じだったなんて。

「俺は枕元に置けと言ったのだがな」

終わった。私の清らかなイメージ(?)と分別ある審神者としての社会的な死。なけなしの乙女心は爆発四散して更地に深い傷を残した。
もう、なにも弁解する気力がない。真っ赤になった頰を覆ってうつむいていると、膝丸はさっきより低い声音で新たな問いを投げる。

「……ところで主。今の茶は、君が準備したのだよな」

ひっと息が止まりそうになった。おそるおそる膝丸の顔を見上げて驚きに打たれる。さっきより潤んだ目、紅潮した頰、ふうふうと忙しげに上下する肩。これは、薬の効能ではないはずだ。膝丸が一気飲みしたのは自白剤のはずなんだけど。まさか副作用とかアレルギーとか……?!

「ひ、膝丸、どうしたの? 具合悪い?」
「……おかしなものを、盛ったのは主だろう?」

いよいよ膝丸の息は荒く、畳に手をついて苦しげに身を屈める。こんな危険があるなんて岩融は言ってなかったよ! 怪我なら手入れをすれば治るが薬や毒も手入れをすれば抜けるのだろうか。今すぐ手入れ部屋に連れて行こうと彼の肩に触れたところで、ぐるんと視界が回った。
後頭部と背中に衝撃を受けて一瞬意識が遠のく。腹の上になにか漬物石みたいな重いものが乗っていると思ったら膝丸だった。
瞳孔の開き切った目がギラギラと輝いて見下ろしてくる。両手首はがっちりと押さえつけられてびくとも動かない。なにが起こったのか分からない私はこの後に及んでぽかんとしていた。

「俺はずっと抑えていたのに」

怒りともどかしさを湛えた苦しげな顔、ああこの感覚には見覚えがある。『君はなにも分かっていない』と言われた時もこんな雰囲気だった。掴まれた手がものすごく熱い。どくんどくんと打つ脈動が触れる肌から伝わってくるようだ。

「君は俺をかっこいいと言っていたな……。よほどこの現し身の見目が好きなのだな。だから顔が同じ兄者でもいいと思ったんだろう?」

やはり勘違いをしている。私が髭切に服を買ってもらったり二人きりで話をしたりするのは膝丸への恋を成就させるためだ。膝丸に避けられるようになってからは余計に髭切に頼ることが多かったので、誤解を招く一因になってしまったのかもしれない。しかしなんだって己の兄に疑いの目を向けるのか。顔が同じだから? そもそも、かっこいいというのは見た目だけの話ではないのに。

「それで、今度は兄者に袖にされたから俺のもとに帰ってきたというわけか。こんな薬を飲ませて抱くように仕向けるとは、とんだ色狂いだな」
「え、薬? 待って……? 色々とおかしいよ、膝丸はなにか勘違いを、」
「うるさい。もう止めてはやらぬぞ」

乱暴に言い放った膝丸が私を下敷きにしてぐいっと体重をかける。男の体に潰される苦しさに思わず呻くと、なにかが太ももに食い込んでいる違和感をおぼえた。
膝丸が背を揺らすとやけに硬い塊がゆっくりと太ももを這い上がって腰へ向かう。妙にいやらしい動きにぞくりとお腹の中が熱くなり、瞬間、押し当てられている熱の正体に気づいた。

「ひゃあ……!」

逃げようと跳ねた私の体に一層強い体重がかかり、呆気なく動きを封じられる。着流しの布を膨らませているそれを下腹部にぐいぐいとめり込むように擦り付けられ、引きつった顔で見上げると膝丸は発情しきった獣の目をしていた。

「あの夜。主は、俺に抱かれたいと言ったな」

薄い唇をぺろりと舐める様はまさに獲物に食いつく直前のそれで。少し開いた口の隙間から牙が光り、久しぶりに膝丸の笑顔を見たけれど、こんな下卑た、不気味な笑みは。

「君の望みを叶えてやろう」

ーーいまから君を犯す。

凍りつく耳にはっきりとした宣告が響く。身動きが取れないまま呆然とする私の胸元に膝丸の手が伸びてきて、シャツの上から膨らみを掴みはじめる。慣れない手つきで必死に胸を揉む様に、恐怖より愛しさがこみ上げてきた。不器用な指が乳首に触れてピクッと身じろぎをすれば、お腹に密着している彼のものがどくんと大きくなった。

ああ、本当に、私はいまから膝丸に犯されるんだ。
突然発情した膝丸は謎だし、いまだに誤解を続けているのも困りものだけれど、好きな人が自分に欲情してくれているのを実感したら胸がいっぱいになるような幸福感に包まれる。恋人同士でもないのに体を重ねられて嬉しいと思うなんて、拗らせきった浅ましい恋心だ。

「ね……、直接、さわって」

もどかしげに這っていた膝丸の手を握り、お腹側からシャツをめくり上げるよう誘導する。膝丸は驚いていたがそのまま背中に手を回し、下着のフックを外させて胸元をあらわにすると、ぷるんと現れた白い膨らみを見て彼は真っ赤になった。

「ずいぶん積極的なんだな」
「……膝丸が、すきだから」

こんな形で膝丸と結ばれるとは想像していなかったけど、どうせ最後の思い出になるだろうから身を任せてしまおう。私に失望しているはずなのに夢を叶えてくれる膝丸は、本当に優しいなあ……と、感慨に浸っていると彼はなぜか苦しそうに顔を歪めた。

「心にもないことを……。どうせ君は閨を共にする男みんなにそう言うんだろう」

否定しようと開いた口をいきなり彼のもので塞がれた。熱い、なめらかな舌がべろりと唇を舐めて、驚いているうちに中に侵入してくる。柔らかく口内を蹂躙されるのが気持ちいい、けれど慣れない者同士だからガチガチと歯がぶつかって変な感触だ。

「ん、っ、む……はっ、ひざまる……」
「っ……そんな目で、見るな」

好きな人とキスできた幸福感にぽやんと蕩けていると、膝丸は体を起こして私の腰に手をかける。部屋着にしているズボンはするっと簡単に降ろされて、心許ない下着姿にされてしまった。そういえばシャツとズボンって色気のない格好で膝丸を呼んでしまったものだ。こうなることが分かっていたらもっと可愛い下着とか履いていたのに……と嘆いていたらあっという間にパンツも降ろされる。

「えっ、ま、待って……!」
「今さら、なにを恥じらっているんだ?」

さすがに心の準備が追いつかない。こんな明るいところでまじまじと見られるのは恥ずかしくてたまらないのに、膝丸は物珍しそうにのぞきこんでくる。

「濡れているな」
「やぁっ…見ないで……」

股の間に陣取る膝丸のせいで足を閉じれない。とろとろと蜜をこぼすそこを手で隠そうとしたら掴まれて阻止されてしまった。

「もっとよく見せてくれ。俺は女人のここを見るのは初めてなのだ」
「やだよぉ……」
「見せてくれないと挿れる場所が分からんぞ。……? この赤く膨らんでいるところはなんなのだ?」

つんっと膝丸の指が充血して硬くなりはじめているクリトリスをつつく。とたんに腰が跳ねて聞くに耐えない声が漏れた。膝丸は大袈裟に腿をひくつかせる私を見てびっくりした様子だったが、すぐに得心したという素振りでそこに指を這わす。

「気持ちいいのか?」
「やだっっ、さわんにゃいでっ…!」
「しかし、ここからまた溢れてきたぞ」

そう言いながら別の指で愛液を流すちいさな穴を引っ掻き、どろどろに濡らした指で周りの花弁も膨れた粒もいっぺんに擦り出す。

「にゃっあ、ぁあああ……!」
「止まらないな……ここに挿れればいいのだろうか」

ぬるんぬるんとびしょ濡れになったクリトリスをつまみながら、穴の中に長い指を挿入してくる。ためらいがちな指が肉壁をおそるおそる摩擦し、またドロっとあふれてきた愛液に助けられて奥に進んだ。

「熱い……ここに俺のを挿れたらどうなってしまうのだろう」
「あ…あっう……」

膝丸の硬くておっきいのが敏感になっているここに入ってくるのを想像したら。ぐちゃぐちゃに溶けている中が彼の指を咥えこんだままキュウっと締まり、それだけで軽く達してしまった。
小刻みに震えながら弱々しい喘ぎを漏らす私に、膝丸は侮蔑めいた声を放つ。

「そんなに欲しいのか?」
「……ひゃ、ひざまるのぉ…」

じんじんと熱持つ疼きは抑えようがなかった。もっともっとと快楽を求めるように腰が揺らめく。はしたない、欲しくてたまらないなんて。でも膝丸だって一目で分かるほどに下腹部の布を押し上げて窮屈そうにしている。物欲しげに見つめる私に応えるように、膝丸は己の腰帯を解いて前をくつろげた。

「主、これを脱がしてくれ」

怖気付く腕を無理やり引っ張られて上体を起こすと、顔の前に腰を突きつけられた。下着一枚では押さえるのが難しいほどに盛り上がり、一部が濃く変色したそれに怖々と手を伸ばす。思い切って勢いよくずり下ろすと、反動をつけて飛び出してきた塊がベチンと頰を打った。

「ひ……」

完全に勃ち上がった性器は下着越しに予想をつけていたより遥かに大きい。すでに射精したのかと見まごうほどの濃い先走りが全体を濡らし、赤黒く光りながら勝手にぴくぴくと跳ねていた。
目の前のそれに気を取られていると膝丸に肩を軽く押されて我に帰る。

「そう物欲しげにせずとも、今にくれてやるぞ」

膝丸が見せつけるように根元を握ってぐっぐっと二、三度扱くと、限界まで育っていたはずのそれはさらに反り返って上を向く。こんなに見目麗しいのについているモノは凶悪で、そのアンバランスがかえって卑猥だ。

「主、俺は、そう優しくはできぬぞ」

ぱたんと畳に私を押し倒した膝丸が低く唸る。興奮のあまり荒くなった息は熱く、ふだんなら冷静さを失わない瞳には欲情の炎が燃え上がっている。

「んっ……いい、よ…」

片手を上げてするりと熱持つ頰を撫でると、膝丸の目にわずかな戸惑いと動揺が浮かんだ。

「本当にいいのか。君が泣こうが懇願しようが止めてやらない。俺の気が済むまで犯してやると言っているんだ」
「うん。膝丸だから、いいの……。お願い、抱いて」
「っ……! どうなっても知らんぞ……!」

ぐちゅりと互いの濡れたところが密着する。潤みきっていた秘部は押し付けられた熱をぬるぬると滑らせた。狙いが定まらずもどかしげに腰を揺すっていた膝丸は、痺れを切らしたように自身を手で握って誘導する。丸みを帯びた先端が乱雑に食い込み、うまく角度のついた拍子ににゅるりと入り口をくぐった。
さんざん膝丸を思いながら自分で慰めてきたそこは、少しの抵抗もなく彼を受け入れる。

「ッ……、きつい、な……」

窮屈な道をずぶずぶと着実に進んでいって、お腹の中心を押し広げる硬さと太さに感じ入る。直接好きな人の熱を感じるのが嬉しくて気持ちよくて夢みたいだ。とうとう腰が密着するくらい結び付いたとたん、膝丸がぶるりと身を震わせた。

「……っ…う……!!」
「ン、んっ……え、……?」

奥に突きつけられた陰茎がびくびくと跳ねる振動が伝わってくる。子宮と彼の先端との間に熱いものが溜まっていく感覚。

「あ……、出ちゃった…?」
「……すまない。耐えられなかった…」
「いいよ……じゃあ、」

いったん抜く? と続けようとしたところで腰を鷲掴みにされ、ずんっと勢いよく奥を突かれた。痛みに近い刺激にちかちかする視界の中、膝丸の暗い光を宿した目が見据えてくる。

「まだ足りない。このまま続けるぞ」
「え、あッ、ちょっと……あ、あっあッ?!」

体重をかけて勢いよく打ち込まれ、息をつく間も無く激しいピストンを開始される。ぐちゅんぐちゅん、結合部からけたたましい水音と肉のぶつかり合う音が鳴り響く。入り口から再奥まで硬い肉の塊にいっぺんに摩擦されて頭がおかしくなってしまいそうだ。

「やぁ、はげしっ…ああ……あ〜〜ッ!!」
「あるじっ、は、っ止まらな、…きもちいい……っ」

あまりの快感から逃れたくて夢中でもがくが、両手で腰を掴み直されてぶちゅっと角度を深くしたそれに突き抜かれ、男の重さに貫かれた体が震え出す。硬い股間をグリグリと押し付けたまま奥の行き止まりを抉られる。そんなところ誰も触ったことがないのに。使ったことのない子宮をだらだらと先走りを流す膝丸に汚される。

「だめぇっそこらめ…ッ…! こわれちゃうよぉ…!」
「ああ、いいな……壊したら、他の男に渡さなくてすむ…!」
「はぅっ…やだぁ…?!!」
「言ったろう、嫌だろうが、抱き潰してやると…!」

涙を流しながら首を振ると中で張り詰めている熱がまた大きさを増す。これ以上興奮してどうなるの。犬のように舌を突き出してハァハァと腰を振る膝丸はもう、理性のぶっ飛んだ目をして本当に余裕がなさそうなのに。床這いに後ずさろうとする私を追いかけ、恥骨同士をぶつけて円を描くみたいにぐりんっとされる。
男の下腹部に押さえつけられた身体が仰け反り、爪先まで弓なりに反って絶え間なく痙攣する。唐突に彼の動きが一番深いところで止まり、びゅるるっと熱いものを噴き出した。

「あ゛っ……またナカ出てぇ……」

びくびくとイかされながら種付けされてしまう。膝丸は痛いほどに股を押し付けてぜんぶ私の奥に注ぎ込むように体を震わせている。

「はーッ……あ…、まだ、だ」

熱い息と共に動きが再開される。うそ、まだ止まらないの? 制止の声を上げる間も無く哀れっぽい喘ぎ声が口からあふれる。
膝丸がシャツをめくり上げて中途半端に剥き出していた乳房を鷲掴みにする。突かれるたびにぶるぶると手の中で揺れるのが痛くて気持ちよくてたまらない。指に挟んで捏ね回される乳首がぴんと立ってしまう。

「いやらしいな……君の体は」
「やあ…ちがッ…ひざまるのせい……」
「俺にこうされたかったのだろう?」

意地悪く口角を上げる膝丸に言い放たれて、犯されているところがきゅんきゅんと疼く。しかし凶暴なくせにその笑顔はなぜか悲しそうで。遠慮なく腰を振る動きだってそうだ、なにかを渇望しているような、満たされない苦しさをぶつけているようで、体を貪られている最中なのにどうにかして助けてあげたいと手を伸ばす。

「ね…膝丸…っ、…すき」
「…!!」
「すき、大好き…だからもっと、いっぱい……めちゃくちゃにして…?」

膝丸は鋭い牙が剥き出しになるほど歯を食い縛る。

「……君は、馬鹿かっ…!!」

吐き捨てるような言葉と共にばちんっと一際強く突き入れられた。悲鳴を上げたとたん、顔の横を両腕で挟まれてさっきより激しく腰を打ち付けられる。はだけた胸元の筋肉が汗に濡れて浮き上がっているのがかっこいい。恍惚としながら喘いでいると、中で動いていたものが滅茶苦茶なピストンに勢いあまって抜けてしまった。
限界までそそり立ったそれはベチンっと音を立てて膝丸のお腹にぶつかる。再び挿入しようと先っぽを押し付けるが角度のあまりうまくいかない。早く、中を埋めてほしいのに。

「……ひゃあ!!?」

いきなり体を転がされて腹這いにさせられた。腰だけ高く上げられて恥ずかしい格好にされたあと、男の手がお尻の肉を広げる。

「え、ああああっ?!」

ずぶぶっと再び肉を割り開かれて硬く反り返ったモノが入ってくる。膝丸の熱が体の奥へ奥へと潜っていく、快感に呼応するようにぴったりと彼の形を咥えこんでうねった。

「にゃあああっ、きもちっ、…ああぁあん!! あぁっひざまるのっ、奥、ごんごんしないでっっ…!」
「駄目だ…。君がいけないんだ。滅茶苦茶にされたいのだろう?」

低い声が降ってきて鳥肌が立つ。獣の交尾のようにガツガツと後ろから突き立てられ、痙攣する体にはお構いなしに容赦無く責められる。無理やり押し上げられた絶頂にぶわりと汗が噴き出し、悲鳴を上げる間も、本能に支配された雄の動きは止まることがない。

「あ゛あぁあっ……イっ゛、いく……、とまってえッ…!!」
「はっ俺も…あ……出る…っっ!」

切羽詰まった声と共にぎゅううっとお尻に食い込むほど腰を押し付けられ、新しく注がれる体液に子宮口が灼かれる。とっぷりと重いお腹の中は膝丸の子種でいっぱいに満たされて。好きな人の欲をぜんぶ注がれたと思うと幸せで、けど、もうこれ以上は体がもたない。それなのに膝丸は飽きもせずゆるゆると腰を揺らしはじめる。

「主の中は気持ちよすぎてやめられない……」
「もう入いんないよぉ……。も、おなか、膝丸のせいえきで、いっぱいなの……」
「まだだ。もっと此処で、俺を受け止めろ。壊れてしまえ」

高く湿った音がうるさくて耳を塞ぎたくなるのに体を支えることに精一杯で。何度も突かれて摩擦されたそこは痺れて夢の中のようにとろんと重い。繋がったところからゴポゴポとあふれる二人ぶんの体液が太ももを伝い、混じり合って白く泡立ったそれは卑猥な光景だろう。でももう、恥ずかしさなんてどうでもいいほどに気持ちいい。好き。膝丸にされることならなんでも嬉しい。果てる気配のない膝丸に延々と体を揺さぶられ、意識に靄がかかるまで嬌声を上げ続けた。
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