※蛇姦、強姦


 ひっと息を飲んで思わず仰け反った私を膝丸の手が引き戻す。目の前に突きつけられるグロテスクな物体がなんなのか知りたくもないが、この状況下で答えは決まっていた。

「蛇の性器を見るのは初めてだろう? もちろん挿れるのも初めてだろうがな」

 はち切れそうなほどに膨らみトゲを逆立てたそれはおよそ人間に突き立てる形状をしていない。こんなもの無理だ。恐怖で引き攣る私の顔に膝丸は凶器のようなその片方を握って押し付ける。弾力のあるトゲが唇に食い込んだ。

「さすがにいきなり挿れるのはきついだろうからな。よく濡らしておけ」
「ひ…、ゃだ……」
「君のためを思ってやっているんだぞ」

 急に冷たい手が首に巻き付けられてひゅっと息が詰まる。鋭い爪が動脈の上の薄皮に食い込んで今にも破られるのではないか。殺されてしまうと思ったら言いなりになるしかなかった。おそるおそる口を開いたところ、ざらりとしたトゲの感触が舌の上に広がる。

「…ああ、いい子だな」

 尖った性器の先端を含めば膝丸は感極まったような息を吐き、ぐっと腰を進めてくる。次第に太さを増していく塊が喉のほうにまで侵入してきて口いっぱいに粘膜を摩擦する、苦しくて苦しくてたまらない。吐き気がこみ上げてきて喉の筋肉が反射的に収縮するが、その程度で雄の一物を吐き出せるはずもない。

「うえ゛…ッ…んぶっ!」
「っ、一度出してしまうかもしれないな…」

 歯が当たるのも気にせずに膝丸は抜き差しを繰り返す。唾液と胃液が混ざったものが引き抜かれると同時にあふれてきてぼたぼたと垂れる。返しのように生えたトゲが頰に、顎に、舌に柔らかく食い込んで、痛いのとくすぐったいのとの中間で口内を蹂躙される。逃げそうになる頭を膝丸の両手が抱え込んで強引に腰へ引き付け、喉奥で陰茎をしゃぶるように仕向けてきた。ぶるぶると喉が痙攣して胃液がせり上がってくる、あまりの苦しさに男の腰にすがりついた。

「…ああ、そうだ。こちらも扱いてくれ」

 握らされたのは顔の隣で反り立っているもうひとつの肉棒だった。手のひらに感じるそれは熱くて硬くて、ありえないほどの質量を持っていて、こんなものが口の中に出たり入ったりしてるなんてわけがわからない。涙で濁った視界がチカチカする。

「……いい顔だ、可愛らしいなあ。いま君は俺のことしか考えられないだろう?」

 涙やら鼻水やら涎やらでぐちゃぐちゃになっている私の顎を持ち上げて膝丸は笑う。握ったはいいが苦しくてどうにもできない性器を膝丸が上から手を重ねてぐっぐっと扱きだし、トゲだらけのそれが一回り大きくなったのを感じた。

「んンっ、ぐっ…!」
「主の口も手も…とても柔らかくて気持ちがいい。こんなに良いならもっと早く、折れる前に君を犯しておけば良かった」

 熱っぽく囁きながら長い指が髪を一房すくい、そのまま奇妙に膨らんだ頰を撫でてくる。なにか物騒なことを言われているようだが酸欠の脳では言葉を拾う余裕がない。とめどなくあふれる唾液と、手の平に付着するぬるぬるした先走りが、二本の陰茎の滑りを良くする。汚いとか気持ち悪いとか、もうそんなことはどうでもよくて、ただただこの責め苦から早く解放されたい。

「…はぁ、うっ…出そう、だ」

 ぶちまけられるのは怖いが男が果ててくれれば口淫は終わるだろう。猛烈な吐き気を必死に耐える。自分の意思とは無関係にぎゅうぎゅうと絞まる喉はまるで男の精をねだっているようで。抽送のたびに擦り付けられる苦い汁を飲まされながら、やがてくる絶頂に備えていると目の前で鱗に覆われた蛇腹が不規則に波打つ。快楽を得ていることを視覚で伝える蛇の体が卑猥でたまらない。

「あ……主、っっ!!」

 両手で引き寄せられた頭は勢いあまって蛇腹にぶつかる。そのひんやりした肌感と、喉の奥で爆ぜる灼熱の塊。むせ返りそうな青臭さと共に熱い奔流が胃を下っていき、目を白黒させる私の前で、もうひとつの陰茎も遅れて絶頂を迎えた。手の中のそれがびくんびくんと跳ねて、噴き出す精液が髪から頰をべったりと汚していく。なんだこれは。思考をやめた頭は事態についていけない。重く濁った汁が次から次へとあふれてきて、ひどい精臭と生ぬるさが顔を包んでいく。鱗の下でぎっちりと詰まった腹筋が激しく凹んでは精液を送り出し、内も外も白く染め尽くされたころにようやく男の腕から力が抜けた。
 荒い息をしながら膝丸がゆっくりと腰を引く。ずるずると喉の奥から胃液にまみれたものが抜き出されて圧迫感が消え、解放された途端に吐き気を堪えられなくなって嘔吐した。注ぎ込まれたばかりの精液が何度も喉に引っかかりながら糸を引いて垂れる。

「……ああ、苦しかっただろう。よく頑張ったな」

 さっきまで私を痛めつけていたくせに頭を撫でる手は労わりに満ちていて、その優しげな態度に安堵してしまう自分がいた。欲を吐き出して正気に戻ってくれたのかもしれない。部屋の中に転がっていたのか、どこからともなく布を用意した膝丸がまぶたを覆ってしまいそうな白濁の膜と汚れた口元を拭ってくれる。
 なんとか落ち着いたところで顔を上げると、ぬらぬらと光る二本の性器は屹立したままで。一瞬見えた希望は絶望に変わった。

「ぁ…ひざまる……もう、やめて…」
「肝心なのは今からだぞ?」

 満遍なく生えた肉のトゲでさんざん擦られた口内は、いまだにじんじんと痺れている。大きさだって人外のそれだ。そんなものをお腹の中に挿れられてしまったら、今度こそ死んでしまうのではないか。

「拠点に戻ったらしばらくは忙しいだろうから、ゆっくりまぐわう時間が取れない。今のうちに種付けしておかなければな」

 さっき飲まされた大量の精液を思い出して、あんなたくさんの子種を注がれたら否が応でも妊娠してしまうのではないかという想像に怯える。本気で孕ませるらしい膝丸が私の肩を押してその場に寝かせようとする。腕を振り払おうとする抵抗は無意味だった。

「怖がることはない。俺が君を粗末に扱うわけがなかろう?」

 尖った爪で壊れ物に触れるかのように優しく頰を撫でながら、抑えきれない興奮に光る眼が私を見据える。互いの体液でどろどろに濡れた勃起が下腹部に円を描くように擦り付けられる。

「そんなの無理…死んじゃう…」
「大丈夫だ。蛇毒で弛緩しているうえに、此処も充分にほぐしておいただろう」

 口を犯される苦痛ですっかり忘れていたけれど膣の中には蛇が入ったままだった。ちらりとそこを一瞥した膝丸が「もう用済みだな」と呟くなり、尾を出す蛇の束をひとまとめに握り締め、ブチブチブチっと勢いよく引き抜いた。

「あああぁぁあぁっっ?!?!」

 中を満たしていた大小さまざまな蛇が巨大なひとかたまりとなって体外へ出ていく。でこぼこした無数の頭が敏感なところを一気に押し開いて乱暴に摩擦する、あまりの衝撃に視界が裏返った。こじ開けられた膣口はひくひくと痙攣したまま元に戻りそうもない。絶頂しつつ間抜けに口を開けている穴をのぞきこんで、膝丸は満足げに言った。

「これなら入るだろう」

 二本の陰茎をまとめて扱きながら近づけてくる男に背筋が慄く。まさかそれを、両方挿れるつもりなのか。そんなことをされたら妊娠する以前にお腹が破けて死んでしまう。動かない体で後ずさるが片手で太ももを掴まれて呆気なく阻止された。

「そう怯えなくとも、主もきっと好きになるぞ」
「やぁっ……挿れないで…」
「しかし此処はこんなにも熟れてひくついて、物足りないと訴えている」

 膝丸の指がぐずぐずに濡れそぼった花弁を一撫でする。ちいさな粒をつつかれて蜜がとろとろとお尻まで流れてきた。そんなところ触ったって彼は少しも楽しくないはずなのに、糸を引く指の腹で蕾に触れては離し、焦らすようにつまみ上げてはそのたびに仰け反る私で玩具みたいに遊んでいる。感じている場合ではないのに快感を拾ってしまう体が疎ましい。はしたなく揺らめく腰がもっともっととその先を求める。さっきまで蛇で栓をされていたそこが寂しげに疼いて、ひくつく肉筒を埋めてくれるものが欲しくてたまらない。

「また垂れてきたな」
「言わないで……」
「可愛いらしいと言っているんだ」

 恥ずかしくて顔を覆う。股の間に陣取ってきた膝丸が指の代わりに性器をくっつけてくる。醜悪に隆起したトゲが敏感になっているクリトリスに軽く引っかかって、ビリビリと電流みたいな快感が突き抜けた。

「はあっあぁ…」
「っ、たまらないな…」

 ぬる、ぬる、愛液をまとった蛇の性器がどろどろに蕩けたそこ全体を摩擦してくる。すごく、気持ちがいい、柔らかく綻びた膣口に無数のトゲが食い込んで、絶え間なくくすぐるけれど侵入してくることはない。この熱量の塊で奥まで縫い止められたらどんなにいいだろう。もどかしさに食いしばった歯が震える。

「膝丸…もっ、お願いだから……」
「どうした、主……この期に及んで止めてほしいのか?」

 ぷくんと膨らんだ陰核を執拗に擦られて、何度も弱い絶頂を繰り返す。これ以上されたらおかしくなってしまいそうだ。いやいやと体をよじって逃げようとするが目敏く気づいた膝丸に諌められる。

「こら。暴れたら駄目だぞ。もう一度毒を注いで、今度こそ動けなくしてしまおうか?」

 ふいに片脚を担ぎ上げた膝丸が足指を口に含む。ぬるりと熱い粘膜、柔らかな感触の中に尖った硬いものが触れる。ちゅうちゅう可愛らしい音を立てながら指を吸われるくすぐったさと軽く甘噛みするように食い込む牙の鋭さ。形のいい唇からぽたぽたと垂れる毒の液が恐ろしい、下手に動いたらあの牙に突き破られて毒を注入されてしまう。その間もぐいぐいと腰を押し付けられて密着した秘部の熱さが増していく。ふたつの肉棒で摩擦される下半身が甘く痺れていやらしい気持ちでいっぱいになってしまう。

「んっはあぁっ…膝丸ぅう…! だめ…もうだめ…」
「……ん、我慢できないのか?」

 ぢゅぷっと水音が響いて膝丸が指を口から出す。彼のものだってもう限界まで膨らんで勝手にびくびくと跳ねている。

「挿れてほしいか」
「ひっ…あぁんっ…」
「主、答えてくれ…!」

 ふうふう獣じみた息を吐きながらギラついた目で見つめてくる、膝丸のほうがずっと限界に近い様子をしているのに、最後の砦を打ち砕く言葉を私に言わせるつもりなんだ。二本の剛直を手で握ってびたんっびたんっと濡れた花弁に叩きつけて劣情を煽る。辛そうに顔を歪めた膝丸が牙を剥き出して呻く。

「はぁっ、はーッ……挿れたい…! 君も、同じ気持ちだろう?」
「やぁああぁ…っ、入っ、ちゃう…!」

 体液にまみれたトゲが入り口に潜り込み、とうとう内側を犯される喜びにわけのわからない喘ぎ声が漏れる。ああ、期待しているのだ、自分は。この太く脈打つ凶悪な化け物の肉棒に貫かれて狂わされるのを待ち望んでいるんだ。

「あぁっ膝丸のっっ…あっつい…おっき、い…!」
「このまま、奥まで挿れてしまうぞ…!」
「あ、あ…ほんとにっ、二本っっあっあぁああぁ…!!」

 ずるんっとぬめる愛液をまとってトゲだらけのそれが大した抵抗もなく侵入を果たしてくる。蕩けきった蜜壷はふたつの硬い竿をごくごくと飲み込んで奥へ導いた。ブラシのように生え揃った肉の突起に擦られても痛みはなく、ざりざりとマッサージされるような気持ちよさ。こんなに簡単に、私の体は膝丸を受け入れてしまうのか。
 しかし、そう思ったのもつかの間だった。入っているのはほんの先端だけで、どんどん太くなっていく幹の中心が内側をこじ開けていく。あんなに柔らかくほぐれていたはずなのに、膝丸の太さに合わせてまだまだ広がってしまう。

「ぁああ゛あっっ……おっき…」
「っは、きついな…。主、まだ耐えろ」

 信じられないような圧迫感がお腹を膨らませる。苦しさに気が遠のけば蛇の尾に軽く頰を叩かれ、強引に意識を覚醒させられた。張り出したトゲで内壁のざらついたところを抉られて、ぴんと伸ばした足が痙攣して絶頂に達する。ずぶずぶと音が聞こえそうなほど容赦無く打ち込まれる楔がついに一番奥の行き止まりにコツンと触れた。

「ほら、ちゃんと、入ったぞ…」

 朦朧とする首をなんとか持ち上げそこを見ると、蛇の腹がびったりと股間に押し当てられて、二つに分かれていた性器の根元までもが体内にめり込んでいる。
 ほんとに入ってしまった。あんな大きくておぞましいものがお腹の中に入ってるなんて。いったんそれを意識してしまえば、いっぱいに広がった中が懸命に膝丸のに吸いついてキュウキュウと締めつける。食い込む硬い肉の感触が気持ちよくて身悶えるけれど膝丸も苦しそうに息を詰めた。

「さすがに、しばらく馴染ませたほうがいいな…」

 じっと私の中に肉を埋めたまま、背に腕を回して抱きしめてくる。汗ばんだ男の肌が熱い。大きな手が震える肩を何回も撫でつけて落ち着かせようとしてくれる。はぁ、はぁとおぼつかない呼吸を繰り返していると半開きの唇に膝丸のが重ねられた。さっき吐いた口にためらうことなくキスをされて、あろうことか舌まで歯列を抜けて潜り込んでくる。舌先までもが二又に分かれているのか。呆然と目を見開く私の前で膝丸の長いまつげが揺れる。こんな綺麗な顔をしているのに体の半分は気持ちの悪い蛇の姿になって、猟奇的に私を犯すなんて、なにもかもが信じられなかった。

「主、あるじ……っ、俺の主…」
「…ん、むっ、はうっ…」

 熱に浮かされたかのように繰り返し名を呼びながら、角度を変えて深く口付けてくる。まるで恋人同士みたいだ、と思ってから、膝丸は私とそうなりたかったのだと気づいた。

「折れる前からずっと、主とこうしてみたかった…」

 泣きそうな声が耳元で湿っぽく響く。濡れた瞳にはかつてと変わらない真摯な熱情が宿っていた。改めて、この男は私を愛しているのだと痛感する。それこそ殺されてしまうのではないかと思うほどの苛烈な愛。密着する肌から彼の震えが伝わってくる。胸が痛んだ。私が膝丸からの愛情を投げ捨て続けた結果、報われない彼の魂を闇に堕とし澱んだものに変えてしまったのだ。

「ごめんね、膝丸…」

 憐れに思えて手を伸ばす。さらさらと乾いた髪を撫でると膝丸はびっくりしたように目を見開き、その後心地よさそうに細めた。ほんの少しの愛しさが込み上げる。だからと言ってこの所業を許せるわけではないし、膝丸と添い遂げるつもりもないけど。

「もういいんだ、主…。これからはずっと一緒にいられるのだからな」

 頭を撫でていた手を優しく握り、膝丸が幸せそうに微笑む。指を絡めた両手を床に押し付けると、軽く腰を揺らしてきた。

「そろそろ動いてもいいだろうか」
「ん、えっ…?!」
「だいぶ俺の形に馴染んだようだ」

 そう言ってゆっくりと楔を引き抜いて挿入する。摩擦されたのはほんの数センチのはず。なのに、ものすごい衝撃だった。

「うあ゛ぁあッッあ…?!」
「これは……っ、すごいな…」

 少し動かすだけでもトゲが中のヒダに引っかかる。入り口から奥まで上下左右いっぺんに擦り上げられて抽送のたびに裏返ってしまいそう。苦しいのか気持ちいいのか判別がつかないほどの刺激に無我夢中で暴れるが、床に縫い付けられた手も蛇体にのしかかられた腰もびくとも動かない。

「ああ…トゲが…擦れて…」

 膣内で密着した二本の肉棒、トゲの生えたその表面同士が擦れ合うことによって互いを刺激し、膝丸にとっても快感を倍増させているようだった。自然と出し入れが激しくなる。

「あ゛あああ…ッむり…!!」
「あるじっ……気持ちいい、な…」

 眉を寄せてうっとりと呟くと、膝丸は息も絶え絶えになっている私にはお構いなしにゆさゆさと腰を揺すってくる。中でぶつかり合うトゲの塊が、刺激を何倍にも膨らませて私を苛むのだ。限界まで押し広げられたそこを人外のもので遠慮なくピストンされて本来ならば命の危機を感じるところだが、蛇毒に侵された体は喜んでそのふたつの肉棒を舐めしゃぶる。悩ましげな息を吐く膝丸の額からぽたぽた汗が滴って顔の上に落ちる。その水滴の重さにさえ感じてしまうほど今の体は敏感なのだ。ばつんばつんと音が鳴るほど蛇腹を打ち付けられて地獄のような快感だった。

「は、あ…熱いな、溶けてしまいそうだ…」
「やぁあああ……っっ〜〜!!」
「主は、どこがいいんだ? どこを突かれたい?」
「や、止まって…しんじゃうッ…」
「奥に当たるのが好きか」
「はっ、ぁ、ッやら…いく、イ゛っっ!!」

 子宮口を激しく殴打されて内臓ごとぶっ飛んでしまいそうな快楽に堕とされる。全身の筋肉が痙攣して舌すら回らない、悲鳴の形に開いた口からは意味をなさない喘ぎ声だけがあふれた。
 ビクビク跳ねる体が上にのしかかっている膝丸に振動を伝える。私が達していることは分かるだろうに、がつがつと腰を遣う膝丸は止まってくれない。子宮口をこじ開けるように執拗にトゲを押し付け、行き止まりの最奥をさらに貫かんとしてくる。壊れないのが不思議なくらいだ、ネジの外れた機械みたいに手足も腰もてんでバラバラな拍子で痙攣を繰り返してもう無理だと訴えている。

「…あ、ッすごいな…こんなに動いて…!」
「あ゛あぁッ、お、あッ……!!」

 絶頂に合わせて収縮する媚肉が膝丸のを食いちぎらんばかりに締め付ける。じゅうじゅうと愛液を湧き出しながら絡みつくさまは本当に捕食するみたいだ。

「主、力を抜いてくれ。すこし苦しい…」

 中が締まるのは膝丸のせいなのに。苦しいのはこっちのほうだ、止まってくれさえすれば快楽の波もおさまるのにと訴える言葉も残っていない。
 蛇のしなやかな胴が中心を貫いたまま器用にうねる。単調な前後運動ではない。二足動物の骨格の限界から解き放たれた体が、あらゆる可動域で自由に中を掻き混ぜてくる。ひたすらに己の快楽を貪る膝丸と、その下で濁った喘ぎを絞り出すだけの私は、本当に獣同士のようだ。

「…主は此処も柔らかそうだな」
「あぁぁん……!」

 汗ばんだ乳房に男の手が張り付く。突かれるたびに揺れる膨らみを両手でがっしりと掴んで、好き勝手に揉みしだきはじめる。蛇にいたぶられたせいでつんと尖っている蕾を人差し指と中指ですり潰すように挟まれてまたいってしまった。

「どこを触られても感じてしまうんだな」
「あ、あ、ちがッ、う…!」
「違くないだろう、何度も達しておいて…」
「〜〜〜ぃっっ!!」

 ぐっと寄せた胸に指を食い込ませながら、体重をかけて腰が浮いてしまうほど突き上げられる。ゴツゴツとぶつかり合う巨大なふたつの剛直が競うように中を凌辱していく。こちらの都合なんてお構いなしに打ち付けられる行為、雌の体で気持ちよくなって子種を吐き出すためだけの、ただの交尾だ。

「……膝丸っ、も゛、やめて…ッ…ゆるして、ゆるしてっっ…!」

 これ以上されたら狂ってしまう。潰れた喉をこじ開けてなんとか懇願するが、膝丸は不思議そうに首を傾げるだけだった。

「一体なにを許してもらいたがっているんだ? 許してほしいのは俺のほうだ」

 そして彼は体を起こすと私の腰を高く抱えて持ち上げる。床から離れて不安定に揺れる背中には太くてしなやかな蛇の尾がぐるぐると巻きついて固定される。一体どうするつもりかと、頭に血がのぼる苦しい体勢で膝丸を見上げた。
二又に分かれた舌をだらりと出して、ぼたぼたと毒液を垂らしている膝丸が暗く光る眼で私を見据える。お互いを繋いでいるのは赤黒くぬめる異形の肉塊。それが大きく引き抜かれたかと思うと、反動をつけて勢いよく打ち込まれた。
体の中心に迫り上がる重い一撃に背骨が砕けたかと思った。串刺しにされた腹はビクビクと波打ち、弓を張ったかのように全身が仰け反る。縋りつくもの求めた指は血が滲むほど床に爪を立てた。
 ヴ、ア、と途切れ途切れに獣が唸るような声はどちらのものなのか分からない。腰を掴む長い爪が力の加減を忘れたように肉に沈む、その痛みを感じる余地はなかった。前屈みになりながら一心不乱に突き立ててくる膝丸にもこれ以上持ちこたえる余裕はないようで、目前に迫る果てに向けて昇りつめていく。

「…主…いま孕ませてやる、からなっ…」
「ぁあ゛ぁ…ッッ…やらぁ…?!」
「二本とも君の中で出してやる……!」

 ぞくり、嬲られているお腹の底から戦慄がこみ上げる。欲を突き立てられるだけならばまだ耐えられるのだ。いくら体を汚されても心で屈服しなければいいから。だが、本当に孕まされてしまったら……。こんなわけのわからない化け物の子どもなんて宿るかどうかすら定かでないが、相手は人外、一夜孕みという言葉だってあるくらいだ。

「ぁ、いく…ッ…出すぞっ…!!」
「あ、あ、あ、ぁ゛………〜〜っ!!!」

 恐怖と快楽が風船のように膨張しきって唐突に弾けた。絶頂に堕とされた体は人形のように揺さぶられるのみで男を振り払う力など残っていない。白く塗り潰される意識の中、ふたつの肉棒がめいっぱい最奥に突きつけられ、どくんと脈打ったのを感じた。
 灼けるように熱い白濁の奔流がいっさいの遠慮もなく核心に向かって打ちこまれる。どぴゅどぴゅと放出のたびに跳ねる上反りがお腹側を引っ掻き、トゲが食い込む刺激にまた達してしまう。

「……は、主っ……まだ、…出る……!!」
「んああぁ……ッッ!! くるしっ…!!」

 ありえない量の精液は巨大な二本の塊で栓をされて逆流できず、限界を超えてもなお体内に流し込まれる。熱い、苦しい。蛇の巨体から注がれる二本ぶんのそれはどれほどの量になるのだろう。なみなみと子種で満たされたお腹は膨らんでしまっているけれど、それで雄の射精が止められるわけでもない。びゅるびゅると熱いものが衰えを知らずに溜まっていく。孕んだら駄目なのにもう絶対手遅れだという実感がひしめいていた。

「も、ぬいて…っっ、ひざまるの、おっきいの…中でびくびくして……ああぁっっ!!」
「あと少しだ…、あぁ、これで主の腹に俺との子が……」

 一際大きく腰を震わせて膝丸が残りを注ぎ込む。押し付けられた切っ先に柔らかくなった子宮口がちゅうちゅうと吸い付いて雄の欲望を受け止め、お腹の中に溜まる熱にびくびくと感じ入った。
 ふいに押し付けられていた力が緩み、ぐったりと力の抜けた蛇の尾が床に垂れる。終わった。水を被ったように汗まみれになった体は指一本すら動かせない。いまだ抜け切らない快楽に打ち震える私を膝丸の手がそっと抱きしめた。

「……主を俺のものにできて、幸せだ」

 甘ったるく疲労を滲ませた声が耳を撫でる。もう反論する気力は残っていなかった。私はこのあとどうなってしまうんだろう。現実感の薄い絶望が、快楽で蕩けた脳にぼんやりと靄をかける。
 優しく抱き上げられてとぐろを巻く蛇の胴の上に乗せられる。精液が漏れないよう硬いままの性器で栓をしているのが恐ろしい。膝丸の手が下腹部を伝い、たぷたぷに膨らんだそこを愛しげに撫でた。

「……いま此処で、俺と君の子が形を成しているんだな…」

 気が遠くなる。
 受け入れがたい現実に目を閉じて、そのまま。暗転。



 時折意識が浮上するたびに、温かいものに抱かれながら、ずるずると這う音が聞こえていた。


スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。