※蛇姦(小さい蛇がいっぱい出てくる)


「どうやら終わったようだな」

 柱が崩れる地響きが伝わってくるが、特殊な結界で守られているというこの部屋は安全らしい。誰のものか分からない断末魔の声に耳を傾け、しばらく後に静寂が訪れたのを確認して、膝丸は部屋の外の様子を見にいく。橙色の光を受けてぬらぬらと輝く胴が、重い摩擦音を立てながら畳を這った。
 今のうちに逃げられるかもしれない。わずかな期待を灯して手足に力を込めたが、待ち構えていたかのように体に巻きついている蛇たちが締め付けを強くする。

「―――」

 聞きなれない言語にはっとして目だけで声のほうを見やると、膝丸が戸をすこし開けて廊下の向こうにいる敵兵と話をしていた。異国語のような、理解できるようでできない微妙な言葉を発する敵兵が、奥に横たわる私を見据える。膝丸とお揃いの赤い眼は禍々しくて悪寒が走ったが、不思議と悪意のようなものは感じなかった。

「ああ、主は俺が連れていく。ご苦労だった。先に拠点に戻っていてくれ」

 会話を終えたらしい膝丸が長い尾を引きずってこちらへ戻ってくる。この場を制圧した遡行軍は撤収するのだろう。本当に私の本丸は壊滅してしまったんだ。苦楽を共にした仲間たちが無残に折られて燻る火に焼かれていると思うと止まっていた涙がまたあふれてきた。

「……泣いているのか?」

 目の前に腕を伸ばされて思わずびくっと体が震えた。膝丸は傷ついたように手を引っ込める。

「……俺が恐ろしいか? やはりこの姿は醜いだろうか」

 眉を下げて気落ちした素振りを見せる膝丸は見当違いな問いを投げてくる。仲間を折られて絶望している私の気持ちが分からないなんて以前の彼ならありえない。遡行軍に身を堕とすと同時に心まで壊れてしまったのだろうか。

「異形に成り果ててしまったのは無念だが…君のもとへ帰るにはこれしかなかったのだ。失った下半身はなにかで代用する必要があったのでな」

 まっぷたつに折れた刀身を思い出す。一体どういう手段で蛇の胴体と眷属を手に入れたのか、問いかけたくても依然として拘束されたままで身動きひとつままならない。

「……ああ、すまなかった。もう騒がれても構わないな」

 膝丸は思い出したかのように謝ると私の体を覆っている蛇をするりと撫でる。一気に締め付ける力がなくなって拘束を解いた蛇が逃げていき、自由になった口でひゅうと大きく息を吸い込んだ。荒い呼吸と共に嗚咽が漏れる。長い間縛られ続けていたせいで手足が痺れて起き上がれない…と思っていたら急に膝丸の腕が伸びてきてぐったりした身体を抱き上げる。

「怖い思いをさせたな。もうここには俺と君しかいない」
「ひ…」

 太い腕が私を抱え込んで胸に密着させる。服越しに固く引き締まった胸筋を感じて思いがけずどきりとした。膝丸がぎゅうっと力をこめると鼻筋が彼の胸に埋まり、爽やかな男の匂いが広がる。

「主を愛している」

 低く甘い声がぞわりと耳に響く。熱い吐息がかかり、膝丸の鼻梁が額に触れた。耳に流れる髪をかき分け、体温を残しながら首筋を這っていく。やけにまどろっこしく肌を掠める男の熱にぞくりと官能が刺激される。

「ああ、嬉しい…ようやく君を俺だけのものにできたのだな」

 首元に唇をくっつけたまま喋られて、その微細な柔らかく湿った刺激がじくじくと肌を濡らしていく。男の腕から逃れようとするが痺れて力の抜けた体では芋虫のようにうごめくことしかできなかった。

「本当ならずっと二人きりでいたいのだが、遡行軍(奴ら)に拾われた手前そうもいかないのが残念だ。だが案外みな話の分かる連中でな、拠点に帰ったら専用の離れを用意すると約束してくれた」
「……私を遡行軍の住処に連れていくの?」
「ああ。慣れぬ土地で不安だろうが、君に危害を加える奴は一人もいない。安心してくれ」

 敵軍の本拠地で囚われの身になるのか。膝丸はああいうが捕虜と同じ扱いになるのだろう。付喪神を降ろす力を持った人間が遡行軍にどう利用されるか考えたら、少なくとも明るい未来を想像することはできない。

「嫌だ…離して…!」

 逃げなければ。転送装置も政府へ連絡する端末も破壊されてしまったが、どうにかして救助を求めなければならない。膝丸の腕から這い出そうと必死にもがく私を見て彼は悲しそうな顔をするのみで、拘束の力を緩めてはくれなかった。

「主。約束したではないか。"俺が帰ってきたら添い遂げてくれる"と」

 まさか折れてなお約束を諦めきれず遡行軍に身を堕としてまで帰ってくるとは思わなかったのだ。こうなることが予想できていたらあんな口約束など交わさなかった。後悔と怒り、悲しみと絶望がないまぜになって、私は自棄のような気持ちになっていた。

「遡行軍に堕ちた刀なんて…もう私の刀剣じゃないよ」
「それでも俺は……、そこまでしてでも君と一緒になりたかったのだ」
「私の本丸を、刀剣男士たちを壊しておいて何を言っているの? こんな仕打ちをしたあなたを許せるはずがない…!」
「主……すまなかった。だが君はもう終わることのない戦争に身を粉にする必要はない。命の危険に晒されることもないんだ。今は俺を許せないかもしれないが……、時間はいくらでもある。これから俺を好きになってもらえばいい…」
「ふざけないで…膝丸なんて大嫌い! 離してよ! 蛇の体気持ち悪い!」

 ビクッと大袈裟に男の体が跳ねた。突然弛緩した腕の中から滑り出る。一瞬だけ視界に入った膝丸の顔はひどく傷ついているように見えたが、気にする余裕もなく体を反転させ障子戸をこじ開けた。焼け焦げた匂いと熱気が充満する廊下に転がり出る。もつれる足を懸命に立たせて燻る床を駆けようとするが、その瞬間、足首に強い力がかかり、前のめりにビタンと勢いよく倒れこんだ。
 腹と胸を打った痛みに朦朧とする中、ずるずると足を引っ張られて部屋へ連れ戻される。指先で床にしがみつくが男の力に敵うはずがなかった。

「主」

 諌めるような声と共に、ヒュンと風を切る音がして灼熱の感覚が生まれる。痛みより熱さとして知覚したそれを振り返って見ると、足首から一筋の血が流れ、その後ろで太刀を抜いた膝丸がこちらを冷たく見下ろしていた。

「もう俺は君の刀剣ではないから、君を傷つけることができるのだぞ」

 寂しそうに笑った膝丸が紙一枚ほどの差で私の脚の横に刀を突き立てた。硬質な金属の冷たさが肌越しに伝わり、恐怖で身が竦んで動けない。薄く斬られただけの足首はじんじんと痺れて使い物にならなくなっていた。

「逃げられぬよう、この脚を斬り落としてしまおうか。君が動けなくなっても俺が世話をするから問題はない」

 膝丸の手が慈しむようにじっとりと太ももを撫でてくる。口に出す台詞は物騒なのに触れる手つきは優しげで、不釣り合いなおぞましさに鳥肌が立つ。

「この柔らかな脚に俺の刀を食い込ませたらどんな心地がするだろう。温かな血潮に濡れて肉を斬り骨を断つ感覚は、さぞかし気持ちがいいだろうなあ。……どうした、震えているのか? 俺の斬れ味は格別だからな、愛する人に痛みを感じさせたりはしないぞ」

 狂気じみた言葉を紡ぎながらも愛おしげに脚を撫で、至極まじめな口調で語りかけてくる膝丸に震えが止まらない。遡行軍と提携して本丸に火を放ち、刀剣を破壊して回った彼ならためらいなく私の脚を斬り落とせるだろう。何をしでかすか分からないこの男を止める手段など見つからなかった。

「……だが、これ以上君に嫌われるのは耐えられないのでな。美しい体を損なうのも気が進まぬ」

 ゆっくりと刀が引き上げられてカチャと軽い音と共に鞘に収められる。安堵と共に全身から力が抜けて大きく息を吐いた。よかった。ひとまずは脚を斬られずに済むようだ。しかしまた下手な動きをして彼を刺激したら、今度こそ刀を振り降ろされるかもしれない。逃げる気力は失われてしまった。
 床に突っ伏したまま動けないでいると、ふいに襟首をガッと掴まれて引き上げられる。後ろから抱きしめられて背中に男の体温を感じる一方、奇妙に冷たいものが触れるのは蛇の胴のようだ。

「逃げられては困るからな、少し細工をするぞ」

 彼の指が乱れた髪をかき分けてうなじに触れた。どくどくと脈打つ急所を撫でられて本能的な危機感を覚える。

「もう逃げない……逃げない、から…」
「信用できないな。俺を憎んでいる主がそう簡単に逃亡を諦めるとは思えない。なに、悪いようにはしない」

 言うなり、ちゅぷと音を立てて首筋に吸い付く。押し殺した悲鳴と共に跳ねた体は男の腕にきつく締め付けられて押さえ込まれた。なめらかな舌が恐怖と熱気で浮かんだ汗を舐め取るように執拗に這い、濡れた熱い感触が広がっていく。無力な抵抗は呆気なく片手で押さえつけられ、己より圧倒的に強い存在に弄ばれ捕食される小動物を連想してしまう。
 首の後ろでじゅっと唾液を啜る音が響いた直後、ブツッとなにかが皮膚を突き破って体内へ潜り込んできた。火花のような痛みに高い悲鳴が漏れる。熱いものが首の血管に注がれて瞬く間に胸や腹の臓器まで広がり、次いで手足のすみずみが熱を持つ。強張っていた体が急に弛緩し、膜が張ったかのようにぼやける思考、思うように動かない筋肉とは裏腹に、スッと肌の表面を撫でる些細な刺激にさえ剥き出しの神経を嬲られるような衝撃。なんだこれは。膝丸が牙を引き抜くときのぬるんとした感触にすら、勝手に腰が跳ねて哀れっぽい声が喉を突く。

「安心しろ。死にはしない。じきにもっと善くなるだろう」
「あ……毒…」

 理解しても全身に毒が回ってからでは手遅れだった。力無い声が虚しく宙を舞う。膝丸は人形のようにぐったりと力の抜けた私を丁重に床に寝かせると、なにを思ったのかずりずりと部屋の向こうへ去って行ってしまう。ひとり取り残されたが自力で這いずる力もない私は呆然と彼の長い尾を目で追っていたのだが、

 ぬるり。

 突如として冷たいものが四方八方から押し寄せてきて体にまとわりつく。ぎょっとして視線を戻せば、うねうねと蠢く無数の生き物たちが大挙して私の体に乗り上げてくるところだった。

「ひッ……!」

 おぞましい光景だった。色も模様も様々な蛇の群れが、チロチロと赤い舌を出し入れしながら動く絨毯のように迫ってくる。手足に、胸に、腹に、首に、体じゅう余すところなく埋め尽くされてしまうのはあっという間だった。びっしりと並んだ菱形の鱗、その縁取りの溝ひとつひとつが数えられるほど間近に迫り、生理的嫌悪感に吐き気を覚える。もともと蛇が特別苦手というわけではないのだが、こうも大量に自分めがけて襲いかかってくるとなれば話は別だ。

「まずは、蛇に慣れてもらわないとならない。俺の下半身はもう元には戻らないのでな」

 神妙な表情をした膝丸が己の尾で畳を軽く打つ。蛇の体が気持ち悪いと罵ったことを根に持っているのだろうか。こんな仕打ちをされたら余計に蛇が嫌いになるに決まっているのに。
 にゅるにゅるとなめらかな鱗が滑る総毛立つような感触。毒のせいで火照る素肌に冷たい蛇の体が触れるたび、びくんと腰が跳ねる。恐ろしくてたまらない、なのに恐怖の薄皮の一枚下には、じくじくと熱を持つ傷口に氷を当てられるような心地よさが確かにあった。

「ぁ……ああっ…!」

 はだけた胸元に触れる体はひんやりとしていて、そのくせ妙に弾力があって柔らかい。身動きが取れないまま呼吸だけが荒くなり、上下する胸をなぞるようにそれは細長い形態をうまく使って服の下に潜り込んでくる。冷たい感触が脇の下から乳房の横をするすると撫で、はっきりと快感の色を濃くした刺激に嬌声が漏れた。着衣がすっかり乱されてあられもない格好になっているだろう私の体を絡め取るように無数の蛇が這い回っていく。ひんやりした胴によって乳房の形は奇妙に歪められ、ゆるゆると持ち上げるように揺さぶられている。蛇毒に侵された神経はこんなおぞましい愛撫さえ快楽に変えてしまうのだ。逃れたくて身悶えると、待ち構えていたように丸っこい先端が乳首を掠めていき、敏感なところを擦られる感覚にビクビクと腰が跳ねる。

「あっ…ぁッ…!はあぁぁッ、やだぁああ…!」

 はぁはぁと呼吸を繰り返しながら両の腿をぴったりとくっつけようとするが、蛇は無駄な抵抗を嘲笑うかのように臍の上を滑っていき、太ももの間に侵入してしまう。冷たいものが下着越しのそこに触れる。ズリズリと位置を整えていたそれはちょうど割れ目に体を嵌めると、ぎゅうっと柔らかな肉に己を食い込ませてきた。途端に弾けるような快感が生まれる。刺激を受ければ否が応でも膨らんでしまう淫芽に、トン、トンと繰り返し小突くような圧を与えられて、そのたびに高まっていく下腹部の熱。物欲しげに口を開ける蜜壺には下着越しにぐりぐりと頭部をねじこまれて、熱くてねばついた体液があふれ出してきた。

「やだ…! 膝丸っ、たすけて…!」

 助けを求めて膝丸を仰ぐが、彼はじっととぐろを巻いたまま黙ってこちらを見つめているだけだった。興奮しているようにも見えず、言葉で辱めるでもなく、ただ淡々と無機的な眼差しで蛇に犯される私を観察している。一体この余興に何の意味があるのか。渦を巻く疑念をよそに、蕩けきった下腹部は男の冷たい目に射竦められてずくっと疼き、新たな蜜をこぼす。
 膝丸の視線に応えるかのように冷たい縄が一斉に体中を嬲り出した。乳首を押し潰されながら秘部も摩擦され、吐き出した汁で重たく濡れた布の生地がクリトリスに張り付いてぬるぬると滑るのがたまらない。爪先が不規則に痙攣して絶頂が近いことを知らせる。こんな気持ちの悪い生き物に感じさせられてしまう体が腹立たしくて仕方ないが、昇りつめた快楽は熱を発散するまで引いてはくれない。
 ふいに一匹の蛇が小刻みに震える背側に回り込んできたかと思うと、唐突にお尻のほうから勢いよく割れ目を擦り上げてきた。

「ああああっあっあぁっ!」

 びくんびくんと痙攣してまぶたの裏が真っ白になる。股だけでなく全身から体液が噴き出してぐっしょりと汗ばんだ体を蛇が柔らかく締め付ける。口の端から垂れた涎は彼らの胴で拭い取られた。

「嫌だと言う割には気持ち良さそうだな」

 ほんの少し侮蔑の色を乗せて膝丸が声を投げかける。ようやく彼からの反応が得られたことに少なからず安堵した。この蛇たちと意思疎通できるのは膝丸だけなのだ。膝丸に訴えかけて蛇による陵辱を止めてもらうしかない。開きっぱなしの口ではふはふと息を整え、呂律の回らない舌を動かそうとしたが、ぬるんっと股の間に潜り込んできた異物に言葉を忘れる。

「ひっっ!!」

 下着越しにそこを愛撫するだけだった蛇が、器用に布をずらして直接濡れた蜜口を弄りはじめる。

「膝丸っったすけて!!膝丸っ!!」

 ろくに動かない体をひねって懸命にもがく。じたばたと駄々っ子のように髪を振り乱して叫ぶが、暴れたぶんだけキュッと締め付けを強くする蛇の縄によって無様な姿で拘束されてしまう。気づくと膝丸が横に来て泣きじゃくる私を見下ろしていた。

「良い眺めだ。君の白い肌に蛇の模様がよく映える」

 中途半端に開いた太ももに何重にも蛇が巻きつき、度重なる摩擦のせいで赤く痕のついた肌。グロテスクなくせになまめかしく光る蛇の鱗に囲まれて私の裸体はやけにいやらしく映った。

「もうやだっ…蛇やめて…ひ、膝丸っ許して…!」
「駄目だ。自分が蛇に犯される様をよく見ておけ」
「ああぁあぁぁっっ!」

 それほどの太さはないが無機物の冷たさを感じさせる頭部が浅いところをぬぽぬぽと出入りする。粘液に包まれた体内への入り口を、牙を持つ動物に侵入されるおぞましさ。噛みちぎられたらどうしようと思うと血の気が引いていく。それなのに。楔形にゆるりと尖った頭で中のヒダを引っ掻かれると、下半身が蕩けてしまいそうな痺れが走る。

「いやあっあぅッへびやだぁああっっ」
「怖いのか? 心配ない、奴らには君を傷つけないよう命じてある。……それより簡単に飲み込んでしまったなあ。何匹入るか見ものではないか」

 ずぷんっ、塞がれている穴のすきまから次の蛇が侵入を果たしてくる。さっきより一回り太く内側が押し広げられる快感。泣いて身悶える私の反応を楽しんでいるかのように、蛇は頭を、腹を、尾をあちこちに食い込ませ、柔らかな肉を歪ませていく。
 それは拷問に近かった。気持ちの悪い生き物が次から次へと体内へ入ってきて、冷たい鱗まみれの体で弱いところを擦り上げる。ぐぐぐっと入り口を広げられたかと思うと新たな蛇が勢いよく細い体をねじ込ませ、もう何匹入っているのかわからない。

「よく見ろ主。これほど蜜を垂らしながら咥え込んでおいて、蛇が嫌いとは言えぬだろう」
「あ゛っ?! やぁああ…!」

 急に膝丸が両脚を掴んで高く持ち上げる。腰が床から浮くほどに引っ張り上げられてしまって、うじゃうじゃと蛇が密集する恥部が目に飛び込んできた。吐き出した体液でびしょ濡れになり、重なり合って蠢く色とりどりの鱗。ぽってりと赤く腫れた媚肉からはまるで生えているかのように何本もの尾がうねっていた。

「やだやだあぁぁあ…!! ああぁぁあぁ〜〜ッッ」

 器用に捻じ曲がるしなやかな体躯でいっぺんにヒダを搔きむしられると、勝手に脚がガクガクと震えて蛇で塞がれた穴から大量の愛液が噴き出す。透明な飛沫が己の顔にまで降りかかった。
小刻みに痙攣する脚は膝丸に掴まれたまま。冷たい目で見下ろしてくる膝丸に恥ずかしいところをぜんぶ見られていると実感すると、達したばかりのそこがきゅんきゅんと興奮した。

「……まだ物足りないのか?」

 じわりと汁が滲み出したのを見逃す膝丸ではない。吐息に乗せて嘲るような声が情けない格好をしたままの私に降り注ぐ。

「嫌だ嫌だと言いながら感じてしまう女の体とはいやらしいな。それとも、蛇に嬲られて喜んでいる君が特別物好きなのだろうか?」

 違う違うと言葉にならない喘ぎ声で首を振るが、彼はたいして気にも留めない様子で恥部を見つめる。

「此処も充分にほぐれたのではないか?」

 突き刺さっている蛇の背をぐっと指で押し込まれ、中でひしめいている塊が子宮の入り口に触れた。こつん、こつんと頭でそこを打たれて内臓を犯される感覚に悪寒が走る。なのにもう恐怖や嫌悪感が弾き出されるほど頭の中は快楽でいっぱいだった。

「これだけ咥え込んでいれば中もすっかり広がっているだろうな」
「やぁあ…っ」
「嫌ではなく気持ちいいんだろう」
「あ、あ、あぅう…っきもちい…」

 ぴしゃりと平手を打つように言い放たれて、ぼろぼろと涙を流しながら肯定する。気持ちよすぎて怖い。頬を伝った雫が乾いた蛇の胴に染み込んでいく。正常な感覚はとっくに麻痺してしまっておぞましい行為を受け入れるが、膝丸がなにを意図しているのかという疑問だけは残っていた。

「…ひ、膝丸…なんで、こんなことするの…?」

 しばらくの間じっと目を見据えたあと、膝丸は抱えていた両脚をゆっくりと床に下ろした。

「不公平だと思わないか」

 直接こちらの問いには答えず、ぐるりと床を這って頭のほうに回り込んでくる。

「俺にとって君はただ一人の今世の主だった。だが君にとっては……、いくらでも替えの利く数多の刀剣の一振りにすぎなかったのだろう?」

 膝丸が手を伸ばして体を縛っている蛇を撫でると、彼らは役目を終えたかのようにスルスルと解けて部屋の隅へ散っていく。一気に血流の戻った体がじぃんと痺れるのが心地よい。拘束は解けたが股の間に割り込んだ蛇はそのまま、膝丸の目線が上から下まで舐めるように這い、いくつも残った赤い縄の跡をなぞっていく。

「しかしそれも昔の話だ。周りを見てみろ、主。君の味方をする刀剣は一振りも残っていない。君を守れるのも殺せるのも俺だけだ」

 呪詛のような言葉を吐きながら、その笑顔には悪気なんて微塵もない。異形に変わり果て、刀剣男士ですらなくなった膝丸が赤く変色した瞳で愛しげにこちらを見つめる。

「主にはもう俺しかいないんだ。体にも心にもそれを教えてやろう。あとは…そうだな、」

 うやうやしい手つきで肩の下に腕が回され、優しく抱き上げられる。弛緩しきった背中になにか硬いものが触れた。

「身重にしてしまえば逃げる気もなくなるだろう?」

 数秒、意味を理解するのに時間が必要だった。素肌に擦り付けられる歪な熱の塊。妙に肌に引っかかるそれの正体を悟った途端、全身の血が足元から流れ出ていくような恐怖に襲われる。振り向くのもおぞましいが確認せずにはいられなかった。そして後悔する。蛇の腹に裂けたスリットのような切れ目から、異様に膨れたふたつの塊が飛び出していた。
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