器用に緩急をつけた長い指が小魚のように体内で動き回る。男の手に引っ掻かれるたびに悪寒に似た感覚が腰から込み上げ、内腿が小刻みにびくびくと震えた。

「ぁ…っ、ン、も、それやだぁ…」
「濡らしておかないと入れるのが大変だろう」

 膝丸は中に挿入していた指を折り曲げ、肉壁のざらつきを確かめるようにゆっくりと撫でていく。また新しい体液が熱く溢れてきて滴り落ちるのが恥ずかしい。もう膝丸の指の付け根から手のひらに至るまで濡れて光っている。見るに耐えなくて顔をそむけ、腿を閉じようとするとぱちんとお尻を叩かれた。

「駄目だ」

 足を開くように無理やり押し広げられる。大きく開帳した股の間から、ことさらに卑猥な音を立てて男の指が引き抜かれた。途端にちょろちょろと失禁するみたいに汁が噴き出す。涙ぐんだ視界に卵を持つ手が見えた。

「そろそろ入るだろうか」

 蕩けた穴に冷たい球体が押し付けられる。さっきまで体内を蹂躙していた指とは明らかに違う異物の感触に息を呑んだ。

「ひ……」
「主。力を抜いてくれ。このくらいの大きさならきっと大丈夫だろう」

 思わず体を強張らせると、なだめるように声を吹き込まれる。ほんの少し気が逸れると同時に丸いものが膣口を超えて侵入してきた。もちの卵はゴムの塊のような弾力を持っていた。

「あ、あああぁっはいっ、ちゃう…!」

 ずぷんっと濡れた肉壁の中へ球体が吸い込まれると膝丸はさらに指で奥へ奥へと押し込んでいく。固い異物が隘路をさかのぼっていく感覚に鳥肌が立ち腰が逃げそうになった。

「ここが行き止まりか。ほら、簡単に飲み込んでしまったではないか」

 ぐいぐいと卵を押されて最奥に圧迫感をおぼえる。お腹の中に収められた異物を一刻も早く排出したくてたまらないが、本番はここからなのであった。
 膝丸がほっそりした袴を下ろすと一目で分かるほどに膨らんだ下着が見えた。涼しい顔して下半身をこんなにしていたのかと驚愕する。それどころか滲み出した先走りの汁で暗い生地の布は濃い染みを作っていた。

「……興奮してるの?」

 彼は驚いたような表情をしたが、すぐに不敵に唇を歪ませた。

「ああ、当然だ。君のそんないやらしい姿を見て欲情しないわけがない」

 一気に顔に熱が集まり、胸の内側が奇妙に高鳴る。膝丸が下着を取り払うと太く屹立した陰茎が勢いよく飛び出してきて思わず目を逸らした。

「こっちに来てくれ」

 腰を掴まれて、反り返っているそれの上に誘導される。本当に膝丸と一線を超えてしまうのかと今更ながらに慄いたが、私の躊躇などお構いなしに膝丸は上に乗せようとしてくる。

「ひあ、あ、や…」
「嫌なのか…? だが金のためには仕方ないだろう?」

 でも、と口篭ろうとすると彼は瞳を凶悪に光らせた。

「黙っていてほしいなら俺の言う通りにしろ。ほら、ちゃんと、君の胎に存分に霊気を注いでやるからな」

 卵を収めたままの蜜壺からぽたぽたと愛液が滴り、膝丸の先端に垂れる。抵抗しようとしたが男の力にはかなわず強引に腰を落とされて挿入を果たされた。

「だっ、め゙っえぇぇ…あああぁぁぁっ」

 熱い肉棒に貫かれたと思ったらすぐに自分の重みでずぶずぶと奥に潜り込んでいってしまう。挿入されたままの卵と膝丸のものがお腹の中でぶつかって鈍い感触が生まれた。

「当たっているな…分かるか?」

 膝丸は私の腰を掴んだままゆっくりと突き上げてくる。ごつごつと卵が押し上げられて子宮口にぶつかるたびに鈍痛と快感が交互に走る。

「この、卵がなければ、もっと奥まで入れるのに…!」
「あああああっかたいっっおっきいっ」

 がっちりと固定されたまま容赦なく下から突かれて否が応でも快楽を与えられる。逃げようともがく腕が縋り付くものを求めて抱きつくように膝丸の背中へ爪を立てた。

「ッ、主…」

 切なげな声と共に熱い舌で耳元を舐められてびくりと背筋が震える。ちゅぷ、ちゅぷと卑猥な音を立てて耳朶を丁寧に吸われるのがたまらなく気持ちいい。

「は、あぁぁあっン、ひざまるっっきもちい…ぁっ」
「……君が熱心に通っていたクラブというやつでは、余所の刀剣とこういう行為をしたのか?」
「んっ…、え…?」

 急に低い声で囁かれた。涙で滲んだ目を向けると膝丸はなぜか暗い顔をしている。どういう意味だろうと思案して、脳を浸していた甘い痺れが遠退く。

「男が客を接待するのだろう。そうした類の店では色仕掛けは主流だ」
「えっそんなっ…、してない、よ。クラブはそういうの、禁止だったもん」
「そうか。ではこの本丸の刀剣とはどうだ? 君が親しくしているあの打刀や太刀とは何もないのか」
「してないよ…。なんでっ、そんなこと、聞くの…」

 膝丸が私のことをそういう人間だと認識していたことに傷ついた。仕事をサボって遊んでばかりいる審神者だが、誠心誠意使えてくれる刀剣男士のことは尊重して、公私混同せず最低限の線引きはしていたつもりだ。だからこんなバイトを頼むのも申し訳なくて恥ずかしくて死にそうだったのに。

「ならば俺だけか? 本当に他にはいないんだな?」
「ん、んっ、そうだよ…膝丸しかいないよ…。刀剣男士とえっちするの…初めてだよお…」

 膝丸は憂いが晴れたように明るく微笑んだ。

「そうか。良かった」

 結局、どうしてそんなことを聞くのかという疑問は残ったままで、もう一度尋ねようとした瞬間にぐちゅんっ!!と勢いよく突き上げられて言葉が吹っ飛んだ。

「あ゙っっ?!あっあっあっあぅうッッひぐううぅうっっ!!!」

 勝手に体が仰け反って膝丸の上から落ちそうになったが、背中にきつく腕を回され、雁字搦めに拘束されたまま激しくピストンを続行される。子宮口と亀頭に挟まれた卵がゴツンゴツンと押し潰されるたびに鞠のように弾んでお腹の中で暴れまくる。

「んあっあっあああったまごっったまごこわれちゃう!!」
「壊れたら、次のを入れればいい」
 
 背骨が折れそうなくらい腕に力を込められて失神しそうになった瞬間、ガブリと嫌な音を立てて肩口に激痛が走った。熱い。牙が突き刺さっている。痛いのに感じてしまう体は中のものをキツく咥えこんだまま収縮する。じゅうぅっと首筋に歯を立てて吸われ、濡れた甘い痛みに体が跳ねて絶頂に達した。
 私が痙攣しているのはお構い無しに膝丸は容赦なく下から突き上げてくる。無意識に逃げようとする腰を引き戻して一息に奥の卵を叩かれ、意識が飛びそうになったところで膝丸の荒い声に呼び戻される。

「あるじ、主っ…! 出すぞ…」

 胸元に縋り付いてきた淡い色の頭を抱きかかえる。
 胎の中に熱いものが溜まっていくのを卵越しに感じた。精液の熱さだけではなく同時に注がれる霊気の密度なのだろう。びゅくびゅくと濃い白濁が卵に絡みついていく。互いの霊気が混ざり合い、虚ろだった卵の中を満たしていく。

「はーっ、あ、あ…重い…」

 どんどんお腹の中で卵が質量を増して圧迫感を覚える。膝丸が自身のものを引き抜くと彼の太さに拡張していた中がもどかしげに震えながら元に戻っていく。体から離れていく男の体温を寂しいと思ってしまったがすぐに彼は背中のほうから抱きしめてきて、手のひらを下腹部に沿わせる。

「あとは卵を出すだけだ。がんばってくれ」

 ぐうっと下腹部を押されて喉が引き攣る。膝丸の手のひらの下で異物感を放つ固い塊が彼の手の動きに合わせてゆっくりと降りてくる。

「あああぁぁっ、たまごっ…でちゃう、でちゃううぅ」
「ああ、早く出さなければ、中で孵ってしまうぞ」

 恐ろしいことを囁かれて必死に下腹部に力を込める。達したばかりで敏感になっている膣壁をゴリゴリと擦られる感覚に快感が生まれて喘ぎ声が漏れる。産卵しながら感じてしまうなんて恥ずかしくて手で口元を覆ったが、ぎゅっぎゅっと腹に手を食い込まされて我慢できなかった。
 自分で口を塞ぎながら泣いている私に膝丸は苛立ったように声を低くする。

「卵なんかに感じているのか? 早く産んでしまうんだ。次の卵も俺が種付けしてやるからさっさと出してしまえ」

 その言葉にまた膝丸の太いのを奥まで入れられる感覚を思い出して子宮が疼いた。大きく震えた下半身をそのままに筋肉に力を入れると、勢いよく押し出された卵がとうとう膣口から外へ転がり出た。
 ぬらぬらと光る白濁まみれのそれは先刻より一回り大きくなっている気がする。中を圧迫していたものがなくなった解放感と膝丸の目の前で卵を排出してしまった衝撃とで体が動かない。

「無事に産めたではないか。よくがんばったな」

 膝丸は優しく髪を撫でると唇に口付けてきた。全身汗に濡れてぐったりした私の体を支えながら産み落としたばかりの卵を手に取る。粘液を拭き取ると殻の表面にはうっすらとヒビが入っていた。

「……うまれるの…?」

 私のつぶやきが終わるやいなや、コツンと中から音がして表面のヒビが大きく広がり始めた。欠けた殻のすき間から薄緑色をした一部が見えたと思ったら、

 パリン、パリン

 瞬く間に薄い殻は砕けていって生まれたばかりのもちが姿を現した。

「わあ…」
「なんだこの面妖な形は」

 感動する私と一方で顔をしかめる膝丸。霊気を注いだ刀剣男士に姿が似るというという言葉通り、膝丸を丸めて細長い団子にしたような姿をしている。かわいい。まだ閉じたままのまぶたをそっと擦るともちひざは眠たそうにつぶらな瞳を見開いた。緋色の瞳も薄緑の頭も膝丸にそっくりだ。

「膝丸の子どもみたいだね」

 もちひざを手のひらに乗せて膝丸に笑いかけると、彼は顔を赤くして目を逸らした。ちゃんと見てほしいから強引に手を取って上にもちひざを乗せる。

「俺と君の子はこんなちんちくりんではないだろう…痛っっ!」

 もにょもにょとつぶやいていた膝丸が唐突に叫んだと思えば、もちひざがちいさな牙で彼の指に噛み付いていた。

「もちひざちゃん、どうしたの。めっ!」
「くそっ…もちもちごときが邪魔をするな!」

 膝丸はもちひざをもぎ取ると床に置き、空の湯呑みを被せて閉じ込めた。
 もちひざは怒ってガタガタと湯呑みを揺らしている。

「もちひざちゃんが可哀想だよ!」
「…そんなにあの畜生が気に入ったのなら、もっと作ればいい」

 いきなり視界が反転して天井を見上げる。膝丸が私の頭の横に両手をついて馬乗りになっていた。

「さあ早く次の作業に取り掛かるぞ」

 膝丸の手が乱暴に傍に重ねてあった卵を掴み取る。暗い興奮に光る目に見据えられて、嫌な汗が滲むのと同時にさんざん嬲られ快楽を教え込まれた下腹部がきゅんと反応する。

「この調子だと一晩に五個は孵化させられるだろう。うまくいけば一月もあれば十分に出費分を取り返せるはずだ。ああ、もちろん、このことは他言しない。君とまぐわうのは俺だけだ」

 待ってくれ、毎晩こんな行為を五回も続けたら死んでしまう、と言いかけた口が膝丸の唇で塞がれる。
 もちひざがガタガタと暴れる横で熱い舌に心まで絡め取られるような長いキスをした。

「これからは毎晩俺が付き合ってやるからな。他の刀のことなど考えられないようにしてやる」

 膝丸の瞳が禍々しい三日月のように歪んで笑っている。
 抗えない男の下で、恐怖とも歓喜ともつかぬ感情にぞくぞくと背を震わせた。

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