※刀×こんのすけの獣姦、リョナ


 主が一週間、不在にするという。
 定期健康検査と帰省を兼ねて、現世でゆっくりしてくるようだ。

「そういうわけで、わたくし、こんのすけめが、しばし審神者様の代理となります」

 使い魔の小さな獣が大広間に刀剣男士を集めていた。
 色とりどりの眼を一斉に向けられ、こんのすけは身が竦むような気持ちになる。はて、刀剣男士とはこんなにも不穏な眼差しをした存在だったでしょうか。審神者様と接している彼らは、もっと温かく生き物じみたものだった気がするのですが。

「…ええと。一週間ほどですが、私を主様と思ってよろしくお願いします」
なんだか空気が悪い。こんのすけは毛が逆立つのを感じた。

 こんのすけたちは政府から審神者のもとへ派遣される管狐である。多くは上層と現場を仲介する、いわば中間管理職のようなもので、この本丸のこんのすけもそうだ。政府側の意向も知っているし、審神者たちの戦場がどんなものかも理解している。しばらくの間、審神者の代わりに刀剣男士を率いることに関して、能力的には何の問題もないはずだった。

 不意に声が上がる。
「お前を主と思って良いのか?」
 どこか嘲笑を伴った物言いに不審な気持ちを覚えはしたが、ようやく刀剣男士からの反応が得られたことにこんのすけは安堵した。
「はい! 私を主様と思って……」
 元気よく答えかけたこんのすけは、次の瞬間には宙に浮いていた。
「んぐっ…?!」
 頭を鷲掴みにされて、乱暴に持ち上げられている。必死に目だけを動かして、手の主を見やる。にやにやと化け物じみた笑顔を浮かべる刀剣男士がこんのすけを見下ろしていた。
「ではお前を主と思って、普段できないことをさせてもらおうか」
 こんのすけの腹の底がひやりとする。頭の中で、直感が警報を鳴らしている。
「…一体なにをおっしゃるのですか?」
 刀剣男士はこんのすけの問いに答えもせず、逆に質問を返してきた。
「時に、化け狐よ。おぬしは変化の術は使えるのか?主に化けることはできぬか?」
「…? いいえ、私はただのお使いでありますので、そのような技は使えません」
「なんだ。それは残念だな」
 質問をしてきた刀剣男士はつまらなそうな顔をした。顔は美しいのに、血の通っていないような眼がひどく恐ろしい。
「まぁ、畜生を嬲るのも一興ではありませんか。このちんちくりんは我らがぬしさまに似ても似つきませんが、だからこそ胸が痛まずに非道な遊びもできることでしょう」
 白い髪の刀剣男士が吐いた言葉に、こんのすけは凍りつく。
「何をする気でございますか。離してください、私はあなたがたの主の代理なのですよ」
 そう言った瞬間に部屋の刀剣男士たちが一斉に立ち上がる。あまりの威圧感に言葉を失った。
「安心しろ。死なせはしないよ」
 こんのすけを掴んでいる男士が含み笑いをする。くすくすと輪の中から笑い声が起こる。
「主が帰ってくるまで、楽しませてもらおうか」
 それがこんのすけにとっての地獄の幕開けだった。


「ぎゃあああああ!!!」
 こんのすけは両手で腰のあたりを掴まれ、後孔に刀剣男士の一物をぶちこまれていた。
「ああっ、主! 主! 主っ♡」
 刀剣男士は激しく性器を打ち付けている。こんのすけを審神者に見立てて陵辱しているのだ。狂気に囚われているとしか思えない。
「いだっ、いだい、やめてぐださいぃぃ!!!」
 じたばたともがくこんのすけ。小さな体に深々と抜き差しされる肉棒に、内臓の奥のほうまで貫かれている。
「あるじっ♡ お慕いしておりますっ♡」
「あがががっがっ!! 私は審神者さまではありません!! こんなふざけた真似はおやめくださいっ!!!」
 こんのすけの叫びなど聞いていないのだろう。容赦なく刀剣男士は腰を突き立てる。周りでは、他の刀剣男士たちが面白そうに見物している。
 腸をえぐられるような感覚に、吐き気も込み上げてきた。
「主っ! 出しますよ! 受け止めてくださいねっ!!」
 一層激しく打ち付けられる。中で刀剣男士のが跳ね、腸の奥に注ぎ込まれる。体内で精を吐き出して震える一物の感覚に、こんのすけは白目を剥いた。
「…どうだ? 満足したか?」
 傍観していた刀剣男士が、ようやく射精を終えたらしい刀剣男士に問いかける。穴から刀剣男士のものが引き抜かれた。ぐぽぐぽと、血液と腸液と精液の混じったものがこぼれ落ちる。腹の中の圧迫感が一気に消えて、こんのすけは身震いした。
 さっきまで善がり狂っていた刀剣男士は、冷めた表情をして相手を見やる。
「…まあ、本物の主には及ばんがな」
「ははっ。そりゃそうだろうな。本物の主と寝れる日がくるといいなあ」
 こんのすけは次の刀剣男士に手渡された。完全にオナホ扱いである。こうして犯されるのはもう何人目か分からない。さっきからずっと、こんのすけは刀剣男士の手から手へ渡り、猛った男根をぶちこまれているのだ。無理矢理に開かれた尻は裂け、おびただしい量の血が流れ出している。
「さて。次は俺の番なのだが、このペースでは全員ぶんは回らんなあ」
 こんのすけの耳を持ってぶらさげ、嘲笑う刀剣男士。なにか良からぬことを思いついたようで瞳を輝かせた。
「口のほうも使おうか。ただ、牙が邪魔だよなあ」
 こんのすけの口の皮を指で押し上げ、牙を露出させる。
「小狐丸、手伝ってくれ」
「おや。お呼びですか」
 白い髪の刀剣男士がにやにや笑いながらこちらへ来る。
「歯を抜きますか?」
 何気なく発せられた言葉に、こんのすけはぎょっとした。
「そうしよう。俺が口を開けておくから、君の手で抜いてくれないか?」
「いっ、嫌です!! お願いしますやめてください!!」
 こんのすけは手足をばたつかせ、死に物狂いで抵抗を始めた。しかし、刀剣男士は意にも介さず、こんのすけの口を開いて固定した。もう一人の刀剣男士が口の中に手を突っ込んでくる。牙の一本を、指で掴まれた。
「うーむ、案外しっかり生えていますね。一本一本抜くより、歯茎ごと抉ってしまったほうが楽では?」
 こんのすけは総毛立った。
「やめてください! やめてください!」
 しかしこの場所にこんのすけの味方はいないのだ。
「ああ、そうしようか」
 目の前に、鋭い刃物の光が近づいた。あっと言う間に、強烈な痛みが歯肉に走る。
「ぎゃああああああ!!!!!」
 鉄の味が充満する。生温い液体が噴き出してきて、食道に流れ込んできた。上下左右に刀がぐるりと回って、ぎちぎちと嫌な音を立てながら、牙を歯茎ごと抉り取っていく。
「取れました」
 刀剣男士は満足げに微笑むと、白と赤の肉塊を放り捨てた。
「ぐえっっ!! うえっ、おえええ!!!!」
 こんのすけは口の中に溜まった血を吐き出した。あまりの痛みと気持ち悪さに、胃の中の内容物まで嘔吐してしまう。
「さてと。では私は口の方を使わせてもらいます」
「口でいいのか? 一仕事してもらったし、後ろを使ってくれてもいいんだぜ?」
「ええ、この狐の顔を見ながらするのも愉快そうですからね」
 何の相談をしているのかはすぐ分かった。二人がかりでこんのすけの口と肛門を嬲ろうというのだ。こんのすけは陸に上げられた魚のように跳ねまくって逃れようとする。
「本当に駄目です! 死んでしまいます!!」
 一人の刀剣男士が驚いた顔でこんのすけを見る。
「おや、歯を抜いたのに喋れるのか」
「この管狐はある程度思念の力で話しているのでしょう。歯が無くても話せるとは便利なものですねえ」
 呑気な声を聞きながら、血まみれの口をこじ開けられる。こんのすけの目の前に、刀剣男士の怒張した性器が突き出された。血管の浮き出た凶悪な容貌、そのあまりの大きさに、こんのすけは恐怖でぶるりと震える。刀剣男士は獲物を前にした獣のように笑う。
「挿れますよ」
「ひぎぃ…!!」
 太いものが口内にぶちこまれる。当然口内に収まりきることはなく、咽頭を超えて食道のほうにまで届いている。嘔吐感が込み上げてきて、喉の筋肉がびくびくと震える。しかし、刀剣男士の性器で栓をされているので、胃液すら吐き出すことはできない。引き抜かれたと思ったら、一気に奥に突き込まれた。がくんがくんと体が揺れる。こんのすけは痙攣した。
「んぎぃぃぃぃぃ!!!!」
「ああ、歯茎と喉の締め付けと、血の滑りが最高ですね♡」
 刀剣男士は上機嫌で腰を振る。抉られた歯茎をさらに削り取るように動かされ、気が狂いそうな痛みに襲われる。新たに噴き出す血は、刀剣男士が出し入れするたびに口の外へ漏れる。
「俺も挿れさせてもらおうかな」
 背後で声が聞こえた。尻を高く上げられ、次の瞬間には後孔に激痛が走る。腹が変形する勢いで一物を叩きつけられる。
「んぅぅぅ!!」
 腸が破れてしまいそうだ。死ぬ。
「こんなにマワされてるのにちゃんと締まるんだなあ」
 刀剣男士が笑うのが聞こえる。締まっているというより、拡張の許容範囲を超えたものを入れられているだけだ。前から後ろから突き上げられ、両穴を犯され続けるこんのすけ。
「そうそう、お前をぬしさまと思えば良いのでしたねえ? ここは一つ化かされてやりましょうか。ぬしさま♡ 可愛らしいお口ですねえ♡ 私のものをこんなに咥えこんではしたないですねえ」
 赤い眼を歪めて笑う刀剣男士。こんのすけは涙を流した。
「ははっ、主。ずいぶんと小さくなったなあ」
 後ろを突いてくる刀剣男士もふざけて声をかけてくる。
「ぬしさま♡ ぬしさまぁ♡」
「主♡ 主♡」
「ふぐううぅ!!! んごおおおお!!!!」
 こんのすけは前と後ろの激痛により、もはや声ななか何なのか分からない音を上げている。
「出しますよお! ぬしさまぁ!♡」
「俺も出すぜ、主様♡」
 体の両端で、咥え込んだ性器が痙攣する。大量の精液が喉の奥に噴射された。
「んげぇええおお!!!!」
 悲鳴を上げたせいで精液が逆流し、口と鼻から噴き出した。同時に腹の中でも性器が跳ね、熱い液体を注ぎ込まれる。
「はー、最高でした」
 口から肉棒が抜かれる。こんのすけはついでに血液と精液を吐き出した。混ざってピンク色の液体になっており、肉片とおぼしき塊もある。
「次の奴は誰かな?」
 後孔からも引き抜かれた。体液が滴り落ちるのを感じる。
 ああ、ようやく苦しみから解放されたと思っても、また次の刀剣男士に嬲られるのだ。絶望が胸を埋め尽くす。こんのすけはとうとう意識を失った。

 目が覚めると、こんのすけは暗い場所にいた。
 頭がぼやぼやする。だんだん意識がはっきりしてくると、体中がひどく痛むのに気づいた。
「うぅ……」
 軋む体を動かす。なんだか狭いところにいるようた。扉らしきものに体が当たったが、鍵をかけられているようで出られない。
 闇の中でどれくらいうずくまっていただろうか。ふと、人の足音が近づいてきた。ガチャガチャと音がして、鍵を開かれる。急に光が入ってきて、こんのすけは目を細める。扉が開かれたのだ。誰かがこんのすけを見下ろしている。
「おや、目が覚めたのか」
 刀剣男士がしゃがみこんでこんのすけに目線を合わせた。手に皿のようなものを持っている。
「食事を摂っていなかったろう? 死なれては困るからな、ちゃんと栄養のあるものを作ってもらったぞ。歯がないので固形物は食べられないだろう? 流動食にしておいたからな」
 目の前に皿が置かれる。中にはどろどろとした奇妙な物体が入っている。
「お前の好きな油揚げを混ぜておいたぞ」
 こんのすけは泣きたくなった。ミキサーで粉砕したのであろうそれは、食事と呼ぶにはあまりにもひどすぎた。
 いつまで経っても口を付けようとしないこんのすけに、刀剣男士は困った顔をして首を傾げる。
「食べておかないと後々きついぞ? 置いておくからちゃんと食べておけよ?」
 再び扉が閉められる。こんのすけは暗闇の中に取り残された。一人になると涙が込み上げてきて、こんのすけはしゃくりあげて泣いた。

 扉が開くのは、食事を与えられる時か陵辱される時だった。
「蛍、こいつで練習しときい」
「うん」
 幼い容姿に相応しくない巨大な一物をこんのすけは後孔に抜き差しされている。
「あ〜口も気持ちいいぜ」
 口のほうには、別の刀剣男士の長さのあるものを突き刺されている。
「んぶぶぶぶ」
 こんのすけは白目を剥いて苦しんでいる。
「おい、次は俺だからな。とっとと終わらせろよ」
「分かってるよ」
 他の刀剣男士たち何人もが順番待ちをしているのだ。こんのすけの口も肛門も、もう内臓のほうまで裂けて破損している。
「あっ出るよお!」
「うっ!!」
 びゅるびゅると精液が発射され、慣れ親しんだ苦さが口に広がる。下半身のほうでは、熱く腸を灼く精液が傷にしみて、さらなる苦痛を生んだ。
「はーっ、はーっ…」
 こんのすけは涙を流しながら荒い呼吸をする。
「さて、次は僕の番だね」
 引き抜かれたそばから、別の刀剣男士の手に渡される。後孔をいたぶるように、刀剣男士は陰茎を押し付けてぐりぐりしてくる。
「さっさと咥えろよ」
 口のほうに、新たな刀剣男士のものが突き込まれた。
「うぅ、う、おええ」
 嘔吐反射が起こりこんのすけの喉が震える。粘ついた胃液はさらに滑りを良くするだけだった。ずぶずぶと、後ろの穴にも肉棒が入り込んできた。強制的に体を開かれる。爛れた腸壁が擦り上げられて、痛みのあまりこんのすけは失禁する。
「あはっ、だらしないねぇ♡ 躾のなってない獣だね♡」
 刀剣男士はくすくす笑い、激しく前後にピストンを開始した。こんのすけはびくびくと痙攣しながら、されるがままになっている。
 もう殺してくれ。何度そう言ったことだろうか。
 しかし刀剣男士たちは「主が帰ってくるまでお前を殺すつもりはない」と言って取り合わない。審神者が帰還するまでこの輪姦を楽しむつもりなのだろう。自殺しようにも、牙を失ったこんのすけは舌を噛み切ることもできない。それでもなんとか自害できないかと、閉じ込められた狭い部屋の中で壁に何度も頭を打ちつけたのだが、音を聞きつけた刀剣男士に止められてしまった。こんのすけは首輪と鎖をつけられ、部屋の中心から数歩しか動けないようにさせられた。また、餓死を阻止するためにも、流動食を無理やり飲まされるようになった。
 結局、こんのすけは死んで逃げるという道さえ封じられ、一連の陵辱が終わった後に最低限の手当てだけされて、部屋に投げ入れられるのだった。



 もう何日目だろう。審神者が留守にしている期間は一週間。何回夜が過ぎ朝が来たのか正確には分からないが、あと数日のはずだ。
 前後で体を揺さぶられながら、遠い意識の中で考える。審神者様が帰ってくるまでの辛抱だ。審神者様がこんな非道を見過ごすわけがない。一緒に未来に連れ帰ってもらうのだ。それだけがこんのすけの希望だった。
「…あの、ちょっと気になることがあるのですが」
 後ろを犯していた刀剣男士がふと声を上げる。こんのすけに呼びかけたわけではなく、近くの刀剣男士に話しかけたようだ。
「この狐の腹、膨れていませんか?」
 耳に飛び込んできた言葉に、こんのすけの思考は停止した。
「腹?」
「ほら。触ってみてください」
 刀剣男士は自身のものを引き抜くと、こんのすけの体を仰向けにさせる。誰かの手がこんのすけの腹を撫でた。確かにそこは、刀剣男士の一物で変形しているわけではなく、僅かに膨らんでいた。
「…確かに、言われてみたらそうだなぁ」
 腹部を押される。何か固いものに触れる。張っているだけではなさそうだ。
 まさか。こんのすけの頭から血が引いていく。そんな馬鹿な、ありえない。絶対に嫌だ、こんな悪鬼たちの、
「子を孕んだのか?」
 腹を撫でる刀剣男士が、怪訝そうに呟く。頭を鐘で殴られたように、その言葉がこんのすけの脳内で反響した。
「まさかとは思いますが…可能性がないとも言い切れませんよねえ」
 もう一人の刀剣男士も、不思議そうに首を傾げている。
「薬研、とりあえずこの狐の体を調べてみてください」
「ああ、任せろ」
 少年の姿をした刀剣男士が答える。一方、その間も口を犯し続けていた別の刀剣男士が、精液を吐き出した。食道に直接噴射されて胃に送り込まれる。
「念のため、今日はケツを使うのはやめといてくれ。残りの奴らは口のほうだけで頼むぜ」
 少年の刀剣男士が皆に告げる。こんのすけの絶望は奈落の底を知らない。


「懐妊おめでとう、こんのすけ」

 目の前の刀剣男士がにっこりと頬を弛める。

「う…うそでしょう…?」

 こんのすけはガタガタと震え出した。
 先刻、薬研と呼ばれていた刀剣男士は、こんのすけの尻に指やら器具やらを突っ込み、腹の音を聞き、薬のようなものをいくつか飲ませた。
「どうやらお前は俺たちの子を孕んだようだぜ」
「嘘だ! 私は管狐ですよ?! あなたたちとは違う生物です! それに、妊娠するような生殖器官は持ち合わせていません! あなたたちの子を妊娠するなどありえません!!」
「いや、分からないぜ。俺たち刀剣男士の生態は、あんたたちもよく分かってないんだろ? 刀剣男士の精で管狐が受胎することだってあるかもしれねえ。前例が報告されていないだけでな」
 こんのすけの目からぽたぽたと涙がこぼれ始めた。信じたくない気持ちと、刀剣男士の言葉がその通りなのを納得する気持ちが混ざり合う。
 刀剣男士は眼鏡を押し上げた。
「さて、腹に赤ん坊がいるんなら大事にしなきゃなあ。しばらくお前を犯すのは口だけにしておくか…」
 そう呟きながら立ち上がる。こんのすけを鎖に繋ぐと、すぐ近くに鈴のようなものを置いた。
「何か腹に異変があったらこれを鳴らせ。俺っちがすぐ駆けつけるからな。腹の子が生まれるまでの間、俺がお前の部屋の隣に移ることにしたんだ。鈴の音が聞こえたらすぐ行ってやる」
 刀剣男士なりの優しさなのだろう。しかしその優しさは、こんのすけに対してではなく、腹の子に対してのものだ。
 少年はこんのすけの頭をぽんぽんと撫でると、部屋から出て行った。去り際に、「今夜は赤飯を炊いてもらおう」と笑いかけられて、こんのすけは床に伏して泣いた。
 確かにその夜の流動食はピンク色だった。

 その後、短期間で、腹はどんどん大きくなっていた。
 そもそもこんのすけが刀剣男士に犯されたのは数日前のことである。初日に妊娠していたとしても、ほんの数日で腹が目立つようになることなど、通常ではありえない。この成長スピードはなんだ。腹にいるのは尋常ではない化け物なのだ。こんのすけは妊娠したとは信じたくなかったが、今朝になって腹の中で蠢く胎動を感じて、いよいよ認めざるを得なかった。
「ずいぶん腹が膨んできたなあ」
 刀剣男士がこんのすけを仰向けにさせて腹を撫でる。面白そうに笑う目がこんのすけを取り囲んでいる。
「誰の子供かな?」
「生まれてきたら分かるだろう。楽しみだな」
「狐の姿で生まれてくるのかな? それとも人? もしかして、刀の姿かなあ?」
 楽しげに談笑している。奴らには人の心がない。悪鬼だ。こんのすけはぽろぽろと涙をこぼす。
「どうだ薬研、こいつの腹の子は順調に育っているか?」
 ある刀剣男士が薬研のほうを向く。
「ああ。ここまで大きくなれば安定期だ。流産の危険もないだろう」
「と、いうことは?」
「ケツを使っても大丈夫だと思うぜ」
 親指を立てて笑う薬研。こんのすけの頭は恐怖で凍りついた。なぜそんな良い笑顔で、残酷なことを言えるのだろう。
 周りの刀剣男士たちは喜びの声を上げた。
「おお、久しぶりじゃのう」
「誰から使いますか?」
 順番を決めるために話し合いを始める。こんのすけはぶるぶる震えながら、自分を抱えている刀剣男士にすがりついた。
「お願いします、下を使うのはやめてください。お腹が張って苦しいのです。挿れられたら死んでしまいます」
 刀剣男士はこんのすけを見下ろし、鼻で笑った。
「なに、これまで大丈夫だったのだから、今さら死ぬことはないさ」
 取り付く島もない。
「最悪、お前が死んでも腹の子を取り出せばいいだけの話だ」
 そんな。こんのすけは光の消えた瞳から涙を流す。
「順番決まったよ。まずは僕からだ」
 こんのすけが別の刀剣男士の手に渡される。
「数日ぶりだから慣らさないとね」
 肛門の周りを指で撫で回された。ぞくぞくと悪寒が走る。何か油のような潤滑剤を塗り込まれているようだ。
「挿れるよ」
 後孔をこじ開けて陰茎がねじ込まれる。潤滑剤に手伝われて、多少の抵抗を残しつつも、中への侵入を許した。しばらく挿入されていなかったので、傷ついた腸壁は再生しかかっていたのだが、刀剣男士の一物によって再び引き裂かれる。みちみちと、激痛を伴って肉壁が拡げられていく。尻に焼けた鉄の棒を突き刺されたようだ。
「いだいいだい!!! ぎゃあああああ!!! うぐええぇぇえ!!!」
 刀剣男士のものが根元まで挿入された。内臓を押し出されるような感覚が襲う。こんのすけは嘔吐した。びちゃびちゃと吐瀉物が床にこぼれ落ちる。
「ああ、久しぶりだから締め付けが物凄いね。凄く気持ち良いよ」
 灼熱の杭で中をかき混ぜられ、さらに引き裂かれる。塞がりかけていた傷口から血が噴き出した。皮肉なことに血で滑りが良くなって、刀剣男士はスムーズに腰を打ちつけ始めた。
「あっっ、、がああああ!!! ぎゅ、ぐるしいっっ!!!」
 泣き喚くこんのすけ。小さな体では、刀剣男士の一物を受け入れることさえ大変なのに、今や腹に子供がいるのだ。圧迫感は尋常ではなかった。ぐちゅぐちゅと粘膜が立てる不快な音が耳にまとわりつく。刀剣男士はこんのすけの膨れた腹を抱えて、体内で肉棒を暴れさせる。腹が破裂してしまいそうだ。
「主はそろそろ帰ってくるんじゃないかい?」
 こんのすけを犯しながら刀剣男士がふと声を上げる。こんのすけははっとして頭を起こした。
「ああ、もうすぐ一週間経つからな」
 別の刀剣男士が答える。こんのすけの胸に一筋の希望の光が差し込んだ。
「そうか。ならこの狐の処分はどうする?主に見つかる前に殺して捨てておく予定だったはずだったろう?」
「そうなんだが、子を孕んでしまったからなあ。産まれるまでは生かしておきたいよなあ」
「主にバレないよう監禁しておくしかないな。明日にでも部屋を変えようか」
「そうだね」
 会話を聞きながら、こんのすけは必死に頭を働かせた。
 おそらく明日かあさってには審神者が帰ってくる。刀剣男士たちは審神者に見つかる前に、こんのすけを見つかりにくい場所に幽閉するつもりだ。どこに幽閉されるか分かったものではないから、部屋を変えられる前に行動を起こしたい。明日が逃げ出す最後のチャンスだ。
 目まぐるしく頭を回転させていたこんのすけの顎が、急に鷲掴みにされた。
「お口がお留守になってるぞ?」
「んぶっっっっ!!!!」
 いきなり刀剣男士の一物を突っ込まれて息が止まる。喉の粘膜が摩擦される。
「ぐぇおおお!! んううぅう!!!」
「はー、この狐は口も名器だなあ」
 ぱんぱんと腰を打ちつける。前から後ろから突き動かされ、こんのすけの意識は遠のいてきた。
 明日、明日が勝負だ。だからまずは、この陵辱中に命を落とさないことだ。


 こんのすけが目覚めたのは、ちょうどいつもの部屋に投げ入れられた時だった。
全身が痛む。一応手当てはされ、毛皮は拭き清められているが、傷も疲労も蓄積する一方だ。刀剣男士が出て行って鍵を閉めたので辺りは静寂に包まれる。先ほど一瞬見えた外は暗かった。今は夜のようだ。こんのすけは一睡もせず、夜明けを待った。全神経を集中させて耳を澄ませた。
 やがて、微かに、鳥のさえずる声が聞こえてきた。明け方を告げる小鳥の声だ。
 こんのすけは、先日薬研が置いていった鈴を鳴らした。リンリンと軽やかな音色が早朝の本丸にしっかりと響く。誰かの足音が近づいてきた。こんのすけの部屋の扉が開かれる。寝間着のまま、眠そうにまぶたを擦る薬研が現れた。
「よぉ、朝っぱらからどうしたよ」
 欠伸を噛み殺しながら薬研は腰を下ろし、こんのすけに近づく。
 こんのすけは床に転がって腹を抱えていた。
「う、う…、お腹が…お腹が痛くて…」
 ばたばたともがいてみせる。薬研は寝ぼけ眼をはっと見開いて、真剣な表情になった。
「腹が痛いのか?」
「はい…! 助けてください…!」
 こんのすけは転げ回って苦しんでみせる。鎖がガチャガチャと鳴った。
「よし、今診てやるからな」
 薬研はこんのすけの首輪から鎖を外すと、体を抱き寄せようとした。

 今だ。

 こんのすけは渾身の力で薬研の顔面に尻尾を叩きつけた。
 突然のことに、寝起きの薬研は反応できなかった。したたかに顔を殴打される。さらに、その尾の先端に青白い炎が灯る。
 狐火。こんのすけは僅かな妖力を振り絞って、炎を生み出したのだ。そう何回も使えるものではないからここぞという機会に発揮しようと、今のいままで温存しておいたのだ。
 薬研は鋭い悲鳴を上げ、顔に移った火を消そうと躍起になる。その隙に、こんのすけは全力疾走した。薬研の横を擦り抜け、部屋を横切り、廊下に躍り出る。腹が痛いと芝居を打って薬研を騙し、まだ人の起きていないうちに未来へ帰ろうという算段だった。最初の段階は上手くいった。あとは誰にも見つからずに審神者の部屋へ辿り着くだけだ。審神者の部屋に、本丸と未来を連絡する転送装置があるのだ。こんのすけは死に物狂いで審神者の部屋に走っていく。有難いことに、廊下には誰も見当たらない。まだ皆起き出していないのだろう。膨らんだ腹が重い。傷ついた体は悲鳴を上げていたが、懸命に足を動かした。
「はぁ、はぁ…、あとすこし…」
 審神者の部屋に転がり込んだ。急がないと薬研が追ってくるかもしれない。あと少しで、未来へ転送する装置にたどり着く。早く帰りたい、この地獄から逃げたい。あと数歩。
 その時だった。涙で視界が曇っていて、前をちゃんと見ていなかった。不意にこんのすけの頭が柔らかいものにぶつかった。

「…こんのすけ? どうした?」

 きょとんとした懐かしい声に、こんのすけの涙腺は崩壊した。

「審神者さまぁ!!!」

 ぼろぼろの体で飛びつく。ちょうどこのタイミングで審神者が帰ってきたのだ。何という幸運だろうか。
 泣きじゃくるこんのすけを、審神者は優しく抱き寄せた。温かく柔らかい感触。安堵が胸を埋め尽くす。
「うわあああん、あるじさまぁ」
 黒一色の瞳からぼたぼたと涙をこぼし、こんのすけはすがりつく。
「一体どうしたんだ? ひどい傷じゃないか。敵襲でもあったのか?」
 審神者はおっかなびっくり、こんのすけの汚れきった毛並みに触れる。その顔が驚きから険しい表情へと変化していく。
「ぐっ、うっ、ちがいます、敵ではありません。うちの本丸の男士どもにやられました」
 こんのすけは今までの苦しみを告白する。
「あの刀どもは、私を審神者さまの代わりに見立てて、りょ、陵辱したのです! 審神者さまにしたいけどできないことを私にしてやると言って、何度も何度も何度も!!」
 喋るごとに辛い記憶が蘇ってきて、嗚咽が込み上げてくる。思い出したように体の痛みも強くなってきた。
「自分たちの慰みのために、私に残虐非道な暴力を振るったのです! あれは化け物です! 審神者さま、いますぐ未来に逃げましょう! あの刀たちは、主様に邪な思いを抱いているのです! このままでは、私だけでは飽き足らず審神者さまも危害を加えられてしまう! 政府に報告をして、刀解のちに本丸を解体しましょう!」
 こんのすけの悲痛な訴えを、審神者は目を丸くして聞いていた。
「そんなことが…」
 神妙に考えこむ審神者。と、その手が、ぶるぶる震えているこんのすけの腹部に伸びてきた。
 ぱんぱんに膨らんだそこを撫でられ、こんのすけはびくりと跳ねる。あの忌まわしき化け物たちに植え付けられたものだ。
「こんのすけ。この腹は? まさか妊娠したのかい?」
「…分かりませんが、その可能性はあります」
 管狐は妖の類。そして刀剣男士も、元は刀とはいえ、今は付喪神という魔性のものとして顕現している。人知を超えた者同士、子を成す可能性がないとは言いきれない。現にこんのすけの腹は日増しに大きくなり胎動を知覚してきている。
 こんのすけは青ざめている。審神者はうーんと唸った。腹を執拗に撫でられるのは不快で、こんのすけは身悶えた。
「あの、審神者さま、早く逃げましょう」
 こんなところに留まっていては、刀剣男士たちに見つかってしまう。逸る気持ちは抑えようもなかった。転送装置は目と鼻の先だ。今すぐあれに飛び込みたい。
 しかし審神者は何と答えたであろうか。

「その必要はないよ、こんのすけ」

 にっこりと笑顔を浮かべる。こんのすけは唖然とした。
「な…、なぜ…?」
「うちの刀剣男士たちには、主である私を攻撃できないように呪いをかけている。私が危害を加えられることはない」
 審神者は悠然と微笑む。形容しがたい寒気がこんのすけを襲った。
「え、でも…」
 私がこんな目に合ったことについては?
 なぜ、哀れみも怒りもないのですか?
 ずれている。意思が噛み合わない。最後の頼みの綱だと思っていた審神者すら、味方ではないのかもしれない。恐怖がひしひしと迫ってきた。
 こんのすけの瞳から思いを読み取った審神者は、ふふっと息を吐いた。
「刀剣男士たちは私に手出しはできない。私のほうとしても、奴ら相手に情事にふけるつもりはさらさらない。しかし発散させなければ溜まる一方だ。刀剣男士たちの性欲の処理はどうしたものかと悩んでいたところだ」
 審神者の言わんとすることを理解して、こんのすけは絶望した。
「けれどまさか、私の不在中にお前が肉便器になってくれるとは思いもしなかったよ。しかも妊娠までしたとは驚きだ。こんな面白いことはないよ。お前の出産を皆で見届けよう。生まれた子は大事に育ててやる。そしてお前も、お前の子も、刀剣男士どもの肉便器として役に立っておくれよ」
 政府には、新しい管狐を送ってもらおう。お前の代わりはいくらでもいるからな。
 そう言って審神者はこんのすけを高く抱えると、愉快そうに笑った。その場でくるくると回り始める。こんのすけはもはや言葉もなく、歯の根の抜けた歯肉をぶるぶると震わせることしかできなかった。

 狂っていたのは、この本丸を支配する審神者だったのだ。

 ひとしきり笑い転げたあとで、審神者は柏手を打った。
「皆、おいで。審神者が帰ったぞ」
 寝静まっていたはずの本丸が、一気にさんざめき出す。喜びの声を上げ、刀剣男士たちが一斉に審神者の部屋に駆けつけた。
「主、お帰りなさいませ」
 平伏する刀剣男士たちに、審神者は満足そうに笑う。
「ただいま。良い玩具を見つけたようだな? 私がいない間にずいぶんと楽しんでいたようだが」
 刀剣男士たちの目が、審神者が抱えているこんのすけに向いた。
「ええ、その畜生が、自分をぬしさまと思って良いと言いましたので」
 見覚えのある刀剣男士が、審神者に向かって媚びた笑みを浮かべる。
「それなんですが、主…。薬研がそいつにやられて火傷をしてしまいまして。お帰りのところ、急で申し訳ありませんが、お手入れをお願いしてもよろしいでしょうか」
 顔を覆った薬研が、青い髪の刀剣男士に肩を抱かれていた。
「ああ、可哀想に。もちろんだ、すぐしよう」
 審神者は颯爽と歩き出した。主が帰ってきて刀剣男士たちは嬉しそうに顔を崩している。こんのすけを見る眼差しと、審神者を見る眼差しの、歴然たる違い。
 ああ、管狐の分際で審神者の代理などするべきではなかったのだ。

「主。今夜は主のお帰りを祝って、宴会を開こうかと」
「うん、今夜は君のために何でも作るよ」
「アタシも取って置きのお酒持ってくるからさ〜!」

 まとわりついてくる刀剣男士に、親愛のこもった笑みを浮かべる審神者。

「そうだな。今夜は楽しもうか」

 部屋を出て、廊下に足を踏み出す。
 ぬいぐるみのように審神者の脇に抱えられたまま、こんのすけは遠ざかる転送装置を見送った。
 そして二度とそれを目にすることはなかった。
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