※髭切が精神崩壊、畜生レベルに白痴化
※女主→→→→髭切 エロあり



 一目見たときから、私はある太刀の仮姿に並々ならぬ劣情を抱いたのでした。
 数多の名を有する刀剣ですが、ここは分かりやすく髭切と呼びましょう。ご存知でしょう。希少度の高い源氏の宝刀として、審神者たちがこぞって欲しがったあの美しい太刀です。
 私が髭切を入手したのは単に幸運としか言えません。審神者としての能力がさして高いわけではない私です。様々な逸話を持つ、あの美しくも恐ろしい太刀を満足に使役できるのか。不安と期待とを半々に、おそるおそる、顕現したばかりの彼を見上げていました。
 しかし私の心配は杞憂に終わったのです。髭切をお持ちの審神者ならお分かりでしょうが、彼は非常に温厚で柔和な性格をしています。畏怖する私を可笑しそうに笑って、これからよろしくねと頭を撫でてくれました。よくよく考えば、道具が持ち主に対して頭を撫でるなんて無礼なのかもしれませんが、その時の私は頭が真っ白になってしまって思考どころではなかったのです。私の心は一発で撃ち抜かれ、人が刀に抱くには見当違いとしか言いようのない感情を抱くようになってしまったのです。

 恋をしている。そう言えば聞こえはいいかもしれません。しかし私が彼に向ける思いは、そんな綺麗なものではないのです。言葉にするのもおぞましい、どろどろとした情念で、とてもあの美しい髭切に伝えられるようなものではありません。恋する乙女は想い人に対してなにを望むことでしょうか。手を繋ぎたい、一緒にいたい、己を見てほしい。そんな初々しくも尊い欲求を持つことでしょう。ええ、私もそのようなことは思います。桜の舞う庭で髭切と手を繋いでお話でもできたらどんなに素敵でしょうか。溶けた蜜のような瞳に私だけを映してくれたら。
 しかし甘やかな情景を思い浮かべたところですぐに、黒い憎悪と絶望が私を襲います。
 私と彼は主従であり、さらに私は人間、彼は刀です。もっと悪いことには、人外である彼は恐るべき美貌の持ち主ですが、私は美しくもないただの人間、彼と並べばゴミ虫のようなものです。主従、人外、美醜。三重苦。私の恋は身の程知らずで叶うことなどないのです。ときおり、刀剣男士と恋仲になる審神者の話を聞きますが、私には縁のない話です。だって髭切が私を好きになるポイントなどあるでしょうか。無能な醜い小娘、己の恋情を満足に伝えることもできない腰抜けです。釣り合わないにも程がある。
 ですから春の庭で髭切と微笑み合うような、甘美で愚かな夢を見たあとは、それを打ち消すかのごとく醜い妄想をします。真っ黒に煮え立つ情欲は獣の姿をして暴れ回り、髭切を引き倒して美しい肢体を冒涜するのです。脳内で何度も彼を犯し彼に犯されることを夢想し、己を慰める夜は数え切れませんでした。

 もちろん彼は劣情を孕んだ目で見られているとは知りません。私は小心者ですので、醜い心の一端でも彼に知られてしまうことは耐えられません。私は厳重に己の心に蓋をして、髭切とは一線を引いて接し、分別のある良き主人として振る舞い続けていたのです。そんなわけですから、抑圧され鬱屈した愛は、次第に飼い殺すことができないほど大きく膨らみ、ドブ水のように淀んできたのでした。



 転機が訪れたのはある悲劇でした。

「主……どうしよう、どうしよう」

 ガタガタと可哀想なくらい震えながら、加州が出陣から帰ってきました。
 嫌な予感は、していたのです。あまりにも加州たちの帰りが遅いものですから。
 急いで城門に出てみれば、沈痛な面持ちの第一部隊の皆がいました。一様にぼろぼろに傷ついています。ひどい戦闘があったのだと分かりました。まさか誰か折れたのでしょうか。しかし、一人一人見回して確認してみたところで、誰ひとり欠けてはいないのです。それにしても皆、ひどい傷です。すぐに手入れ部屋に運ぶべきだと口を開こうとしたところで、

「主……。すまない」

 同田貫が珍しく苦渋に満ちた声を上げました。彼の肩には、ぐったりと力の抜けた彼の人–––––髭切がもたれかかっていました。どうやら髭切が一番の重傷者のようでした。

「髭切、すぐ手入れを」

 私は彼の具合を確かめようと一歩近づきました。そこでようやく、様子がおかしいことに気づきました。彼の瞳は虚ろに開いてはいますが、ガラス玉のようになにも映していないのです。見れば、服は不自然に破かれ、下半身には大倶利伽羅の腰布が巻かれている状態でした。

「すぐ助けに行ったんだ。でも俺たちが来た時にはもうこの状態だった……」

 泣きそうな声で加州が説明します。私は全てを察しました。

「手入れの前に、風呂だ。身を清めてやる」

 大倶利伽羅がチッと舌を打ちます。私は指先まで蒼白になって、湯と、手入れの用意をしました。



 髭切は凌辱される時に薬を打たれたようでした。刀剣男士に効く薬物とはどんなものがあるのか、よく分かりませんが、壊れた頭は手入れでは直らないようなのでした。太ももに押された屈辱的な焼印や、口淫のために抜かれた歯や、血まみれに裂けた股は、手入れをしたら魔法のように綺麗に戻りましたが、頭のほうは駄目でした。彼の精神はすっかり崩壊していました。
 手入れ部屋にて、布団の上で目を覚ました彼は、傍に控えていた私をきょとんと見返しました。

「……髭切、具合はどうですか」

 彼の冷たい手を掴んで問いかけた私に、髭切は何の反応も示しません。
 しばらくぱちぱちと瞬きをしたあと、あろうことか彼はにっこりと微笑んだのです。
 すり、と頬に手を擦りつけてくる様は、幼子のような…いえ、まるで知恵のない動物のような有様でした。
 髭切、と再度私は呼びかけましたが、彼が返事をすることはありません。言葉を理解できない挙句、口も利けなくなっているのです。
 私は呆然としていました。あの聡明で優しい目で私を見てくれる髭切はいなくなってしまったのです。しかし、自分でも驚いたことに、白痴と化した彼に幻滅する気配がしないのです。むしろ可愛らしいとすら思ってしまう。いえ、それどころか、物の分からなくなった彼になら無体を働いてよいのでは……と、最低な欲望すら頭をもたげました。
 可哀想な髭切。手入れで直したとはいえ、彼の体は遡行軍たちに凌辱されたのです。私の知らないところで滅茶苦茶に暴かれ犯されたのです。身も心も汚され壊された、美しい源氏の宝刀。暴漢どもに輪姦されてきっと彼は泣き喚いたことでしょう、その光景を想像して私は体を熱くしました。ええ、きっと気が狂っているのでしょう。

「……髭切。ひどい思いをさせてごめんなさい。これからは私が守ってあげるからね」

 劣情を抑えきれない声で囁き、柔らかな髪を撫でれば、彼は嬉しそうに喉を鳴らしました。



 髭切が白痴になってしまったのを、皆はひどく悲しみました。当然です。彼らは戦うことが本分の刀剣男士です。日がな一日、ぼんやりと畳の上で呆けているだけの置き物になってしまった髭切は、彼らの同情を集めて余りある惨状なのでした。
 会話のままならない、反応も薄い髭切ですが、不思議なことに私にだけは笑顔を見せてくれるのです。刷り込みのようなものなのでしょうか。

「髭切、おいで」

 身の回りのことができなくなってしまった彼は、私が面倒をみることにしました。弟の膝丸がいたら彼が率先して世話を焼いたでしょうが、幸か不幸か膝丸は入手していないのです。
私が呼ぶと、髭切はふわっと笑みを浮かべて擦り寄ってきます。二足歩行すら忘れたのか、四つん這いで這い寄ってくる様は獣のようです。私の膝に頭を乗せて目を閉じる。すべすべした肌を撫でると嬉しそうに笑います。まるでペット。愛玩動物です。知性を失ってしまった彼のなんと哀れなことでしょう、しかし私の胸はどす黒い歓喜に震えています。雲の上の人だった髭切が、私の膝にもたれて甘えているのです。私なしでは生きていけない、赤子のようなものです。想い人を文字通り手中にしている快感は、ある種の嗜虐欲を満たし、倒錯した恍惚感をもたらしました。

「髭切」

 名前を呼ぶと目を開きます。

「お着替えしようか」

 ついでに体を清めるつもりで桶とタオルを用意していました。
 ぽやんとしている髭切の上着を払い、ぷちぷちとボタンを外していけば、白い胸元があらわになります。そのまシャツも下着も剥ぎ取ってしまえば、なめらかな、傷一つない体が目の前に現れました。
 私の体を脈打つ熱が上昇します。依然として惚けている髭切の腰元に手をやり、ベルトを抜いて下衣を下ろします。長い足がさらけ出され、均整の取れた肢体が剥き出しになりました。
 身ぐるみ剥がれた髭切は相変わらずときょとんとしています。美しい体を舐め回すように視姦しても、状況を理解できない彼が訝しがることはありません。白い肩にそっと指を伸ばしてみます。軽く指を食い込ませ、鎖骨から胸へと滑らせます。彼はくすぐったそうにくすくすと息を漏らしました。少し爪を立てて胸の突起を弾きます。

「っっ…?? ……?」

 髭切はぴくぴくと背を跳ねさせて、不思議そうに私を見つめてきます。はち切れそうに高鳴る鼓動を落ち着かせながら、私は彼の顎を掴んで顔を寄せました。柔らかい感触が唇に伝わります。口付けをされても髭切はクエスチョンマークを浮かべたまま、首を傾げています。

「………好き」

 血を吐くような思いで、募りにつのった感情を口にします。知性のないのを良いことに、髭切の体をものにしようと企む私。とてもいけないことをしている。彼を凌辱した遡行軍と同じくらいかそれ以上に悪質でしょう。しかし分かっていても、淀んだ恋情は止めることができないのでした。

「髭切、好き。好きです」

 噛み付くように唇を貪ります。髭切はつり目がちな瞳をぱちぱちさせて、私のなすがままに体を弄られています。

 ところで面白いことに気づきました。髭切の肌はどこを触ってもひんやりと冷たいのです。湿った口内の粘膜すらも冷え切っていて、およそ人間の体温ではない。これは鉄の温度です。冷たい金属の温度です。

「〜〜??」

 もしやと思って彼の胸に耳を当てました。薄い皮膚に耳を押し付けて体内の音を聞こうとします。しかし、どんなに耳を澄ませてみても、どくどくとした鼓動の音は聞こえないのでした。おまけに呼吸もしていない。息に合わせて胸が上下していないのです。
 どういったことでしょう。
 もしかして刀剣男士は、わざと『人間のふり』をしているのではないでしょうか。体温を保つ、呼吸をする、心臓を動かす。理性のあるうちはそういった身体機能を作動させているけれど、精神の崩壊した髭切は、人間のふりをするという最低限の理性すら失われてしまったのかもしれません。彼らは元々無機物なのですから、呼吸も鼓動もする必要がないのでしょう。審神者を安心させるためにあえて人間らしく振舞っていただけなのかもしれません。この発見は衝撃でした。今度、審神者会議の際に知り合いの審神者に話を振ってみようかと思います。

 無機物のお人形さんと化した髭切は、それでも五感は機能しているようで、肌に指を滑らせればぴくぴくと反応します。罪悪感より興奮が上回り、私はおそるおそる彼の下肢に手を伸ばしました。冷たい塊を手で包みます。

「……?? ……!?」

 髭切は困惑の表情をしていますが、私の手を振り払わないあたり不快ではないようです。
 こんな美しい髭切でも男体として顕現させられているために、美貌に釣り合わないグロテスクな性器がついていて、目眩がするほど違和感を覚えます。
 手の中で懸命に扱き上げているうちに、少しずつ彼のものが形を変えてきました。私の拙い手淫で反応してくれることが嬉しくて、気持ち悪さが愛しさに変わっていきました。

「〜〜っ?! ……!!」

 髭切は口をぱくぱくさせて何事かを伝えようとしますが、心的外傷によって発声能力を失ったらしい彼は声を出すことができません。そもそも声が出せたとしても、空っぽになった彼の頭では喃語しか話せないでしょう。すっかり固く芯を持った性器を上下に擦り上げ、刺激を与え続けてやると、彼はびくびくと体を揺らし嫌がる子供のように首を振りました。

「大丈夫よ」

 宥めるように頭を撫でてやります。目尻までほんのりと赤く染め、涙を湛えた瞳で見つめ返してくる髭切は、この世のものとは思えないくらいに淫靡で美しいのでした。
 先端から溢れてきた透明な体液をすくい取っては周囲に塗りつけ、なおも指で、手のひらで、愛撫を続けているうちに私の手の温度が移ってきました。わずかにぬるい塊に肌を密着させて擦り続けることしばし、急に彼の体がびくりと強張り、手の中で陰茎が震えて同時に冷たい液体が飛び散りました。




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