※鶯丸がドマゾ キャラ崩壊 自慰

困ったことが二つある。
審神者を始めてそれなりの期間が経ち、本丸の充実ぶりや刀剣たちの練度については文句無しに上等なのだが、主である彼女は就任当初からとある問題に頭を抱えていた。こんのすけや同輩の審神者に相談すれば良いと思うかもしれないが、内容が内容なので口に出すのが憚られるのだ。

今夜も、風呂上がりの彼女がタオルを引っ掛けて自室に戻ってきたところ、その悩みの種である男が我が物顔で布団の上に横たわっていた。

「やあ主。布団を温めておいたぞ」

さも当然と言いたげに、彼女のシーツにくるまる男が顔を上げて微笑みを投げる。主は盛大にため息を吐いたあと手にしていた洗面器をかかえ直し、つかつかとその枕元に寄ると、力いっぱい腕を振り下ろした。

「人の布団に勝手に入らないでよ!!」

ゴンッと鈍い音が響く。痛みは相当なものだと思われるが少しも動じるそぶりを見せず、むしろ嬉しそうな表情で鶯丸は洗面器で潰れた髪の合間から彼女を見上げた。

「何故だ? 俺と君との愛の巣だろう。ほら、ちゃんと枕も温めておいた」

そう言う彼の腕の中には彼女の私物である枕がすっぽりと抱きかかえられている。

「こうしていると、君の香りがして最高だな……♡」

枕にぎゅっと顔を埋めて恍惚の表情をする鶯丸。最高に気持ち悪い。全身に鳥肌が立ち、居ても立っても居られなくなって主は掛け布団をめくり上げると鶯丸の体に蹴りを入れる。

「ふざけるな! いい加減にしろ! 私とお前は恋人でもなんでもない!」
「いっ、痛っ! ああっ主♡ もっと蹴ってくれ♡」


困ったことが二つある。お分かりだろうが鶯丸という刀剣についての話である。

まず一つめの話をする前に、『鳥の性質』について軽く説明しようと思う。
鳥を飼ったことはあるだろうか。インコでも文鳥でも鳩でもなんでも良い。小鳥は懐くと手に乗ってさえずったりして可愛いものだ。飼い主の帰宅を喜んで鳴いたり、掻いてくれとほっぺを押し付けてきたり、構って欲しくて嘴で小突いてきたりと意外に感情豊かで、十分に人間のパートナーとして成り立つ存在である。
そんな可愛らしい生き物だが一説によると、鳥が懐くのは飼い主のことを『恋人』だと認識しているからだという。飼い主に対して求愛行動を取るのも珍しくないそうだ。
話を戻そう。鶯丸のことだ。彼はその名に鳥の名前を有する。動物の名前を冠する刀剣男士が珍しくないのは周知の通りだ。中でも小狐丸など一部の刀剣は、名前の由来となった生き物の性質を本人の性格の内に若干受け継いでいる。そして我が本丸に顕現せしめた鶯丸も、どういうわけかその名に頂いた動物の性質を強く発現させてしまったようだった。
つまり鳥の性質。飼い主を恋人だと思い込んでしまうというそれのことだ。彼にとっての飼い主はもちろん、刀剣の持ち主である審神者。彼女である。
鳥の本能に従い、鶯丸は彼女のことを恋人だと思い込んでいるのだ。小鳥が飼い主のことを恋人と慕うくらいならまだ可愛いものだが、彼女に懐いてことあるごとに求愛行動を示してくるのは単に名前に鶯とあるだけの、青年の姿をした太刀である。恋人関係を育むもなにも、彼の頭の中では最初からゼロ距離だった。勝手に恋人にさせられている。
見目麗しい男が恋人面をして愛を囁いてくるのだから心臓に悪い、勘違いも起こしそうになる…と思うだろう。そりゃあ一時は甘い幻想を抱きかけた彼女であったが、鶯丸の持つもう一つの性質によって、抱きかけた希望はガラガラと瓦解させられたのだった。

二つ問題があると言った。一つめは今話したとおり、鶯丸に恋人と認識されていることである。
そして二つめの問題というのが。

「ああっっ主♡♡♡ 主の素足が俺を足蹴にしている♡ たまらないな♡ もっと踏んでくれ♡」

何を隠そうこの鶯丸が真性のドマゾだったことである。Mっ気があるとかそんな生易しいもんじゃない、甚振られてなじられて興奮する被虐性欲の塊であった。

「ひえっ気持ち悪い!! 足にくっつかないで! …って、なに勃起してんの?!?!」

主は本気の悲鳴を上げて鶯丸を追い払おうと足を振り回すが、腹を踏まれても顔面に見事な回し蹴りを入れられても、彼は痛がるどころか倒錯した興奮を募らせるのだった。

「あ〜〜主♡♡♡ 好きだっ♡♡♡ その蔑んだ目線も最高だ♡ さすが俺の恋人だ、君はいつでも俺の望むものを与えてくれる♡♡♡」

彼の下腹部は衣類の上からでも分かるほどに山状に張り出している。それどころか先走りの液でじっとりと濃く染みを作っているのでますます気持ち悪い。もう限界だ、頭に膝蹴りでも食らわせて強制退場させよう…と彼女が構えたところで、急に片足を強く引かれてバランスを崩してしまう。

「わっ…! え、ちょっと、やめて!! 擦り付けるなあ!!!!」

固くなった下腹部に足裏を押し付けられる。必死に振り解こうと足をバタバタさせるが、その運動が意図せずも彼の性器に望み通りの刺激を加える形となってしまった。
鶯丸は彼女の足を抱えて腰を押し付ける。動いてしまうのは雄の本能なのか、孕みもしない、生殖器ですらない足裏に性器を擦り付けてぐいぐいと上下させた。主がもがく動きと合わさってさらなる快感を呼ぶ。

「いっ、うっ♡ ああっっ〜〜いくいくっっ♡♡♡」
「ギャーーーーー!!!!!!」

びゅるびゅると白濁が発射される。彼の腕によってがっちりホールドされた彼女の足裏に、熱く湿った嫌な感触が伝わる。射精のたびに性器が跳ねる感触すら伝わってくるのだから最悪だ。鶯丸の纏う服と下着を隔てても、素足にぬめぬめした白濁液が付着するのを感じる。彼女の足に向かって思う存分精を吐き出した鶯丸は、まだはぁはぁと荒い息をつきながら定まらない目線で彼女を見上げ、ようやく足を離した。

「…はぁ、今夜も最高だったな…♡」

解放された足裏からは白い液体がねちょっと系を引く。

「…………最悪…」

風呂に入ったばかりなのにもう一回体を清めないとならない。好きでもない男の射精を手伝って、あげく精液をぶっかけられたのだから最悪以外の感情がなかった。

「主♡ 足を汚してしまってすまないな。俺に掃除させてくれ♡」

精液まみれの足裏にぺろっと赤い舌を伸ばしてくる鶯丸を、今度こそ満身の力で蹴り飛ばす。床に倒れこんだ彼の服に、付着していた精液をなすりつけておいた。

「帰って!! 二度とくるな!! クソマゾ鳥が!!!」
「うんうん、口汚く俺を罵ってくれるところも好きだぞ♡ 俺としては君ともっと一緒にいたいが、夜更かしは肌に悪いというしな。おやすみ、主♡」

股間をべちょべちょにした鶯丸が立ち上がり部屋を出て行く。あの格好で誰かとすれ違ったりしたら恥晒しもいいところだと思うが、もしかしたらその恥辱すら彼の快楽になるのかもしれないと思って考えるのをやめた。精液特有の、鼻をつく青臭い匂いが部屋に充満している。この部屋で寝るのかと思うと泣きたくなってきて、主はさっきまで彼の胸に抱かれていた枕を殴りつけるのだった。





そんなことが日常的にあるので、良くも悪くも主は鶯丸の扱いに慣れてきてしまっていた。悲しいかな……鶯丸がもう少しまともな性癖の持ち主であったなら、本当に恋人関係になることもやぶさかではなかったのに。いや、別に被虐性欲の持ち主だとしても、堅実に関係を築いたあとなら受け入れることも出来たかもしれないが……。
始まりはそう、強引に迫ってくる彼を思わず引っ叩いてしまった時で、それでマゾの気が開花したようだった。

「〜〜っっ!! 君に殴られるのはなかなかイイな…♡」

その後、味を占めたのか鶯丸はしつこく彼女に迫っては罵声と暴力で応対されるのを楽しむようになった。主が本気で嫌がって殴っても罵っても彼の性的興奮を高めるだけなのだというからタチが悪い。一方で、どんなに彼女に嫌悪を向けられても相変わらず自分たちは恋人同士だと思い込んでいるのだから、何ともおめでたい頭の作りである。理解に苦しむ。
本丸の刀剣男士たちも、主のことになると鶯丸の脳が駄目になってしまうのを了承していて、生暖かい目で二人を見守っていた。注意しておくが、鶯丸は決して鈍な刀剣ではない。彼女が審神者になった当初のころから本丸を支えている古株の一人であり、練度も最高に近い今となっては最も頼りになる戦力といっても過言ではなかった。彼女のほうも鶯丸に感謝している部分があるから、変態だからといって刀解なんて出来ないし、他の刀剣男士たちも彼に一目置いているのであまり強くは出れないのだった。



昨夜の最悪な思い出を胸に、彼女は渋面で書類を睨んでいる。そこには本日の演練相手の名前と情報が連なっていた。

(今日は強い人ばかりだ…)

下手な面子で挑んだら一勝も出来ずに終わってしまいそうだった。

(あ、以前手合わせして惨敗したあの審神者さんもいる…)

覚えのある名前と顔ぶれに懐かしい気分になる。前回、適当な気持ちで挑んだら見事にボコボコにされた思い出があり、まだまだですなあと笑われたのだ。

(今回は負けたくない…見返してやるぞ!)

となると、必然的にこちらのメンバーは練度の高い太刀や大太刀で固めることになる。昨日の今日で癪だが、あの鳥太刀の力を借りるしかなかった。そう思っていると心を読んだかのように当の本人が姿を現す。

「主♡ おはよう。難しい顔をしてどうした?」

鶯丸は能天気に主の手を取って手の甲に口付けを落としてくる。挨拶代わりに接吻してくるのはずっと前からのことで、昔はこうした仕草にドキドキしていたが今は違う。さんざん目の前で善がり狂って喘ぐ鶯丸の白濁に汚されて、純粋な思いなど捨てざるを得なかった。
主は手を振りほどき、底冷えするような冷たい声で指令を下す。

「鶯丸。今日の演練お前に頼む。絶対に勝ちなさい」
「ん? 頼りにしてくれるのか。嬉しいな。期待に添えるようにしよう」
「……間違っても、わざと負けて私にお仕置きされようとは思わないでよ…」
「! 負けたらお仕置きなのか! それはそれで…」

ああ、駄目だ…。変なこと言うべきじゃなかった。主の口からお仕置きという語句が出たことに興奮しない鶯丸ではない。先ほどの彼女の言葉は、牽制というか信頼していない証でしかないのだが、期待に輝く目で見つめてくる鶯丸はふわふわと桜を飛ばせるのだった。



その日の午後。演練場で彼女はかの審神者さんと握手をしていた。

「いやー強くなりましたねえ! 数ヶ月前とは見違えるようですよ」

勝った。刀剣たちの奮闘の結果、雪辱を果たすことが出来たのである。鶯丸が先陣切って敵陣に切り込み、後に続く大太刀たちの攻め口を開いた。先手必勝、おかげで相手の刀剣たちを圧倒したのである。力で押したかんじは否めないが以前は勝てなかった相手に勝てたのだから何も言うことはない。なんだかんだで鶯丸は肝心な時は決める刀である。やっぱり頼りになるし心強い存在だ。今日は少しだけ優しくしてあげよう(マゾオナニーには付き合わないけど)…と思っていたところ、急に後ろから肩を引かれた。

「主。いつまでそうしているつもりだ」

怒気を孕んだ低い声がかかる。そのまま後ろに引っ張られて、相手の審神者さんと握手していた手がほどけてしまった。
おやおや、と審神者さんは彼女の背後を見て含み笑いを浮かべる。遅れて彼女が振り向くと、ふくれっ面をした鶯丸が相手の審神者さんを睨んでいた。

「鶯丸、どうしたの」

彼は問いかけには答えずに主の肩に手を回し、相手の審神者に向けて言い放つ。

「彼女は俺の番いなんだ。手を出してくれるなよ」
「鶯丸!!」

刀剣が他所の審神者に向かってぞんざいな口を聞くのはとんでもなく無礼なことだった。当然だが、刀剣男士の起こした問題は主の教育不行き届きとして責められる。謝罪しなければと彼女は青くなったが、相手の審神者さんは快活に笑い飛ばしてくれた。

「はっはっは。愛されてますなあ。可愛らしいカップルですねえ。ええ、もちろん奪うつもりなんてないですよ。私はこう見えて妻子持ちなのでね」

言って、審神者さんは左手の薬指を見せる。そこには控えめながらも上品な造形の銀の指輪が光っていた。
鶯丸が納得する一方、とりあえずお咎めがないことに彼女はほっと息をつき、深々と頭を下げた。

「すみません、うちの刀剣が失礼な口を…」
「いえいえ。そちらさんが恋人同士だと気づかなかった私が悪いんですよ。ともかく、刀剣男士と結婚する審神者も増えてきたことですし、あなた方もお幸せに」

壮絶な勘違いをされているがもはや弁解する気にもならなかった。面倒ごとを増やしやがって…という鶯丸に対しての怒りだけが胸に湧き上がる。

「主。俺たちもあの光り物を身につけるか」

指輪のことを指して目を輝かせる彼を、怒りに震える手で押さえつける。

「ねえ…。他所の審神者さんになんて口を聞いてるの。そういうこと言っちゃ駄目って約束したでしょ」
「すまない。だが知ってるか、鳥は嫉妬深いんだ。君が別のところに飛んで行ってしまいそうになると不安で仕方ない」

困った顔で首を傾げた鶯丸は、まだ怒りの冷めやらない彼女の肩に後ろからぽふんと顎を乗せる。ふわふわした羽毛のような髪が頬をくすぐる。鶯丸の髪は日向に干した草みたいないい匂いがする。

「君のために勝ったんだ。褒めてくれ」
「はぁ……。もう……」

諦めてため息をつき、片手でわしわしと柔らかな髪を撫でてやる主を、相手の審神者さんも刀剣男士たちも穏やかに見守っていた。



結局鶯丸に優しくすることもなく一日は終わった。あの一戦の後景気付いた刀たちは次々と勝利を収め、勝ち星を挙げるのは難しいと思われていた演練において華々しい成績を振るったのだが、どうも彼女の心は晴れなかった。原因は分かっている、あの時の鶯丸の言動だ。ふだん落ち着いている彼があんなふうに人前で悋気をあらわにするのは珍しかった。鳥は嫉妬深く、飼い主の興味が他のものに移ると怒るというのは聞いたことがある話だが、そんなところまで受け継いでいるのか。

(恋人面をされるのは困るけど、別に嫌ではないんだよなあ……。あれはあれで可愛いところあるし)

むしろ困っているのは彼の収まらない異常性欲のほうである。勝手に発情して迷惑をかけて怒られて射精するという悪癖さえなかったら……

(なかったら…?)

本当に恋人にしても良いとでも思っているのだろうか。
分からない。もう彼のことをどうしようないマゾの変態の鳥頭としか思えないので、色眼鏡を介さずには鶯丸という刀剣のことを観察できないのである。同時に、自分が彼に向ける感情が一体どういう類のものであるかも見えなくなっていた。今さら恋愛関係になりたいとは思わない…思っていないと信じたいのだが、どうもこの心のもやもやはその辺を突き止めないと晴れないようである。
布団に横になって寝返りを打つ。今夜は来ないみたいだ。よかった、安眠できるな…。でも少しだけ物足りないと思うのは何故なんだろう…。最後まで彼のことを考えながら眠りについたためか、その日の夜は鶯丸が夢に出てきた。



誰かが私を呼ぶ声がする。

「ん……うぐ…?」

さっきまで夢を見ていたから鶯丸の声に聞こえた。ああ、私はだいぶ侵されているな…まるで恋でもしているかのようだ…あんなクソマゾの変態に……。

「……じ、……主…」

あー鶯丸が私を呼んでる気がする…。きっと夢。まだ夢の続き。

「はあ……主♡ …んっ♡」

夢……。

「あるじっっ♡ はぁ、あっ♡ かわいいなあっ♡♡♡」

オーケー。どうやらまだ悪夢の中らしい。目が覚めたらこの怪しい声も消えるはず。3、2、1で目を開けよう。

「ああっ、主っ♡♡♡ 好きだっ、寝顔もかわいいなっ……。ああ、おはよう♡」
「…………」

目の前にさっきまで夢で見ていた男の顔がある。夢の中と違うのは、頬を紅潮させ愛欲に狂った目でこちらをのぞきこんでいるところである。はっはっと犬のように忙しなく息を吐きながら体を揺らしているのは自慰しているからに他ならなかった。隣に横になる形で寝そべって彼女の寝顔を見ながら性器を扱いていたらしい。悪夢が現実であったことを理解した主はひいっと息を呑んで体を反らせ、彼から距離を取った。

「……う、鶯丸! なんでここにいるの!?」
「はぁ、昨晩行けなかったから今朝は一番に顔を見に行こうと思ってな♡ だが寝顔があまりに可愛いものだから我慢ならなかった♡ ああしかし、君のその鋭い眼差しがいっとう好きだから、やはり起きている君がいい…♡」
「意味わかんない…なんでオナニーしてんの…」
「ああすまん♡ 最近性欲がおかしくてな♡ 春だから、発情期なのかもしれない♡」

説明しつつも懸命に性器を擦り上げているのが動きで分かる。とろんと悦楽に揺らいだ瞳に、ゴミを見るかのような彼女の顔が映っていた。

「はぁ、主……♡ 見てくれ、君のせいでこんなに…♡♡♡」
「ひいぃぃぃ!!!」

朝一番にグロい男の性器を見せつけられた彼女の悲鳴が響き渡る。誰か助けに来てくれと全力で願った。

「やめて!! 汚いもの見せないで!! キモい! 変態!!」
「ぁあ♡ そうだ、もっと罵ってくれ♡ 卑しい性欲の権化だと、ちんぽ扱くしか脳がない馬鹿で間抜けな鳥頭だとっっ♡」
「本当に気持ち悪い! クソが!! 私の純情を返せ!!!」

昨夜遅くまで悩んでいた鶯丸への感情はなんだったのか。ほんの少しのときめきを感じていた自分が憎たらしい。男の腹に膝で蹴りを入れる。逆効果だと分かっていても生理的嫌悪感のために攻撃せずにはいられなかった。案の定鶯丸はびくびくと体を震わせ、痛みと快楽のないまぜになった感覚に涙を流す。

「あっ〜〜〜主っ♡♡♡ 好きだ♡♡♡ 愛してる♡♡♡」
「ギャーッッッ!!」

感極まったらしい鶯丸はなんと布団ごと主の体を抱き締めた。剥き出しのちんぽが布団越しに彼女の腰元に当たる。隔たりがあるとはいえ固いものを下腹部に押し付けられて主は真っ青になり、今度こそ本当に身の危険を感じた。予想通り、彼女をぎゅっと抱きすくめたまま鶯丸は腰を打ち付け始める。主は足を閉じているとはいえ、鶯丸が上に覆い被さって腰を振る様はほぼ正常位である。服と布団がなかったらセックスしている。

「〜〜〜〜っっっ!!!」

おぞましさに涙が出る。今まで目の前でオナニーされたり抱きつかれて殴らされたりしたことはあるが、こんなふうに押し倒されて交接の姿勢を取られたことはなかったのだ。このまま犯されたらどうしよう。心だけでなく体まで鶯丸に汚されてしまうのか。
だが、どうやら鶯丸は挿入する気はないようだった。

「はぁっ、挿れたいっ♡ 挿れたい!♡ 主を犯したい!!♡♡♡ でもマゾ奴隷の俺の卑しいちんぽじゃ駄目だっっ♡ 主の中に入るなんて駄目だっっ♡ 無様に擦り付けオナニーしてるのがお似合いなんだっ♡♡♡」

何を言ってるんだが分からないが、とにかく自分で言って自分で興奮しているようである。挿れられないとはいっても股の上に性器をごりごり押し付けられるのは不快であり、主は恐怖のあまり抵抗することも出来ず彼が狂ったように腰を叩きつけるのを見ていた。きつく腕の中に抱き締められてろくに身動きも出来ない。だんだん動きが激しくなってきて体も揺さぶられて本当にセックスしてるみたいな錯覚を覚えた。

「あるじっ! あるじ!♡♡♡ ああいくっ、いくいくっっっ!! 布団に無駄撃ちする馬鹿な俺を見ていてくれっっ!!♡♡♡」

人形のように抱きすくめられ絶句したままの主の腹に、絶頂寸前の性器が押し付けられる。

「ああぁぁっっ!! あるじっっ!!♡♡♡」
「主!!!」

二つの男の叫びが耳をつんざいた。
主は鶯丸に締め付けられた腕の隙間から声の聞こえた方向を見上げる。戸を開け放ち鬼の形相でこちらを見ているのは、彼女と一番付き合いの長い刀剣である歌仙兼定だった。

「……君!!!」

歌仙の怒りがどす黒い凶悪なマグマとなって噴火するのが見えるようだった。怒りの矛先は当然彼女の上に覆い被さる鶯丸に向いている。

「〜〜〜っっっ!!? うっ…♡♡♡」

しかし絶頂を迎えた鶯丸の射精は止まらず、歌仙の見ている前で盛大に精を撒き散らし布団を汚した。彼が主の上でびくびくと体を跳ねさせるのを、歌仙はわななき額に青筋を浮かべて見ていた。

「…鶯丸。今回ばかりは決して許さないぞ。僕の主に何という無礼を……!!! 殺してやる!!!」
「か、かせん〜〜〜〜!!!」
「…ぁ、ちょっと、待ってくれ、まだ体が動かない…!!」

歌仙の怒号と主の泣き声、そして鶯丸の悲鳴が朝の本丸に響き渡った。

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